第五話 冒険者ギルド
「それにしてもびっくりしたよ、待っててねって言ったのに出てきたらタイシ君いないんだもん。ほんとに無事で良かったよ。」
そんなトラジさんの言葉に「すみません…」と謝る。
「まあ無事だったから大丈夫。それよりそろそろお腹空いてきたでしょ?なんか食べながら話そうか。」
商店街のような道をトラジさんとしばらく歩いていると飲食店や食べ物の屋台などが並ぶ広場に着いた。食べ物を買ってその場で食べれるようにテーブルやイスも並んでいて多くの人で賑わっている。
「ここら辺はダンジョン帰りや依頼帰りの冒険者達がよく使ってる場所でね、いろんなジャンルの料理が手頃な値段で楽しめるんだよ。何か気になるのがあったら教えて?」
そう言われさまざまな屋台を回る。すると大振りのから揚げのようなものを出している店を見つける。
トラジは2人分注文しお金を支払うとから揚げ数個とバーガーバンズが乗った皿を二枚受け取る。
トラジが席に着いたのでその向かい側に座った。
「いただきます…結構濃いですね…?」
試しにそのままから揚げを食べてみるが…美味しいのだけれど味が濃くてそのまま食べるのは多分得策じゃない。
「そんな時のためのパンだよ。」
そういってトラジはバンズを差し出すので挟んで食べてみる。
「どうやら気に入ったみたいだね。」
その言葉に頷き「これ、美味しいです!」と思わず声が出る。夢中で食べていた僕をトラジさんは微笑みながら見ていた。
ボリュームがそこそこある料理を2人とも食べきったところでトラジさんが口を開く。
「そういえばさ…この世界で不思議に思ったこと、あるよね?」
その言葉に頷く、実はこの世界で見かける文字は今まで見たことが無く読むことができないのだ。
それを伝えてみると「やっぱりか」というような顔をする。
「実はタイシ君の使う言葉とこの辺りの国の言葉は違うみたいなんだ。」
「えっ?でも普通に会話出来てるじゃないですか。」
それにエレナさんや衛兵さんとも僕は会話が出来ている。
「実は自動でどんな言語の人とでも会話出来るようになる魔法を君にかけておいたんだよ、名前を付けるなら【半自動双方向翻訳魔法】…って感じの、試しに切ってみると…」そうトラジさんが言った途端に周りの人々の会話などが日本語から理解できない言語になる。
「XX、XXXXXXXx?」
トラジさんが口を開き何かを言うが全く理解が出来ない。
「こんな風に切ると会話が出来なくなっちゃうんだよ。」と魔法をかけ直したのかトラジさんの言葉が聞こえる。
「ただ、この魔法は制約があったり消耗が激しかったりで使いづらい。そこでこの指輪を付けてほしいんだ。」
そう言って透き通るような青い石の付いた指輪を差し出され受け取る。
「その指輪は魔法を知らない人でも装着者の魔力を使って翻訳魔法を発動させてくれるんだよ、見たところ君には魔力があるから使えると思う、試しに付けてみて。」
右手の指に着けた瞬間周りにある看板が読めるようになる。
「あっ!」
驚く僕を見てトラジは笑う。
「ちゃんと使えたみたいだね、よかったよかった。使えなかったらどうしようかと思ってたよ。」
タイシはそのまま周りの建物の看板を見ていると「冒険者組合 」と書かれた建物が目に留まる。
【冒険者組合】、異世界モノの作品にほぼ確実に出てくる施設。トラジも視線に気づいたのか説明してくれる。
「冒険者ギルドは冒険者たちが依頼を受けたり素材を売ったりステータスの確認が出来るんだよ。どの国にもあるし、しかも冒険者カードは身分証としても使えるんだ、便利だからこの後作りに行くよ。」
「ステータスっていうのは何ですか?」あまり普段読んでいた作品では聞かないため質問をする。
「ステータスっていうのは…ギルドで聞いたほうがいいかも…よし!行こう。」
「あと、お皿はそのまんまで大丈夫。それは魔力で出来てるからしばらくすると消えるんだよ。」
お皿に手を伸ばしかけた所でそう止められる。便利だなぁ…
結構近くにあった冒険者ギルドの少し大きな木の扉をトラジは開けてそのあとをついていく。中には並んだ窓口や個室、さらにはフードコートのような場所もある。トラジはそのまま空いている窓口へ行き置いてあるベルを鳴らす、すると奥からすぐに人が出てくる(受付嬢ってやつだろうか?)。
「こんばんはトラジさん!今日はどんな御用でしょうか?」オレンジの髪色の女性は元気よく言う。
