18話
ミストリアヌ山脈の麓はすでに学園の生徒たちが大勢いた。
これを見るとクリストフたちは随分と出遅れている様子だった。
「クリストフ。ゴブリンの場所わかる?」
「ある程度は予想がつくが、この数の生徒がいるならそこも取られてるかも知れん」
「……なら大変」
「じゃあ、早く行かなくちゃ」
「なら上げるぞ」
クリストフが身体強化を使い、移動速度を上げる。
それに習ってアリス、ミシャも身体強化を使った。
クリストフは8年前にここで活動していた時期がある。
そのためこの辺りの地形はある程度頭に入っているため、ゴブリンがいそうな場所にはすぐについた。
だがその辺りにも数人の生徒が見える。
「なあアリス。討伐数は10体だったよな」
「うん。そうだよ」
「う〜〜ん」
その討伐数を聞いたクリストフは迷う。
その数ならば外で行動しているものを狙うのが手っ取り早く、安全だ。
だがこの辺りには全然見当たらない。
ならば巣を攻めるのが良いのだが演習場とは違い、野生の奴らは数が多すぎる可能性がある。
「少し考えさせてくれ」
クリストフはそう言って木の枝に座り、【サーチ】を使う。
付近にゴブリンは見当たらない。
少し離れた場所に14匹の群れを見つけた。
「よし。あっちの方に行こうか」
クリストフは【サーチ】で見つけた方を指差し、そこに走っていった。
★
ゴブリンを見つけたクリストフたちは木の上から群れの確認をしている。
「数は12匹かな。これなら足りるね」
「違う。14匹。アーチャーが2匹隠れてる」
アリスはパッと見た数を言い、そしてミシャは隠れている数にまで気付き、アリスの言った数を訂正する。
「そうだな。ここには14匹居る」
はじめから分かっているクリストフもミシャの意見に賛同する。
「俺がまずアーチャーを倒すそう。それから二人は群れを倒してくれ」
「わかった」
「了解」
クリストフがまずアーチャーのすぐ後ろまで木を飛び移りながら移動する。
腰にかけている空斬を抜き、木から飛び降りながら一匹の身体を脳天から刀を入れ、身体を真っ二つにする。
それに気付いた横のアーチャーが矢筒から矢を取り出して応戦しようとするが、クリストフがすぐさま横に刀を振り、上半身と下半身をおさらばさせる。
その時、クリストフが飛び降りた時の音やゴブリンが叫ぶことがなかったため、群れは全く敵の襲撃に気付いていない。
だがアリスたちからはクリストフの行動は見えている。
クリストフがアーチャーを倒したのを確認したアリスとミシャは群れへの攻撃を開始した。
「【ライトニング】!」
「【ファイアボール】」
炎と雷が駆け巡り、一瞬にしてゴブリンの群れを討伐した。
「やったぁ」
「【凍結】」
アリスがそれに喜んでいる中、ミシャは自分の使った【ファイアボール】が山火事を起こさないように後処理をしている。
ミシャは冷静なタイプのようだ。
「魔石の回収が終わったらギルドに戻るぞ」
「うん」
「了解」
3人で魔石の回収を行い、10個以上集まったのを確認した3人はギルドに帰っていった。
★
「お疲れ様でした。報酬はこちらです」
アリスは受付嬢から報酬として硬貨をもらっていた。
アリスはクリストフとミシャのもとに帰ってきた。
「3人で分けよう」
「俺はいらないから2人で分けてくれ」
「わかった。半分あげる」
「ありがと」
アリスとミシャは初めての依頼達成での資金で少し喜んでいるように見える。
「アリス。今日は他になにか受けるつもりなのか」
「えっとね。正直迷ってる。受けてもいいけど、そんな焦らなくてもいいかなって」
「ミシャはどうなんだ?」
「私は休みたい。自然の森で動き回るのは意外としんどかった」
「なら二人は家で休んだらどうだ」
「クリスはどうするの?」
「俺は一つだけ依頼を受けてから帰るよ」
「そう。じゃあバイバイ」
「また後で」
アリスたちと別れた後、クリストフは依頼が貼っている掲示板を見ていた。
(最上位の依頼は………、あった)
その依頼書の内容の確認をする。
(山の中腹のオーガの討伐依頼。しかも集落持ちか……)
オーガ単体ではCランクの魔物だが、集落持ちとなると集落の応じてそのランクは変わってくる。
この依頼が出された当初はBランクとなっているが、依頼が出てから一週間は経っている。
もしかすると今はAランクになっているかも知れない。
(別に倒せるし、これを受けるか)
クリストフのランクは現在は最上位。
だが本来の実力はバーグより少し弱い程度の実力。
つまりクリストフの適正ランクは最高位であるのだ。
クリストフはさっきカードの更新をしてくれた受付嬢にその依頼書を渡す。
「この依頼、上位冒険者、中位冒険者合同パーティーが2度失敗している依頼です。非常に危険なものですが一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫です。無理なら逃げてきますので」
「では気を付けてください」
「はい」
受付嬢に依頼書を受理してもらい、依頼の場所に向かった。