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王国の彼是  作者: 紗華
113/197

111:レナの見せる夢 フラン&オレリア

デュバル公爵が、頭を横に振った…

オレリアが…泣いている…


俺の居ないところで、1人て傷付くなと言ったのに…何故、そんなに泣いている…?

抱き締めたいのに身体が重い、頭も痛い…


ああ、そうだ…俺は…森でーー


「フランッ!良かった…目が覚めて…」

「殿下っ!本当に…良かった…」


「…カ、イン…カレン…」


「直ぐに、先生を呼んで参ります」


「お願いします、カレン殿。フラン、分かるか?アズールのお屋敷だ。森で救助された時に倒れて、高熱で3日間寝ていたんだ」


涙を拭いながら、医者を呼びに部屋を出たカレンも疲れた顔をしていたが、常にない優しい声で状況を説明しながら、水差しからグラスに水を注いで、飲ませてくれたカインも、相当に疲れた顔をしている。


すまないと言いたいが…まだ、頭が痛い、息をするのも痛い。

力が入らない…だが、俺よりも…


「……レイン…は…?」


「レインは昨日の内に熱も下がって、部屋の中の移動も出来るまでになった。だが、背中の裂傷の範囲が広くてな、傷も縫ってるから、しばらくは安静だ。ウィル殿と、エルデ嬢が付き添っているよ」


「そうか…良かった」


診察に来たのがポルタ宮医だった事に驚いたが、俺とナシェルが帰還出来る様になる迄のアズール滞在を、伯父上から命じられて来たと言っていた。

今回の遠征には勿論、医官を伴っているし、アズールにも医師はいる。にも関わらず王宮医であるポルタ医を寄越した伯父上の心中は…測り知りたくない。


「ネイト殿はレインの代わりに、ラヴェル騎士団長達と一緒に畑へ出てる。叔父上は、魔術師とアズール騎士団を率いて森ヘ入って、瘴気の発生源をもう1つ発見した」


着替えを手伝ってくれたカレンとドナが下がった後、起き上がれない俺が話し易い様にと、枕元に椅子を寄せたカインが、この3日間の報告をしてくれたが、その話は穏やかなものばかりではなかった。


「瘴気の…発生源が…新たに出来たと…?」


「いや…伯爵と共に再度地図を見直して、水溜まり…と言うより沼だな、の発生源はここ最近発生したもので、古木も最近のものだった事が判明した。叔父上達が発見したのが、本来の浄化予定だった発生源だ」


「この短期間で…2つもか…他の領地も……同じだろうな…っ…」


海側の領地の魔物出現率が上がっていたのは、新たな瘴気の発生源が原因だったのか…


「デュバルとラスターにも連絡を取って、状況を確認しているところだ」


瘴気の発生源の話題に沿って出たデュバルの名に、先程見た夢が頭を過ぎる。


「…リアには…俺の事…」

「勿論、デュバル公爵からオレリア様に伝えられている」


『寵児も心を痛めておる』

「「?!レナッ」」


「……っう……くっ…」

「大丈夫かフランッ?!…レナ、その登場の仕方はなんとかならないのか?」

『慣れろ』


「…っレナ…夢に…リアが、出てきた…あれは…レナの…仕業か…?」


『左様。涙する寵児が不憫でな、呑気に寝ている伴侶を起こしてやろうと見せたものだ』


「夢…?」


「あの、場所は…学園の面会室か…?デュバル公爵が…リアの訴えに…頭を横に振っていた…デュバル公爵がっ…帰った後…リアが…1人で泣いてたんだ…っ…」


そう、あの場所は学園だった…制服を着たオレリアとデュバル公爵。

おそらく俺の事を伝えに行ったのだろう…そして、オレリアはアズールに来たいと訴えたが、デュバル公爵が許さなかった。


オレリアは学生。早期卒業出来るとはいえ、強く望んで復学したのだから、最後まで全うしろといったところか…


「デュバル公爵とオレリア様の実際のやり取りを夢に見せたと…それにしても、宰相閣下ならまだしも、怪我をした婚約者の見舞いに行きたいと言う娘の願いを、デュバル公爵は聞き取れない程の狭量だった…という事か?」


『……斯様な事では…ない…』


「眷属のくせに、何を躊躇っているんだ?」


「まさか…リアの身に何か…?」


『……実はな…寵児は罰を受けておるのだ…』


「「罰?」」


天香国色、清廉潔白、品行方正…俺と対極の二つ名を持つオレリアが罰?と耳を疑ったが、話を聞いて納得した。


『寵児は泣いて懇願したのだがな…致し方あるまい…』


「そ、それは…仕方ないな…だが…ッククッ…っうっ……流石だな」


「エレノアまで…何をしているんだ…」


『会う事は叶わんが、寵児と伴侶、互いの姿を夢に見せる事が出来ると話したら、泣いてばかりの姿では伴侶に嫌われてしまうと申してな…何とか元気を取戻した』


「フラン様も、腑抜けていられませんね」

「そう…だな…いい……ところを…」


『…眠ったか』

「まだ熱も高い。まだ身体が辛いんだろ…」


ーーー


お父様に怪我を負ったフラン様の元へ行く事を許して頂けなかった…


自分のした事に後悔はない…ないけれど、もっと上手に立ち回れたのではないかと悔やまれる…フラン様が心配で涙が止まらない。



『寵児よ、夢で会わせてやるから涙を納めよ』



レナ様が夢で見せてくれるフラン様の、身体に包帯を巻き、毒で熱に魘されるお姿は、見ているのが辛かった…けれど、やっと…


「フラン様が…お目覚めになられた…良かった…」


『寵児も泣いてばかりでは、伴侶の心労となる。寵児の元気な姿を見せてやらねばな』


「はい。ありがとうございます、レナ様」


『寵児は優しい。友の為に祈り、友の為に怒り、友の為に戦う…寵児の母も同じであった』

「レナ様は…母の事をご存知なのですか…?」


『その加護は寵児の母に授けるものだったからな……だが、母の運命は決まっておった…故に、女神は母の胎内に宿った寵児に、加護を授けた』


「母が授かる筈であった加護…であれば、ジュノー様はがっかりされたかもしれません…父にも心配ばかりかけていますから…」


夜会の前日に叱られた時に、初めて父の心の内を知り、これからはと思っていたのに…学園に呼び出される騒動まで起こしてしまった…


『心配するのは親の仕事。伴侶も、寵児の涙する姿に心配しておったが、致し方ないと言っておった』


「…まさか、レナ様…私の事をお話されたのですか…?」


『流石だと、笑っておったな』


「レナ様…酷いです…ですが、お話出来るくらいに回復されたのですね……フラン様と一緒に怪我をされたレイン様はいかがですか?」


『問題ない』


フラン様を庇って怪我をされたレイン様は、私と同じ17歳で、フラン様の侍従補佐をされる程に優秀なだけでなく、文官でありながら今回の遠征の為に剣の習得までされる程の努力家だと聞いた…背中の傷が剣を握るのに影響しなければいいのだけれど…


夢に見るフラン様も未だベッドの中で、毒の影響で殆ど眠っていらっしゃる。


「お2人の1日も早い回復をお祈りします。そして、フラン様に、私の元気な姿を夢に見て頂きたい…」


『扶翼しよう』


どうか、フラン様の見る夢の中の私が、その苦しみを少しでも柔らげられますように。
































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