「今日は冒険者登録しに来たんだ。」
「じゃあそちらの方が?」
「うん、新しい弟子みたいなもん。タイシ、あとは彼女の言うとおりに冒険者登録を済ませておいて、向こうで待ってるし念のため魔力線も繋げておくから何かあったら頭の中で僕に呼びかけるんだ。」そう言ってフードコートの方へトラジは歩いて行ってしまう。大丈夫かと不安になっていると「大丈夫だよ」とトラジの声が聞こえ安心する。
「ではこちらの紙にいろいろ書いちゃってください!」そう言って彼女は紙を差し出す。
その紙を見ると名前、年齢、性別といった簡単なプロフィールを書くようだ。
「名前はタイシとだけ書いて他は普通に君の国の字で書いて大丈夫」というトラジの言うとおりに書き受付嬢に渡す。
「お名前はタイシさんで、冒険者経験は無し…ではステータスの開放もまだでしょうか?」
「はい、無いです。」(「ないって言っとけ!」というトラジの声が聞こえる…)
「ではこちらへどうぞ!」そう案内されたのは個室でイスと機械のようなものが並んで置かれている。そのままイスへ誘導され座る。するとトラジから「その魔道具は魔法を使いながらだと使えないから一度テルを切るよ」と言われプツリと音がして魔力線が切れる、ただでさえよく分からない機械の横に座るのが怖いのにテルが切れて不安に思っていると、
「確かに不安ですよね…私も昔緊張して座りましたよー」そんなのほほんとした優しい声がしてその雰囲気に少し怖いのが和らぐ。イスのひじ掛けに腕を置き少しリラックスする。
「では目を閉じても〜っとリラックスしていてくださいね?では!いきますよ~」そう言って機械を操作し機械が動き始める。目を閉じていると心臓のあたりに熱を感じる…そのまま十秒ほどすると熱は消え機械の音も消える。
「はい、終わりです!ちゃんとリラックスできてましたね、とっても早く終わりました!この魔法具は魂に作用して本来だせないような力を引き出しさらに成長速度も上げてくれるんですよ。こちらが結果です。まあ、解放したてですからステータスは全部ゼロですけど…」
そう言って渡された紙を見ると[Lv1,素早さG.0,体力G.0,力G.0,防御G.0,魔力G.0]と書かれている。
「今はゼロですが鍛えたり魔物を倒したり魔法を使うとそれぞれの数値が上がっていきます!また、ステータスには100ごとに「G,F,E,D,C,B,A,S,SS,SSS」という風に変わっていきます!1000になるとSSSから上がらなくなりますが…レベルが上がれば数値はゼロに戻り、今までのステータスを繰り越した上でまた成長出来ます!まあ成長速度は遅くなってしまいますが…」
「レベルというのは?」
「はい!レベルはその人の魂の器がどれだけ成長しているかを表す数字です。レベルに1でも差があると段違いに強くなれます!でも、ステータスと違って上げるには条件があり、二つの条件両方を達成する必要があります!一つ目はステータスのランクが一定以上になることで二つ目はなにか自分の中の壁を超えることです!」
「条件をもう少し詳しく聞いても…?」
「はい!…と言いたいところなんですが一つ目の条件はわかってるんですが…二つ目の条件はあまりわかってないんです。一つ目は全ステータスがBの500をこえるか一つのステータスがSSの800を超えるかです。まあこちらは冒険者を続けていれば達成できますが、二つ目はかなり大雑把というか…実際レベルを上げたことのある人に聞くと「師匠との戦いに勝った」とか「格上の相手を足止めした」とか人によっては「勇気を出してプロポ-ズをしたら上がった」というようにまるで分からないんです。唯一、それらに共通する点は「自分の中の壁を超えた」ことだけなんです。だからなにか目標を立てていけばよいのではないかと思います!さてと…あとは冒険者カードができれば終わりなのでトラジさんの近くで待っていてください!」
その言葉に従い部屋を出ようとしたところで後ろから彼女に話しかけられる。
「タイシさん。トラジさんのそばで笑っていてあげてください、あの人があんなに笑って話しているのは…なんだか久しぶりです、あの人の心を癒せるのは今はタイシさん、あなたしかいないかもしれませんから。」僕は詳しく聞こうとすぐに振り返るが
「速っ!もう居ない…」
すでに彼女は別の扉から外へ出てしまっていた。
一話から一年たってる…
投稿ペース早くしたいです