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王国の彼是  作者: 紗華
23/197

23:目覚め

『オレリア嬢は、お前に惚れてる』



ーーパンッッ


「フランッ!模擬剣を何本壊すつもりだ!」


訓練場にイアン団長の怒号が響く。


視界不良を想定した春霞の中の早朝訓練。

煙に見立てた霧の中で剣を振るうのは、いつも以上に集中力が必要なのだが、昨日のネイトの言葉が頭から離れない俺は、ケガこそしないが、マナの制御が上手くいかず模擬剣を壊し続けている。


「す、すまない…」


「そんな集中力を欠いた状態で剣を振るな!考え事をするなら走ってこい!!」


己の苦手なものが閨教育ではなく、女性そのものと気付いたのは中等学園の頃。


義務を大義名分に、笑顔で本音を隠し、自在に涙を操りながら、己の利益を求める令嬢達に忌避感を抱いた俺は、我儘気随に義務(結婚)を放棄し、騎士の道を選んだ。


だが、道を変えても己の身に流れる血は変えられない。


放棄することは許されない王族の義務。

俺は王太子としてオレリア(義務)を受け入れるだけ。

オレリアという人間に忌避はないが、己の忌避(女性)する存在。


呆けた時の年相応な表情も、見惚れる様な笑顔も、恥じらいながら名前を呼ぶ声も、キスした時の唇の柔らかさも…


「フラン様!まだ走られるのですかっ?もう誰もいませんよっ!」


カインの大声で我に帰る。訓練場に居るのは、汗だくの俺と、拭い布と水を持って木陰に佇むカインの2人きり。


「イアン団長に思う存分走らせろと言われましたが、一日中走るおつもりですか?」


「考えがまとまらなくてな」


「そんなに難しい事ですか?オレリア様はフラン様に惹かれている。()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけでしょう。何を拗らせる必要があるんです?」


「ちょっ、ちょっと待て。今、何と言った?」


「……拗らせるな」


「違う!!その!前!」


「オレリア様への独占欲全開で、見てるこっちが恥ずかしい」


「おいっ、さっきと言ってる事が違うだろ!」


ネイトがもう1人増えた様に感じるのは気のせいか?


「全く、面倒くさい男だな。()()気付かないのか?きっかけがどうあれ、お前がダリアの王太子になったのは、王族の義務を果たす為だけが理由か?ダリアの民を慈しむ、お前自身の思いもある筈だ。オレリア様の事も義務だけじゃない、オレリア様に対するお前自身の想いがあるだろう?」


「だとしても、俺は女性苦手で…」


「そうやって十把一絡げにするな。オレリア様は他の令嬢達と違う。お前も本当は解ってるのに、義務に縛られて、女性が苦手なのを理由にして、自分の想いに気付かない様に蓋してるんだ」



『義務感に縛られるな』



「ネイトは、俺自身が気付いてない気持ちに気付いてたというのか…?」


「ネイト殿だけじゃない、アレン殿も気付いてるよ。アレン殿はお前自身の答えを聞きたかったようだが、自分の気持ちに気付いてないお前が義務感で答え様としたのを、ネイト殿が阻止したんだ」


お前達は千里眼を持っているのか?


「…もう少し走る」


「何を言ってるんだ!却下だ。仕事に行くぞ」


ーーー


一心不乱に書類を捌き、平時より早く執務を終えた俺は、オレリアの部屋で王族の居住区に居るはずのない、公爵家侍女のエルデに迎えられた。


「そうか、宰相の話というのはエルデの事だったのか」


「はい。オレリア様のお傍に付く事を、旦那様が陛下にお願いして下さり、許可を頂きました」


侍女の事まで頭が回らなかったが、デュバル公爵が気を利かせてくれて助かった。


「エルデが居れば、リアも安心するだろう。分からない事があればカレン達に聞くといい」


「ありがとうございます」


「エルデも昨日から寝ていないんだろ?俺が付いているから、休んできたらどうだ?」


「先程仮眠を取らせて頂きましたので大丈夫です。ですが、公爵家から届いたオレリア様の荷物を解く間、お願いしてもよろしいでしょうか?」


「構わない」


「ありがとうございます。よろしくお願い致します」


昨日のアレン殿を真似てベッドに腰掛け、オレリアの髪を梳く。


「リア」


名前を呼んでも反応はない。それを残念に思うと同時にホッとした。


ネイトとカインに気付かされた己の気持ち。


「俺は…オレリアに、惹かれている」


己の声に触発され、身体中の血が心臓に集まる。目頭が熱くなって息が苦しい。


気付きたくなかった…気付かなければ、こんなに苦しさを覚えることなどなかったのに、己の無力さにこんなに打ちのめされることはなかったのに、失うことをこんなにも恐れることはなかったのに。それなのに、それさえも凌駕する共に生きたいという欲。


「リア」


祈りを込めて白磁の額にキスをする


「フラン…さ、ま…?」



『フラン、護りたい者(愛する者)はいるか?』



あの日のオランド殿下が俺に問いかけた


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