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王国の彼是  作者: 紗華
110/197

108:怪我の具合 フラン&ウィル

「っ()()!殿下を発見しましたっ!レイン殿も一緒ですっ!」

「殿下!!()()!」

「レイン殿も一緒だっ!」

「殿下()()っ!こっちだっ!」


騎士達よ…他に言い方はないのか…発見、発見と反復され、まるで瘴気の発生源になった様な心持ちになる。


ナシェルも同じなのだろう…苦い顔を隠しもしない。


「殿下!!レイン殿っ!ご無事ですかっ!!」


「あ、ああ…何とかな…」

「殿下は肋と、足も毒にやられています!」

「?!レインッ!」


「殿下重傷っ!担架だ!!担架を持って来い!」

「殿下重傷!担架をっ」


「何?!殿下が()()?!息はっ?生きているのか?!」


「生きてるか!」

「殿下は?!生きてるかっ!!」


「生きていらっしゃいます!」

「生きておられるぞ!!」

「団長!生きておられますっ!!」


騎士の討伐や戦場に於いて、正確な情報を共有する為の反復確認は重要。

だからといって、斜面の上から見下ろされ、状況を確認する度に叫ばれ続けるのは居た堪れない。


いい加減にしてくれ…俺は珍獣か…?


「珍獣になった気分ですね…」

「奇遇だな、同じ事を俺も考えてたよ…っゔ…」


「?!殿下っ!担架を急いでっ!毒が回っているかもしれませんっ!!」


目が霞む、ナシェルの声が遠い…息も…苦しい…


ーーー


「蜂の毒か…ブーツの中に入りこんだんだろうな…で?肋骨は?」


「3本折れてるそうです。高熱は毒が原因だと…レインがある程度の毒を抜きましたが、まともな治療も無しに長時間置かれていたので、体内に回っているだろうと…」


「フランは毒にはある程度の耐性がある。幼い頃から訓練きたからな…そこまでの心配は不要だろ。で?レインは?」


「殿下を庇った際に、熊に引っ掻かれた裂傷です。着込みのおかげで浅いですが、傷の範囲が広く縫っています。こちらも長時間放置されていたので…傷が膿んで、発熱してます」


「2人が動ける様になるまでどの位だ?」

「熱が下がれば起き上がる事は可能です。ただ…」


「馬車の移動は身体に負担がかかるか…陛下に早馬を。王宮騎士団と魔術師団は、このまま予定通りに任務を遂行し帰還。俺達は残る。それでいいか?ラヴェル」


「問題ない、俺は森へ戻る。殿下とレイン殿を頼んだぞ、ジーク」

「ああ」


ーーー


「お目覚めですか、ナシェル殿、具合は?」

「ウィル……っ…大丈夫だ、問題ない……ゔっ…」

「とても大丈夫には見えませんけどね…」


背中に傷を負ったナシェル殿が、うつ伏せの状態でこちらに向けた顔は、熱で赤らみ息も荒い。背中に巻いてる包帯も血が滲んでいる。


「…フラン…は?」


「熱が下がりません。体内に残っている毒が、まだ抜けていない様です」


「王族は…体内に毒を取り込んで…訓練をしている…っとはいえ、魔物の毒だ…暫くはっ…熱も下がらないだろうな…」


「ええ、なので我々はアズールの滞在が延長になりました」


殿下とナシェル殿は、怪我の状態から馬車の移動は難しいというジーク副団長の判断で滞在が延びた。

王都に戻っても、執務に剣術大会も控えて忙しい日々が待っている。


お2人共、ここで少しでも休めるといいが…


「そうか………ウィル」

「何でしょう?」

「フランにバレた」

「………は?」


「俺も寝込んでしまってな…薬が切れて…色が…っ戻った…」


こいつは…何をしれっと…寝汚いナシェル殿は朝が弱い。なので、就寝前に薬飲んでいるのだが、昨夜は飲む間もなかったのだろう。


仕方がないとはいえ、影になって然程も経たないうちにバレただと?


