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王国の彼是  作者: 紗華
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113:騎士科との交流 オレリア&ヨランダ

貴族科、騎士科、魔術科、文官科、奨学科。正五角形を形造る様に5棟の学舎が配置され、庭園を挟んだその中心に建つのが教員棟。

全ての科の教員が集まる教員棟は、1階が教員室と学園長室、2階は教員寮になっており、ロイド先生の様な王都外出身の教員達が生活している。


朝はゆっくり出来るが、直ぐ下が仕事場だと緊張感が中々抜けないのだと、ロイド先生が笑いながら話していらっしゃった通り、二階建ての教員棟は学舎に比べると建物も小さく質素な造りなのだが、その余計なものを削ぎ落とした厳格な雰囲気が近寄り難さを感じさせる。


貴族科の生徒達は自身で動く事をしない為、教員棟に用がある際は侍従や侍女が用向きに赴く。なので、これまで教員棟へ来る事は皆無だったのだが、今回の件は自身で責任を取ると決めて、こうして足を運んでいるのだけれど…


教員室の扉の前で小さく深呼吸をして緊張を逃し、扉を開く。


「失礼致します」


放課後の教員室には、当たり前だが殆どの先生が揃っておられる。

先生方のお仕事の邪魔にならない様、息を殺して目的地へ足を進める私に声をかけてくれたのは奨学科の先生。


「こんにちは、オレリアさん。騎士科の生徒はもう来ているわよ」

「こんにちは、先生。本日も場所をお借り致します」

「どうぞ、剣術大会楽しみにしてるわね」

「はい…ありがとうございます」


剣術大会の代表代理を務める事になり、放課後は教員棟で過ごす事が多くなった私達は、他の科の先生方ともすっかり顔馴染みになったが、事情を知っている先生方の温かい言葉と視線は、正直気まずい…


「お待たせしました。遅れて申し訳ありません」


「私も今来たところです。オレリア嬢、本日は作成し直した出場者名簿を、各家に届ける手配です」


剣術大会は、自領から出した騎士生の技量を確かめられる数少ない機会の為、騎士団を持つ貴族の当主達は、剣術大会を観覧してから自領へ戻る。

当主の中には、出場者の出身地や、性格、特徴などが記載された名簿を参考に、引入れたい騎士生を選抜し、自領の騎士団へ勧誘する事もある為、観覧を希望する全ての貴族のタウンハウスへ届けなければならない。


「承知致しました…あの、この様な事になってしまい、ご迷惑をおかけ致します」


机の上には、作成し直した名簿と詫び状と封筒、そして送り先の一覧表が既に並べられている。


「いえ、あの件でお三方に非はありません。なので気になさらないで下さい」

「ですが、皆さんの訓練の時間を削ってしまう事になってしまって…」


今来たところだと微笑んで、本日の作業について説明をしてくれる騎士生も勿論、剣術大会に出場する。


学園を退学処分となったエリック様は言わずもがなだが、剣術大会を出場辞退した優勝候補の3人も、魔術科の女生徒に対する嫌がらせについて以前から注意をされていた事もあり、最終的に停学処分となった。

本人達は自業自得であって、ロイド先生も彼等の性根を叩き直せたと話していらしたけれど、訓練の時間を削って手伝ってくれる騎士生達、場所を提供してくれる先生方にまで余波が広がってしまっている事には申し訳なさしかない…


「もし、どうしても気になる様でしたら、今度は私とも手合わせをお願いします」


「…手合わせ、ですか?」

「はい」


あの時の模擬戦が、ふと過ぎる…

真っ向から剣を合わせる剣術と、避けて、いなして急所を叩く扇術では戦い方が全く違う。

先日の模擬戦は、成敗のつもりで扇を手にしたけれど、手合わせという事であれば私も剣をーー


「私も扇を持ちますので」

「…………え?」

「作業を始めましょう」


ニッコリと笑った騎士生は、手際良く詫び状と名簿を封筒に入れて閉じていく。

…冗談だったのね…


「それでは、私は剣でお相手致します」

「…………は?」


私も冗談で返したのだけど、この無表情は信憑性を増すらしい。

手が止まっていらっしゃいますわよ…なんて、ヨランダの様に言う事は出来ないから、こちらも微笑んで作業に入る。


「…参りました…オレリア嬢も冗談を言うのですね」

「気分を害された様でしたら、申し訳ありません…」


「ハハッ…()()()()の冗談のやり取りで、気分を害する事はありませんよ」

「…友人…そうですね…」


魔術科だけでなく、騎士科にも()()が出来るなんて…迷惑をかけてしまっているけれど、とても、嬉しい…


ーーー


「薔薇ではなく、今になってダリアの手配ですか…?」

「何故急に?薔薇の手配はされていなかったのかしら?」


「いっ、いえ、してました。してましたが…」


貴族科棟の食堂のいつものテラス席。本日の昼食は仔牛のポワレとサラダ、そして騎士生…のお客様が同席している。

居心地悪そうにしているのは、周りの生徒達の、特に女生徒達の視線が熱いからで、決して、私とエレノアの追及のせいではないわ。


「「してましたが?」」

「…薔薇が…足りないんです」


「「………足りない?」」


「1、2年生は出場人数も少ないので足りるのですが…我々は、()()()()なので…」


王族の懐妊の報せに国が湧くのはどこ国も同じだが、ダリアは特に、その当時の王太子夫妻になかなかの子供が出来なかった事で、王宮から懐妊の報せがある度に、王族と縁を持とうと貴族が続き、慶事にあやかろうと平民が続き、オリアーナ妃殿下の代は豊穣、オランド殿下の代は豊作、ナシェル様と同齢の私達は豊熟と呼ばれる程に多くの子供が産まれている。


騎士生が話す通り、剣術大会に出場する1、2年生は選抜方式で決めるけれど、最終学年は全員が出場する上に、豊熟なのだから例年より多くの薔薇の手配が必要だとわかっている筈…なのに足りないとはどういう事かしら?


「…学園の礼拝堂…薔薇は…ナシェル様へ手向けられたのですよね?」


オレリアが静かに微笑んで騎士生に問いかけると、分かりやすく頬を染めた騎士生が、少し言いづらそうに話を始めた。


「……オレリア嬢は、ご存知でしたか……ナシェル様は…あの様な騒ぎを起こされはしましたが…私達の代の…代表ですから…」


そう、私達の豊熟の代の象徴はナシェル様。

オレリアとの不仲は噂されていたし、実際、男爵令嬢に入れ込んで浮いてはいたけれど、それでも王太子としては優秀で、人望もそれなりに厚かった。


刑に処されたナシェル様の葬儀はなく、墓参するにも登城許可を得なければならない。なので生徒達は学園の礼拝堂で祈りを捧げているが、礼拝堂に日参して祈りを捧げているオレリアは、騎士生の話で気付いたのね…


「そういう事でしたら、ダリアの花で手配いたしましょう?」

「そうね…王都の花屋を巡れば何とかなるのじゃない?」


「それよりも、ダリア農園へ直接行った方が早いのではなくて?」


「農園…そうですね、では我々がーー」

「私達も参りますわ」

「「「え?!」」」


国花であるダリアを栽培している農園の近くに【アキレアの咲く丘で】の舞台になった丘がある。


王都の外れにあるにも関わらず、一度も行った事がなかったけれど、あの丘に私も立てるのね…


「あの…ヨランダ嬢?農園の近くの森は、魔物が出ると言われているので危険なのですが…」


「ご心配には及びませんわ。私達が付いておりますから」









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