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執行官の皇子様  作者: Chaden
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15話

クリストフとウェルトが出会ったのは8年前のウェルトが出した冒険者への依頼がきっかけだ。

その依頼内容はウェルトが所有する鉱山に降りてきてしまったフロストジャイアントの討伐。

そのフロストジャイアントは準SランクではなくSランクの特殊個体。

そのためバーグが依頼を受けたのだ。

そしてバーグは修行になると言う理由でクリストフをその場に連れて行っていた。

その際に知り合ったのだ。

依頼の実態はクリストフとバーグの二人しか知らないが、フロストジャイアントはクリストフが一人で倒し、そして鉱山を駄目にするためにそのフロストジャイアントを誘導した山賊をバーグが処したというのが実態だ。



ウェルトに家に入れてもらえたクリストフたちは椅子に座っていた。

位置はテーブルを挟んで椅子が3つずつあり、真ん中にウェルト、その左に先程クリストフたちを門前払いにしていたドワーフ、ウェルトの前にクリストフ、クリストフの左にアリス、右にミシャといった形で座っている。

そして、


「いや〜〜すまん。この馬鹿弟子が失礼なことを」


ウェルトによって門前払いしたドワーフの顔面がテーブルとキスをしている。

力をかなり強いようで本人とテーブルがうめき声を上げている。


「師匠。そのくらいで……」


「いやいや。名も聞かずに追い出すとなると、儂とて簡単には許せませんよ」


力がどんどん強くなっていき、両方のうめき声が大きくなってあっている。


「俺たちは別に失礼なんて思ってないです。事前の連絡なしに来た俺のほうが失礼です」


「許してくれるのならいいが…」


ウェルトはようやく頭を掴むのをやめた。


「先生。俺にも言い分が……」


「お前はさっさと帰っとけ」


男が何かを言う前にウェルトは追い出していった。


「それで、急にこんな場所に来るのは儂に用があったんだろ」


「ええ。師匠は王立学園の一年の遠征について知ってますよね」


「もちろん。それがどうした?」


「私、いや私たちは今その遠征でここに来ています。そこで、突然で無礼なこととはわかって……」


「いいだろう。許可する。誰にも文句は言わせん。場所はここの隣の家だ」


ウェルトは言いたいことがわかったようですぐ許可してくれた。


「ところで……。横の二人とはどういった関係で。二人とも嫁になるのか?」


ウェルトはニヤニヤしながら聞いている。

ウェルトは昔からこういった話が大好きなのだ。


「!!」


アリスは驚いて少し肩画揺れ、ミシャは耳を少し動かした。

そしてその反応を見たウェルトはもっとニヤニヤしだす。


「師匠。いくらあなたと言ってもそれは失礼ですよ」


「……面白くない。昔見たく切れ散らかさんのか」


「なっ……!」


クリストフは過去、ウェルトに敬語など使ったことがなかった。

昔はなにか言われたらなにか言い返すといった、近所の友達のような関係だった。

だが今はクリストフは敬語しか使っていない。

それがウェルトにとっては退屈なのだろう。


「敬語が嫌なのか?なら最初からそう言えばいい」


「おお、それだそれ。その生意気なのがお前だよクリストフ」


「喜ぶのはいいが二人に謝れよ」


「ああ、これはすまん。さっきのは失礼だった」


クリストフとウェルトの会話を聞いているアリスとミシャは驚いた様子だ。

まだいろいろと咀嚼できていないようだ。


「それでお前さんは何故儂のとこに。普通の学生はリビラの宿で過ごすのではなかったか?」


「そうだが俺は師匠に俺の打った武器を見てもらいたい。それと武器を打つとこを見てもらいたいからここに来た」


「そうか。それでいくらかマシなやつはできているのか」


「できてはいる。だがもうすぐ担任のもとに戻らないといけないから、見せるのはそれからだ」


「そうか。なら少し待て。教師は確か、宿の確認をするのだろ」


「はい」


「手紙を書こう。長老の家に泊まると言っても信じてもられんはずだ」


「ありがとう」


「いや、別に構わん。後で武器は見せろよ」


「わかっている」


ウェルトは手紙を書くと言って奥の部屋に行った。

そして数分後、ウェルトは1枚の便箋を持って出てきた。


「ほれ。3人とも預かると書いてある」


「ありがとう」


「あの、ありがとうございます」


「……ありがとうございます」


