第三話 銀の輝き
トラジさんの口から出た言葉に大志は驚いた、もし転生者とかがよくいる世界なら話が早いからだ。
「もしかしてこの世界で転生者って有名ですか?」大志は期待を込めそう口にするが…
「いや、たぶん君の思う意味の転生者はほぼ知られてない。なんなら僕もほぼ会ったことが無い。」
「え?」…予想外の言葉に驚きを隠せなかった。
「君の期待してるものと違うと思うけど僕の知る意味の転生者の意味、一応聞いとく?」
「一応教えてください…」
「うん、わかった。ただ今日はもう町に帰った方がよさそうだ。さっきの口ぶりからして帰る場所もないんだろう?一緒においで、明日からいろいろレクチャーしてあげるから。」
たしかにいつに間にか日が傾いて来ている。頼れる人が今いない大志にとってとてもありがたかった。
「じゃあよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。」少し微笑みながらそう言ってトラジは歩き出した。
「じゃあ改めて自己紹介しておくよ、僕はトラジ、トラジ・インペーナだ。17歳、冒険者ランクはシルバー…っていっても君は何も知らないんだからそこらへんも教えないとなあ。」
着いて来てと言われ乗り込んだ馬車の中、黒と青のオッドアイの眼を持つ黒髪の背の高い青年、トラジはそう話し始める。
「じゃあ改めて、僕は大志です。松坂大志。16歳です。」こちらも自己紹介をすべきだと思い自己紹介を改めてする。
「マツサカが名字かな?こっちだとぜんぜん居ない名字だね。」
「もしかしてこの名字だと怪しまれたりしますか?」不安になり聞いてみる。
「名字はない人も多いし…なにより名乗らなくていいことが多いからね、ただのタイシとして名乗ればいいよ。」
「わかりました、そういえば今はどこに向かっているんですか?」
「もうじき着くよ。外を見てごらん。」そう言われ馬車の外に少し身を乗り出してみると大きな城壁と城門、そこに列を作る人々が見えた。
「冒険者になりたい人がよく初めに目指す町、セントルーアだよ。まずここで冒険者として一人前になればこの世界ならどこでも食っていけると思うよ。強い冒険者はどこも足りてないからね、明日からいっぱいこの世界のこと教えていくから楽しみにしといてくれ。僕が君を一人前にしてやるよ。」
…凄いハードなトレーニングとかするのだろうか?少し不安になった。
「次の方どうぞ!」門番の衛兵の言葉に従い列に並んでいたトラジの馬車が進む。
「身分証を」
「はい、どうぞ」トラジと衛兵がそう会話する。…そういえば身分証が必要なら僕はどうすればいいんだろう。そう思ってると自分の番が来た。
「トラジくんですね、お疲れ様です。ところでそちらの方は?」
「ええと…」いい回答がわからず言葉を詰まらせていると、
「その子はタイシ君だよ、冒険者になりたいって言ってたからね、連れてきたの。」トラジが説明してくれた。どうやらよくあることなのか衛兵は通行許可を出して「大変でしょうが頑張ってくださいね」とわざわざ声を掛けてくれた。
その後トラジさんは「手続きがあるからここで待っててね」と言って建物に行ってしまった。ぼんやりと建物の前で街を歩く人たちを見ながら考え事をする。
(この異世界に一体何日居れるのだろうか?せっかくなら何か友達に話せる土産話を作ってから帰りたいところだけど…)
そんな時ふと、視界に銀のきらめきが見える。よく見るとそれはあの夢でも見た輝き。あの銀髪の女の子だった。
彼女を驚きながら目で追いかけているとふとなにかから逃げているような動きであること。そして彼女を追いかけるような動きの三人の男がいることに気が付いた。
あのままではまずいことになるかもしれない…待っててとは言われたけど追いかけることにした。
「お嬢ちゃん彼氏もいないようだし暇なんだろ?俺たちも暇なんだよぉ、一緒に遊ぼうぜ?」
「やめてください…離してください…」
しばらく女の子は逃げていたようだが普通につかまってしまった。よりにもよって人通りの少ない路地だった。かなり怖いが助けにいくことにした。
「すみません、僕の彼女になにしてるんですか、放してください。」ナンパを撃退するテンプレのような言葉をなんとか口にする。
「チッ、なんだよ、彼氏持ちかよ、仕方ねえ行くぞ」
案外あっさりとガラの悪い三人の男は去っていった。
「すみません、ありがとうございます、助けてくれて…」
「いえこちらこそすみません、勝手に彼女だなんて言ってしまって…」
「いえ、助けてくれた時、私は嬉しかったです…この町に来てからああいうのは多かったんですが助けてくれる人はほとんどいなかったので…私はエレナです、エレナ…マリンと言います…」夢と同じ静かな口調で彼女は言う。あと、さっきまで気にしていなかったがふと胸元をみたとき彼女が胸が大きいことに気づいた、ナンパが多かったというのはそれが理由なのかもしれない。というか顔もかわいいしなんなら好みだ。
「僕はタイシです。えっと…」好みであることを自覚した途端になんだかドキドキしてきた。
「タイシ君だね、じゃあまたね…ほんとにありがと…」
「じゃ、じゃあまた…」急いでいたようですぐに行ってしまった…
…完全に一目惚れしてしまったかもしれない、夢のこともある、また会えるといいが…すぐに会えるだろうか?
物語の進みが遅すぎたのでがんばってたくさんかきました
メインヒロインのエレナさんが登場しました。
脳内の物語はもうあるんですけどね、今度はもっと早く…