16:報告書
「どうだったんだ?デュバル公爵令嬢とのデートは?」
王城の朝の会議室。警備計画案が仕上がったと連絡をもらい、最終確認をしているのだが、予想通りの展開に溜息が出る。
扉の先で待っていたラヴェル騎士団長とイアン団長の、好奇心を全く隠していない顔に、後ろに控えるネイトへ殺意が湧いた。
「護衛に付いた隊士から、業務報告書が上がってるのでは?」
「業務報告と護衛対象の行動に相違がないか、確認する必要があるだろう?」
「…イアン。殿下に不敬だぞ」
「おいおいラヴェル、お前も報告書を読んで、腹捩らせてただろうよ」
ネイトよ。どんな報告書を提出したんだ?
「で?馬車から降りたデュバル公爵令嬢の顔が真っ赤だったって、何したんだ?」
「聖堂前の広場は半分だけ開放するんだな?」
「城下町じゃ指を絡めて歩いてたそうだな」
「公爵家から聖堂までのコースの警備に問題はないな」
「馴染みだった店の連中にデュバル公爵令嬢を自慢して回ったんだろ?」
「~~~っ。ネイト!お前はどんな報告書を提出してんだ!」
「宰相閣下の元まで上がる報告書です。虚偽の報告は一切しておりません」
「虚偽はなくとも、脚色してるだろうが!」
「イアン団長には問題ないと言われましたが?」
「問題しかないだろ。馬車の中では会話しかしていないし、歩いてる時も指を絡めたりしてない!」
「ですが、広場でのキ――」
「見たのか?!」
「人聞きの悪い事を仰らないで下さい。不可抗力です。殿下は長過ぎなんです。」
「そこへ直れ!その口切り落とす!」
しれっと嘘をつきやがって。ついでに、キスの後のリアのあの表情を目にしたであろう、その眼もくり出すか?
「ブフッッ」
「ヒッ…グ、ククッ」
イアン団長は吹き出し、ラヴェル騎士団長も堪え切れていない笑いが漏れている。笑うなら堂々と笑え。
「…ネイト。報告書は提出し直しだ」
「残念ながら、朝一番で宰相閣下に提出済みです」
ラヴェル騎士団長は過呼吸で退場。
会議は警備計画承認で終えた。




