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執行官の皇子様  作者: Chaden
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16話

アリスたちに追いついたクリストフはアリスとミシャをウェルトの家の隣のしばらく世話になる家に置いて1人でウェルトの家に来ていた。

クリストフは影収納からできの良い武器をいくらか取り出し、ウェルトの前に置く。

そしてウェルトはその武器を舐め回すように見ている。

やがて満足したのか武器を机においた。


「全て良くできている。空斬ソラギリ、神威、氷刃辺りは特に優れているな。既に上級、いや高位鍛冶師の域に片足突っ込んでいるな」


「本当か!?」


「ここで嘘をつく必要はない。儂も長い間生きていおるが、数年でここまで行くやつは初めて見たぞ」


ドワーフはエルフと同じく、長命種と言われている。

長生きするもので千年も生きることができる。

ウェルトは既に600歳近い。

そんな長生きするドワーフでさえ最高位鍛冶師はたったの5人。

そこから考えると8年足らずで初級から高位鍛冶師に片足を突っ込むレベルまで進化しているクリストフが異常なのがよくわかる。


「こうなると次のステップを教える時期が来たようだ」


「次のステップですか?」


次のステップ。

それは高位鍛冶師になる為に必要なものであり、そこに達する人間はほとんどいないため、人間には浸透していないものだ。

そしてそのステップは簡単に説明できるが実際に行うのは難しい。


「次のステップは自分の作りたい武器を創る。いや、自分の思ったとおりに創るといったほうがいいかもな」


「……そんなことでいいんですか?」


その言葉を聞いたウェルトはケラケラと笑っている。


「言うが易し 行うは難し、と言うだろう。まあ、実際にしてみればその難しさがわかるだろう」


ウェルトは上級鍛冶師から高位鍛冶師になる道で困難に陥ってきたやつを何十、いや何百人と見てきている。

そしてその者たちも皆、クリストフと同じことをいっているのだ。

だがウェルトはクリストフには期待している部分がある。

それはたった8年でこの領域に来たクリストフの技能だ。

ウェルトは長い間鍛冶師として生きてきた中で知っているこの領域に達した天才と呼ばれた者も最短期間で21年。

ウェルトがその領域に達した時間は23年。

そして高位鍛冶師に最短で到達したもので36年。

その記録こそがウェルト自身の記録だ。

(余談だが最高位鍛冶師は数百年かかるとされている)

それらの期間をゆうに超える8年という時間。

ウェルトがクリストフに注目しない理由はなかった。


「わかった。なら今から打ってみてもいいか?」


クリストフはニヤリと笑い、やる気に満ちた顔で言っている。

だがウェルトから許可は降りなかった。


「いやだめだ。今日は疲れているだろうし、しっかり休んでからするといい。明日も早いんだろ」


「……師匠がそう言うならそうするよ」


クリストフは悲しそうにしながら言う。

その後少しだけ雑談をしたクリストフはウェルトの家を出ていった。

しばらく自分の泊まる家についたクリストフはアリスとミシャと食事を取ったあと、用意されていた自室に籠もり、ウェルトに言われたことを考えていた。


「自分の創りたい武器を創る。か……」


クリストフは気まぐれで魔杖や戦斧、三節棍などを作ったこともあるが、普段は刀を作っている。

刀を打つのは楽しく、自分の刀がいろいろな能力を持っているのは面白い。

刀は作りたい、いや、武器は作りたいから作ってきた。

だがウェルトが言っているのはそういうことではないのだろう。

作りたいではなく創りたい。

そこに鍵があるのだろうとクリストフは予想をつけた。



「あいつはどれだけ成長速度が早いんだ……」


クリストフがいなくなったあと、一人で酒を飲みながらウェルトは独り言を言っていた。

天才が21年で到達した領域に8年で到達。

流石にウェルトもクリストフの才能が羨ましくなってくる。


「流石はボルザークの一族。影の一族の名は伊達じゃないな」


ウェルトはボルザーク家の秘密を知っている。

それを知った理由は自分の父親が影狼カゲロウの製作者であるからだ。

ウェルトの父親、ビリアは歴代最巧の鍛冶師と呼ばれており、最期の作品である影狼カゲロウには魂が宿ったほど人物。

ウェルトはビリアの息子であるということで昔からボルザーク家との関わりは深い。

そのため秘密を知っているのだ。

今ウェルトが言っているのはボルザーク家の血統に関する話だ。

ボルザーク家は代々当主とそれ以外の者たちも優れた技能、能力を持つ相手と子を成し、千年間もの間、血の厳選を行ってきた一族だ。

ウェルトはその血であるからこそ、他の追随を許さない速さの成長を見せているのだと考えているのだ。


「高位鍛冶師になったら正式に頼まんといけんな」


ウェルトが頼みたいのは自分の弟子として公の場に出ること。

それができないのであれば、自分の娘と子を作ってもらうこと。

ウェルトはそのどれかをクリストフにしてもらいたいと思っているのだ。


「儂もそろそろ寝るか」


夜はすっかりとふけ、辺りは真っ暗でクリストフたちの泊まっている家も既に真っ暗だ。

ウェルトも朝早いのでもう寝ることにした。

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