役員会議
中西港運 役員会議室
4人が席についている中で、壮年の男が声を上げた。
「初めまして、私は専務の西本勇作と申します。」
「はじめまして、私は常務を仰せつかった岡崎健介と申します。今後ともよろしくお願い申し上げます。」
お互いの挨拶が終わり握手を交わすが、会長や社長は言葉を発さず、二人のやり取りを見ていた。
「大岩組のコンプライアンス室のご出身とのことですが?」
西本は軽く質問を投げかけた。
「はい、コンプライアンス室の室長を務めさせていただいておりました・・・。」
「その後年齢でですか・・・。非常に優秀なのでしょうね?」
西本は柔和な表情を崩さずに続ける。
「いやいや、そんなことはございません。」
「ご謙遜を。ただ、大岩組の幹部で私が知らない方がいらっしゃるというのは驚きです。」
そういうと西本の眼光が鋭くなったように感じた。
「西本専務は、非常に信頼でき大岩組の内部とも親交が深く頼りになると大岩会長からお聞きしていたのですが、まさしくその通りのですね。
私は、アメリカのサンフランシスコにある北米支社で採用されて、ずっとそちらにいましたので、お会いしたことがなかったのだと思います。本当でしたらもっと早く西本専務にはお会いしたかったです。」
「そうですか・・・。国籍は米国籍?」
「いえ、日本国籍です。淡路島で生まれて父の仕事の都合でカリフォルニアで育ちました。」
そんなやり取りを見ていた社長が
「これほど優秀な人に来ていただけたのは非常にありがたいです。
その経験を活かして当社でもコンプライアンス部門の責任者になっていただきませんか?」
その言葉に会長が呆れたような表情をしたが、専務の西本が視線で制し口を開いた。
「岡崎常務は来られてすぐですから、半年ぐらいは当社に慣れていただくということで、私と一緒に会社回りや現場のパトロールをしていただきましょう。」
そういうと、私の方を見た。
「分かりました。何分勝手がわからないので西本専務のご提案に従いましょう。」
(つまり監視ってことか・・・。)
これで役員会議は終わり、退室することになった。