7:専属侍女
王宮の自室に戻った俺は、改めて自室を見回した。
青を基調としたカーテンやファブリックは調度品との均整も取れて落ち着いている。寝室も似た様な色合いで、とても急拵えとは思ない。だが、慣れるまでに時間がかかるだろう。既にネイトと過ごした隊舎の狭い部屋が懐かしい。
伯父上の命受けた後、隊舎の自室を引き上げて王宮に居を移した。ネイトはまだ戻っておらず置き手紙を残してきたが、暫くは会えないだろう。
王宮が手配した王太子付きの侍女は、侍女長のカレンと侍女のドナ、エイラの3人で、全員オランド殿下に仕えていた者達だ。宰相が連れてきた見知った顔に緊張が解けた。
部屋といい、侍女といい、宰相の気遣いにありがたい気持ちが湧いたりもしたが、昨晩の会話や、叔父上の話しを思い出して半減した。
「ドナ、もう一杯もらえるか?」
「構いませんが、この後のオレリア様との面会でもお茶を飲まれるのであれば、控えた方がよろしいのでは?」
「そうか、そうだな…お茶を飲むんだよな」
「?そうですね。面会とは言え、お茶の一杯も出さないのは失礼に当たりますから」
カレンの尤もな意見に軽く落ち込む。
「令嬢とお茶を飲む機会がなかったからな」
機会の問題ではなく常識なのだと、己に突っ込みながら体裁を保つ為、苦しい言い訳をする。
「それは…仕方ありませんね」
済まなげに、遠慮する様に肯定するカレンのその反応に既視感を覚える。そう、伯父上達だ。
いつから?オランド殿下の元で共に仕事をしてた頃からか?
「まさかとは思うが…カレン。俺の事をーー」
「皆まで言う必要はございません!フラン殿下、大丈夫です。ここに居る3人は、全てを理解し、受け入れております。宰相閣下もそれを踏まえた上で、私達をフラン殿下付きにして下さったのです」
カレンの隣でドナとエイラも力強く頷く。
宰相への感謝の念は炭となって消えた。
思った以上に深刻な事態に、己のメンタルは砕ける寸前。
オレリア嬢はどうなんだ?まさか、婚約者となる令嬢に男色だと思われているか?
近衛に戻りたい。本当の俺を知っているのは近衛の仲間だけだ。
ーーー
「失礼します。本日よりフラン殿下付きとなる。ネイト・ファン・ソアデンです」
ネイト…お前は俺の救世主だ




