17話
翌朝、一番に起きたクリストフはいつも通り朝のランニングをし、その後アリスを起こす。
アリスにはミシャを起こすように頼んでおき、クリストフはウェルトの家に向かった。
家につくとウェルトは既に起きており、朝食の準備をしている。
クリストフはウェルトの手伝いをし、共に朝食を作る。
朝食の準備が終わったクリストフは泊まっている家に帰り、アリスとミシャに朝食ができたことを伝え、3人一緒にウェルトの家に向かった。
出ている料理は一般的なもので、ウェルトだけ飲み物が違う。
やはりドワーフなのか朝から酒を飲んでいる。
朝食を食べ終わった、クリストフ、アリス、ミシャの3人は片付けが終わったあと、昨日の夕方に集まっていた場所に向かった。
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「お前ら。今日から本格的に活動を開始する。まずは冒険者ギルドに行ってカードを貰う。既に持っているものは受け取らなくていいがそれがないと冒険者ギルドの依頼を受けることができん。つまり、この遠征の目的である自分で討伐した魔物で自分専用の武器を作ってもらうというは目的を達成することはできん。絶対に受け取れよ」
現役冒険者であるハルトは冒険者ギルドのシステムをよく理解している。
そのためこういった説明をハルトが行っているのだ。
ハルトの説明が終わるとクラスごとにカードを受け取りに行き、特進クラスはまた最後になった。
「〜〜〜様。こちらを」
ギルドの受付嬢たちが生徒たちの名を呼びながら次々とカード渡していた。
「クリストフ様。こちらを」
最後にクリストフの番がやってきたが、クリストフはそのカードを受け取らず、自分の物を見せた。
「私はすでに持っています。お勤めご苦労さまです」
クリストフはねぎらいの言葉をかけ、その場を去った。
ねぎらいの言葉をもらった受付嬢は魂を抜かれたようにぼおっとしていた。
★
一度ギルドから外に出て、近くの広間で集まった王立学園の生徒たちは各担任が自クラスの生徒全員がカードを受け取ったのを確認したあと、ハルトにそれを知らせに行く。
その報告が全て集まったハルトは生徒に次の指示を出す。
「今からお前たちは冒険者となった。もしわからないことあるなら受付嬢に聞くか、先生に聞くとい。それと魔物の生息する森には絶えず先生が見張っている。緊急時の際は支給されている信号弾を使って知らせれば俺たちがすぐさま向かう。その2つは覚えておけ。それじゃ、この一月、学園の生徒であることをよく自覚して行動するように。解散!」
解散の合図と同時に、生徒たちはギルドの中に入り、自分にあった依頼を探していた。
だがクリストフはまず初めに受付嬢のもとに行っていた。
「すみません。カードの更新をしたいんですが」
「更新ですね。わかりました」
カードの更新。
それは一年以上の間、冒険者としての活動が途切れていたものが再びカードを使う際に必要は手続きである。
クリストフは修行として冒険者活動をしていたため、それが終わってからはほとんど活動していない。
そのため5年近くの空白期間があるのだ。
「ボルザーク・リーズ・クリストフさんですね。少しお待ち下さい」
カードの名前を確認した受付嬢は奥の事務所に姿を消した。
事務所にはどこの支部でも共有されている冒険者名簿がある。
そこで名前を確認するために姿を消したのだ。
「クリス。何してるの?」
しばらく待っていると自分にあった依頼を見つけ、依頼を受け終わったアリスがクリストフのもとにやってきた。
「カードの更新をな。これをしなかったら活動できない」
「ならさっきカード受け取ればよかったのに」
「知らんと思うが、冒険者カードの複数所持は規則違反になるんだぞ」
「ええ!?そうなんだ」
意外とこの規則は冒険者にも知られていない。
まあまず二枚目を作るような機会は普通ならばないので、この知識は知らなくても実害はない。
「それでなにかあったのか?」
「よかったら一緒に依頼受けない。嫌ならいいけど」
「いいぞ。受付嬢がもうすぐ来るはずだから少し待っててくれ」
「わかった」
受付の奥からクリストフの名を呼ぶ声が聞こえる。
どうやら名前が見つかったようだ。
「お待たせしました〜」
先程までクリストフの対応をしてくれていた受付嬢が奥からやってきた。
そして机に大きな本を広げた。
「ええと。名前はボルザーク・リーズ・クリストフ様。ランクは上位。最後の活動は5年前であってますか?」
「はい。間違いないです」
「ランクの更新もできますが、どうします?」
「それもお願いします」
「わかりました。少々カードを預かります」
受付嬢は受付でカードの操作を始める。
ランクアップの作業は案外早く終わり、渡されたカードはさっき持っていたものとは色が変わっている。
その色は最上位冒険者の証だ。
「ではこちらです。初回更新は無料ですが次からは料金がかかりますので年に一度は依頼を受けるようにしてください」
「ありがとうございます。お手数おかけしました」
クリストフは受付から離れ、後ろのイスで待っているアリスのもとに行った。
「アリス。どんな依頼を受けたんだ」
「まずはゴブリン討伐の依頼。演習場で倒したことあるけど、野生の方が強いんでしょ?だから慣れるためにもこれから行こうかなって」
「そうか。慣れるためにもいい考えだと思うぞ。他には誰か連れて行くのか?」
「ミシャも一緒に行くつもり。クリスがウェルトさんと話してる間に結構仲良くなったんだよ」
「それはわかったが、ミシャはどこに居るんだ」
クリストフが辺りを見てもどこにもミシャの姿は見当たらない。
「ここ」
「うぉっ!」
本気でどこにもいないと思っていたため、急に後ろから声をかけられたクリストフは驚いて跳ね上がる。
それを見たアリスはケラケラ笑い、ミシャは微笑みをこぼした。
アリスの行った通り、昨日で仲良くなったようだ。
「揃ったし行こうよ」
「ああ」
「うん」
3人はギルドを出て、ミストリアヌ山脈の麓に向かった。