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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

猫と鯨(げい)と

作者: 花嗚 颺鸕

初めまして。小説を書きたくて、毎日向き合っています。拙い作品だとは思いますが、よろしくお願いします。


※アルファポリスにても掲載中

「なんでこんなところで寝てるのさ」

僕ははぁとため息をつきながら猫に尋ねた。僕の部屋にはアイドルのポスターもなければ、漫画もない。殺風景の部屋だった。唯一あるとしたら風景写真くらいだった。僕はまだ若くて、みんながぼくをどう見ているのかすごく気になるし、僕自身なんかより周りと同じように勉強して自分をカッコよく見てくれることを妄想する年頃だ。

猫はぐっと伸びっをしながらこちらに目を向けた。めが吸い込まれてしまうような翡翠と菫色のオッドアイだった。一瞬、空気のすっと静まったように感じた。「なんだ、乳臭いガキは」僕は少し膨れて「ああ、わかってるよ。そういう存在な人間であることは」すると猫は僕のテーブルの上に乗った。できれば汚いお尻はおいてほしくないが……大丈夫、除菌シートは買い貯めしてある。ああ、大丈夫。あのさ、うちのお母さんは起こると般若みたいな顔して怒るから家では飼えないんだ。だから僕の部屋にどう入ったか知らないけど、入ってきたルートで外に帰ってほしいんだ。人と話すときは、低い姿勢で話した方がいい。僕はぐっと堪え待つ。すると猫はこう言った。「君がどれほど自分のことを可愛がっているかは知っている。だから僕がいるんだ。」少し、いやだいぶ意味不明な返答が帰ってきた。僕は動揺を隠しながら聞いた。なぜ?猫は僕をガン見しながら「きみに人助けをする経験をあげようと思うのだ。近々鯨がやってくる。空飛ぶ鯨で普通の人には見えない。なんたって神様の使いだからな」と鼻息荒く説明する猫をまじまじと眺めた。それをなんでぼくにいうのさ?僕は意味が分からなかった。なぜ猫が話すのか、なぜ猫は僕の部屋にいるのか、なぜ僕のテキストを前足で踏んでいるのか、僕はわからなかった。猫は気にせず続ける。「その鯨たちはすこーし方向音痴なんだ。でも神様の使いだから迷子になっちゃ管理職の人が被害を受けるのさ。分かるだろ、誰かの責任にされる気持ちは」そう言いながら、おもむろに座った僕と目線の合うところで止まり、ノートのど真ん中にどっこいしょと座った。僕は思わず目を見開く。猫は構わず話を続ける「君には鯨たちが迷わないように僕を背負って欲しい。誘導は私がするから君は言われたように歩いてくれればいい」僕はなんでそんなことをしなきゃいけないんだとため息をついた。すると猫はほくそ笑んだように「いいことをしてあげよう、求めることはなんだね」猫はまじまじと見つめてくる。ないよと僕は短く答えた。あるわけない。欲しいものも希望も。するとねこはじゃあ、こうしよう。君の欲しいものを気づかせてあげる。これでどう?こんな小説みたいな状況だというのに僕が考えていたことはただ一つ。今すぐにでもノートから猫が下りてほしい。よし、分かったわかった。手伝えばいいんだろ。とりあえず、そこから降りてくれる?人とうまくやっていくには歩み寄りが大切大切。僕は絶望感によって意識が飛びそうな自分を諭す。猫はだいきらいだ!!!!


次の日の朝、ふわっふわな毛並み猫は気持ちよさそうに僕の脚の間で寝ていた。そこでは優雅な時の流れを感じそうになる雰囲気だ。冗談じゃない。僕の股の間で寝ないでもらいたい。人権侵害だ。僕が起き上がったためか猫の耳がぴくっと動いた。おい起きろよ。本当に今日なのか?猫は大あくびをしあがら「あたりめーよ」と答えた。僕はこの猫の飼い主に遭遇したら、真っ先にマナー本をお渡ししたい。実際は走って逃げるだろうけれど。確か、巣鴨駅から目黒あたりが迷いやすいから案内したいんだったよな?そうそう猫はぺろぺろと体をなめながら答えた。

そして地獄の時間が開始した。巣鴨駅の上空に大きな鯨が一体飛んでいた。周りのひとには見えていないらしい。みんな素通りだ。まず広げた扇子を両手に持った猫を肩車し、走り始めた。猫を肩車して歩いている人を見たことがあるだろうか。いやないだろう。僕もこんなことになるとは思わなかった。猫は扇子を大きく振っている。僕は言われた通り巣鴨駅から池袋駅まで淡々と歩く。何も考えないようにしなければ。今にも顔から火が噴きそうだ。泣きっ面に蜂とはこういうことだ。目の前に同級生の中西君がいるではないか。僕は条件反射で逃げようとした瞬間、お、高橋じゃんという声が聞こえた。僕は歩きを速めながら、少しペコリとして逃げようとした。しかし相手は、なんで猫担いでんの?てかなんで猫踊ってんの。とかいって一緒に歩き始めた。これには深い事情があるとしか言えない。ま、まあねと僕は答えた。相手は構わず、高橋こんなことするイメージなかったな。どこまでいくの?池袋までだよ。でもくねくね歩いてるから2時間はかかるかも。中西は目を見開いて、なんで猫担いで2時間も歩く修行してるのかわからないけど、めっちゃ面白いな!俺も一緒に行くぜ!僕は心の底からこいつが馬鹿助かったと思った。そこから僕たちは注目を浴びながら歩き続けた。初めはめちゃくちゃ嫌だったけど、なんだか僕たち

すごい人間なんだと思い始めた。僕はいま凄いことをしているんだ。神様の使いを案内しているんだ。猫に右へ左へと言われた通り歩きづける。どうやら中西にはただニャーにゃーと言っているよう聞こえるらしい。

しばらく黙っていたが突然、中西が話し始めた。お前のことさ、良くわからん奴と思ってたんだよ。だけどさ、今日のお前見たらなんだか楽しくなって。なんていうんだろう、今まで何かに縛られていたんだけど、お前を見た瞬間自由になったがしたんだ。君は両手に扇子をった猫を肩車しているんだから。なんだか妙な奴で、学校だったら絶対に近づかないのに、なんだかそういったしがらみがどうでもよくなったんだ。なんでか分からないけれど。そんな話をしている間、肩の上の猫は右へ左へと動かしながら空を見上げている。

思ったより、人にどう思われてもいいのかもしれない。人には見えない僕の意志が

心のなかでほとんど占めているから。他人を気にするスキマなんてなかった。

鯨はその目印を楽しそうに追いかけている。そんなこんなのうちに池袋についた。すると鯨は太陽に吸い込まれるように上へと上がっていった。僕と猫はバイバイと手を振った。一息ついてから猫はおろして給うと声を掛けてきた。猫はジト目僕と高橋を眺めた。そしてわれは帰る踵を返して歩き始めた。そのとき、ふと振り返って猫はいった。私の副業はキューピットにゃ。とありえないほど不細工なウインクを一瞬向けて去っていった。なんだか下痢が収まってホット一息ついたような開放感が漂った。

それから夏は過ぎ、冬が過ぎた。僕は微笑を浮かべながら思う。あの猫は貧乏神だったんじゃないかと。だって恋人といっぱい絶景ポット行ってお金を使ってしまうから。


Fin.



お読みいただきありがとうございました。今後もよろしくお願いします。

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