「…殿下は…何と?」


「……生きててよかったと…共に背負うと…言って…っくれた」


殿下らしいな…空の墓に毎朝ダリアを手向け、一言二言声をかけられてから執務に向かわれる。

王妃陛下、王女殿下が墓参したのは一度きり…今も足を向けられず、オリアーナ妃殿下とオリヴィエ皇女の慰めで、悲しみを癒やす日々を送られている。


その姿を見るナシェル殿の苦しみは、いかほどだろうか…科せられた罰は余りにも大きく、いつか心が壊れてしまうのではと心配だったが、陛下と殿下が一緒ならば大丈夫だろう。


「そうですか…こちらも、少々厄介な事になりました」

「…何だ?」


「セイド公爵家のヨランダ嬢がユーリに…求婚を…」


「ヨランダ嬢…?エリックと婚約していただろう?」

「そのエリック殿が、元オット男爵令嬢と懇意になったそうです」


「…ミアと?ハハッ…逞しい女だ…っ痛っ……」

「…笑い事じゃありません」


「それにしても、ユーリとヨランダ嬢か…っ暑苦しいな…」


話す事が得意でない俺とは反対に、ユーリはよく喋る。

加えて物怖じしない、空気も読まない性格の為、残念な事に女性に悉く振られ、イアン団長の補佐に付く様になってからは、眼鏡などという小道具にまで頼っている。

知的に見せる為だと言っていたが、口を開かない事が一番効果的だと気付かないのか?


ヨランダ嬢も…夜会で見かけた姿は、典型的な貴族令嬢。

エレノア嬢と仲が良いのか悪いのか…よく話し、想像力逞しく、こちらも物怖じしない。


そんな2人が婚約、結婚となれば喧しい事この上ないが、ユーリがセイド公爵家に入ればローザの情報も入り易くなるのは確か。


「で?ユーリの反応は?」

「春が訪れたと浮かれているそうです」

「単純だな…」


ジーク副団長の拳骨から復活したカイン殿の話では、ユーリは二つ返事で受け入れたという。

剣の腕はいい、社交も問題ない、影の仕事も、イアン団長の補佐も真面目にこなしている。

身分に大きな違いがあるのは否めないが、次期公爵としてセイド領軍を纏めるのも、おそらく問題はないだろう。


両家の顔合わせで粗相のない様、ユーリを一から躾け直さなければならないが…


「ところで…俺の怪我は何と?後…どれくらいで動ける?」


「…オレンジ畑ですか?」

「俺の…計画案だからな…っ…」

「傷を縫ってますからね、暫くは無理です」


「嘘だろ?!…ぐっ…痛いっ…」


思わずといった様に起き上がったナシェル殿は、背中の痛みに呻き、枕に顔を伏せた。


ナシェル殿はアズールオレンジが大好物。

婚約者だったオレリア様から頂いたオレンジの花で作られた栞も大事に使い続けている程。

影になって殿下のそばに侍るに当たり、一番最初に手を付けた仕事が、アズール遠征にオレンジ畑の拡大と養蜂計画を捩じ込む事だった。


王族というしがらみから解かれたナシェル殿は、苦しみを抱えながらも、オレンジに関しては嬉々として動く。

王太子だった頃とは正反対の姿に戸惑ったが、本来の姿は普通の青年だった。


「ラヴェル騎士団長から、心配するなと伝言です」


「無念だが…同胞(ラヴェル)に…任せる…か……」


まるで遺言だな…苦しそうな寝息、額にかいた汗を拭うと眉間に皺を寄せて呻いた。

ナシェル殿はオレンジの心配をしているが、俺の目下の心配は…


「陛下に報告か…何と言われるか…」


怒るだろうか…いや、もしかしたら…こうなる事を望まれていたかもしれない。


















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