eternal story ~指パッチンで世界最強~
「俺は孤高、俺は選ばれしもの……」
これは若かりし頃の俺である。(約3日前)
あの頃の俺は自信に満ち溢れていた、何か力を持っているわけでもないのに……
人は笑った。自信だけを持っていた俺のことを。
勉強もできない、運動もできない、顔面もよくない。お前に何があるんだと。
そう言われる度に俺はこう言った。
残念だ、小市民は挑戦者を笑うとはこのこと。
10回言えば11回は袋叩きにされた。
1回はおまけボーナスらしい。ふざけやがって。
と、まあこんなしょっぱい人生を生きていた俺だが、ある出来事を境に人生は一変する。
「あなたは選ばれたのです」
何の脈絡もなく、女(超かわよ、清楚系)が俺にそう告げた。
始めは事態に追いつけず、え? え?と聞き返したが、懇切丁寧こんせつていねいに説明されたおかげでついに俺は理解した。
「お、俺が勇者」
「そうです、あなたはこの世界ーーマクシミリアの救世主になるのです。私達、神の能力を使って」
「そ、そうなんですか……」
あっけにとられた顔をする俺を見て、微笑ましそうに女は笑う。
ーーたわけ!! こんなの予習済みだ!!
俺がどれほどこの時を待ちわびたと思っている。
俺TUEEEE系のラノベを読み漁り、累計2000時間アニメで魔法を学んだ俺に死角はぬぁい!!
そう、ここで下手に出て機を待つのだ。圧倒的チートな能力が手に入るその時まで……
そして、俺は手に入れたのだ。最強の能力を。
「指パッチンで世界最強……」
女神から渡された手紙には粗削りな文字でそう書かれていた。職業『指師』とも書かれている。
「なめやがってええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あの女、俺のことをたばかったな!!
俺が、ヒョロガリびん底眼鏡だからとたかをくくったのだ!!
「こんなことで、何ができるんだっ!!」
叫びながら指パッチンした。
すると、雲が割れ巨大なモンスターが落ちて来た。
そして、霧散したのだ。
「は、はぁ?」
何が起こったのかわからないが、何かとても強そうなやつを倒したらしい。
結局、そこいらの空き地に居た俺は食料すら満足に見つけられず、異世界生活1日目を終えた。
翌日、へろへろになりながら近くの村に到着すると
「あなたが、救世主様ですね!!」
「ひょ?」
わらわらと村人たちが俺を囲み始めた。
涙ながらにお礼を言われあたふたしていると、先日消えた巨大生物について話をされた。
どうやらあれはこの世界マクシミリアに存在する伝説の魔物らしい。
なんのこっちゃ、って話だがどうやら俺はそいつを倒したらしい。
村の娘が指パッチンする俺と、消えゆく魔王を見たんだと。
瞬く間に、俺の存在は世界に認知され、俺はマクシミリアの英雄となった。
その後の俺は、とても忙しかった。
「ぎゃおおおおお」
「ふぅぅぅぅ、ハァァァァァァァァァァ!!!」
指パッチンに気合をつけ、
「|Կակղամորթ、Բայց、Տուրուրու《しじみがとぅるる》!!」
「おんぎゃあああああ!!」
よくわからない詠唱を加えることで、指パッチンに箔をつけた。
その結果、女にモテモテになりイケメンから嫉妬されるようになり、巨万の富を得た。
そうして、俺は……
「大丈夫だ、俺にまかせろ」
二十人もの愛人にウインクをし、敵を消し去った。
「きゃあああああああ!! キリトさまあああああああああ!!!!」
俺は、自他共に認める最強の英雄になった。
これが俺のサクセスストーリー。
これが俺の――
――世界征服だッ!!
「って感じなストーリーを考えたんだけど、どう?」
「考え直せ」
ーfinー