「夜はうるさくせんでくれよ。まあ、鍛冶の音で気付かんとは思うが」


それを言ったあと、ウェルトはまたニヤニヤと笑っている。

それを見たクリストフが呆れている。

そしてアリスは顔を赤くし、ミシャはまた少しだけ耳を動かした。


「おいウェルト……」


「さっさと行け。時間に間に合わんぞ」


「おい!ちょっと」


ウェルトは3人を押し出して扉を締めた。


「ああクソ。とりあえず集合場所に行くぞ」


それを合図に二人もようやく動き出した。



ドワーフの里から帰ってきた頃には既に夕方になっており、教師に言われていた集合時間にはなんとか間に待った。

集合場所には既に多くの生徒がおり、ハルトが頑張ってさばいている。


「宿がとれなかった人は俺のもとにこい。宿がとれた人は担任に報告に行け」


ハルトが宿をとれなかった生徒たちの対応をしているため、最後まで集合場所に残ったのは自然と特進クラスの制度になった。


「すまんなお前ら」


宿がとれなかった生徒たちの対応が終わったハルトは随分と疲れた様子で自クラスの生徒のもとにやってきた。

慣れない作業で疲れたのだろう。


「このクラスで宿をとれなかったやつはいるか?」


誰も挙手しない。

どうやら無事に宿はとれたようだ。


「それじゃあ一人ずつ言いに来い」


言われた生徒たちは一人ずつハルトのもとに自分の宿を言いに行っていた。

そしてクリストフたちの番が来る。


「クリストフ、アリス、ミシャ。お前らはどこなんだ?」


「私たちはここに泊まります」


クリストフはハルトにウェルトから受け取った便箋を渡す。

ハルトはその便箋を読み出し、大きな声を出した。


「お前ら!長老ウェルトのとこに泊まるのか!?」


「はいそうです」


「これは本物か?騙されてないかが心配だが……」


ハルトが心配になるものわかる。

最高位鍛冶師ウェルト。

5人の長老中でも一番の技能を持つことで知られているドワーフ。

性格は荒く、仕事は全くと言っていいほど受けないことで知られており、また義理堅いとも言われているが、それも本当かもわからないというのが世間一般のウェルトへの知識だ。

ハルト自身も武器を打ってもらおうとしたことがあったが、断られたことがある。

そのためそんな人物が3人もの学生を預かると言っているのが信用できないのだ。


「大丈夫です。私と個人的な知り合いなので頼んだだけです」


「そうなのか!?」


ハルトはクリストフと個人的な知り合いという情報に一番驚いている。

クリストフたちの後ろで聞いているクラスメイトたちも驚いていた。


「ならいいぞ。俺も会ってみたいが機嫌を損ねるかもしれん。それはやめておこう」


ハルトはこれを機に交流してみようかと少し考えたが、機嫌を損ねて3人が泊まれなくなる可能性を考慮してその考えを却下した。

ハルトに戻るように言われ、3人は先程までいた場所に戻る。


「それじゃあお前ら。今日はもうとった宿で身体を休めろ。明日の朝、またここに集合してクラスごとに冒険者カードを受け取りに行く。既に持っているものは受け取らなくていいが、ついては来い。以上、解散!」


ハルトの合図で各々が自分でとった宿に帰っていく。

クリストフはアリスとミシャを連れてウェルトの家に帰ろうとしたが、途中クラスメイトのリージョンに袖を掴まれた。

振り払おうとするが力強く掴んでおり、離れそうにない。


「アリス、ミシャ。先に行っておいてくれ」


面倒なことになりそうだと思ったクリストフは二人にそう伝える。

二人は頷いてそのまま帰っていった。


「なにか話があるのか」


早く帰りたいクリストフは面倒だと思いながら話を聞こうとする。


「お前。どうせ王族の権威を使って無理矢理泊まったんだろ」


クリストフはそれを聞いて呆れる。

そんなどうでもいいことのために時間を取られているのだ。


「ウェルトはそんなもので動くような人ではない」


「はっ、どうだか。王族は信用ならんからな」


「なら貴様が金で雇ってみればいい。まあ、どうなるかはわかっているが」


クリストフはウェルトとは長い付き合いなのでよくわかる。

ウェルトの一番嫌いな者は金、権力などに物を言わせる奴らだ。

そういった態度をとってきた相手は全てブラックリストに入れられ、その家系の誰にも武器を打たないようになる。


「後で楽しみにしておけ」


リージョンはそう言い残し、自分の宿に帰っていった。

クリストフは急いでアリスたちのもとに向かった。

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