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王国の彼是  作者: 紗華
17/197

17:立太子の儀

王族が儀式でのみ纏う事を許される、高貴と(ゆかり)の象徴の()


ダリア王国の王太子は、騎士団と王国軍を統轄する総司令官に就位する為、儀式や式典では正装軍服を纏う。

濃紫のダブルブレストの詰襟には銀の刺繍が施され、銀の飾緒と、胸元には総司令官の証である勲章が光り、左肩には濃紫のペリースが掛かっている。


己の人生に関わる事のない色と思っていた紫を見に纏い、王城の前に整列するグレーと濃紺の正装軍服に身を包む騎士達を眺めながら、目まぐるしい日々に追いやられていた濃紺の軍服への未練を、拳を握ってやり過ごす。

今の己は紫を纏い、この二色を従える立場に在る。

最敬礼で見送る騎士達が作る道を進み馬車に乗り込む。


グレーの王宮騎士団は、公爵家から大聖堂までのコースの警備とオレリアの護衛を担っており、この場にいるのは王城の通常警備の王宮騎士団員達。

濃紺の近衛は、既に出発した両陛下と、王太子、この後出発するシシリア王女の護衛にそれぞれ付く。王城と大聖堂は一直線の大通りで結ばれており、視界が広く取れる為、護衛の数を倍にして大通りには柵を設置し、警備は最低限にした。



大聖堂に到着し、歓声に手を振って応えながら中に入る。

司祭の案内の元、女神ユノンの像の前に移動し、両陛下と貴族の当主達が見守る中、儀式は厳かに始まった。

大司教の祈りを聞きながら、これまでの日々を思い返す。


夜会の日に告げられた、ナシェルの廃太子と己の立太子。

慣れない執務と、男色疑惑、デュバル公爵令嬢との婚約。

剣だこだけだった己の手には、ペンだこが増えた。


伯父上に勧められ、古巣で早朝鍛錬をする様になってからは、頭も身体もスッキリし、執務の効率も格段に上がった。

執務に追われる甥を不憫に思ったのか、男色の甥を慮ったのか、真意不明なだけに複雑ではあったが、ありがたい申し出だったのも確か。


「フラン殿下。女神ユノン様に御名を告げ宣言を。水晶にマナを注いで下さい」


祈りを終えた大司教が水晶を女神像の前に置く。


王太子として生きる覚悟も、オレリアと共に生きる覚悟も決めなければならない。


右手を水晶の上に置き、左手を胸に当てて宣言する。


「我、フラン・ダリア・スナイデルは、ダリアの安寧と繁栄の為、ダリアに在り続ける事を宣言する」


『まだ、足りない…』


女神像の足元に置かれた水晶にマナを注ぐと、子供の声が聞こえてきた。この場に子供は居ない。不自然にならない程度に周りの様子を窺うが、参列者達には聞こえてなかったのか、反応している者は居ない。


気のせいか…


「フラン・ダリア・スナイデルをダリア王国王太子として立太子する事を、ここに宣言する」


伯父上の宣言で立太子の儀は終了。

少しの休憩を挟んで、この後行われる婚約の儀には、従妹のシシリア王女と、貴族の後継者達が参列に加わる。


水晶にマナを注ぎ過ぎたのか、身体が怠い。

マナの操作に関しては、学園ではトップを保ち続け、騎士団や近衛での訓練で更に上達した。マナの保有量も王族は特に多い為、ここまでの状態になる事は、通常ではありえない。


さっきの声が関係しているのか?マナを注いでたつもりだったが、吸い取られていたのか?


「殿下、そろそろお時間です」


思考に沈んでいるとカインが声をかけてきた。

身体の怠さは変わらないが、帰城後の執務は休みにしてあるから、早目に休めば明日には回復するだろう。


カインとウィルを連れ、控室で待つオレリアを迎えに行くと、扉の前にはネイトが立っていた。

ネイトが扉をノックし、フランの到着を告げると、扉が左右に大きく開く。


「フラン様。素敵ドレスをありがとうございます。本日は宜しくお願い致します」


挨拶と共にカーテシーをするオレリアの姿に息を呑む。


今回の婚約の儀の為に仕立てたオレリアのドレスは、フランの正装より色の薄いウィスタリアカラーで、絹タフタのAライン。フランの色である金糸で刺繍された小さな花や蔦が、ウエストから裾に向かって散りばめられている。

紫を纏えるのは王族のみなのだが、オレリアに非はない事、未来の王族入りが確定している事を示す為、特例として紫を纏う事を伯父上が許可がした。


国色と言われるオレリアが、自分の贈ったドレスを纏い、その胸元には己の色のブルーダイヤモンドが光っている。

独占欲など持ったこともないが、今まで感じたことのない高揚感に包まれ、言葉が出ない。

あんなに苦しんだドレス選びだったが、この瞬間の為だったのかと思えば、その道程も悪くないと思えてしまう。


「…リア。綺麗だ、良く似合っている。本当に…綺麗で……すまない、もっと気の利いた事を言えれば良いんだが…何も言葉が浮かんでこない」


「ありがとうございます。…フラン様もとても素敵です」


身体の怠さは吹き飛んだが、己の語彙力の無さに膝を着きたくなった…





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