3-18ジョナサン・スカーレット・アズメラの憂鬱
ジョナサンside
驚いた。あんな裏設定あったなんて知らんかった!これはいよいよ先がわからなくなってきた。
ジジイとサンタンドレの皇女が婚約してたのは知ってた。普通に歴史の勉強で習ったし。サンタンドレは祭の国と言うだけあり、国民性は陽気で楽天的。お祭り騒ぎが大好きで、どんな些細な出来事も盛大に祝う。仕事ほっぽって毎日のように騒ぎに参加するから、貧乏な奴が多かったらしい。アホなの?
だからニキータ公女がドルストフに狙われてるとなった時、先んじてこの国は援軍を送った。それを見てパリピなサンタンドレ国民はお祭り騒ぎで大歓迎。
その後ドルストフが攻めてきた時も、平民は旗や紋章なんてわからんので、ウチの騎士と勘違いして大歓迎。アホなの?
それで難なく入国を許してしまい、気付いた時はもう首都と目と鼻の先の砦まで来ていた。アホなの?
援軍を送っていたおかげで、どうにか大半の貴族と首都住民を逃がすことは出来たが、大軍の前に肝心の王城は落とされ王族はほぼ全員処刑。公爵家なんかも殺された。
肝心のニキータ公女は、標的だから先に逃がされていたようだが、生死不明てことだった。そんで逃げた先で男と結婚して子どもを産み、ヒロインも生まれたと。
でも、ゲームでそんな設定見た覚えがないんだよな。一応ゲームでもサンタンドレ王国が出てくる場面はあるけど、過去に恩があるからドルストフとの大戦に助太刀してくれるって程度だった。
ゲームでもサンタンドレ王国の血筋てんなら、それこそ女王になって逆ハーとか有り得そうなもんだけど、そんなんなかったはず。
おかしいことは他にもある。ゲームではヒロインの母親は死別してたが、現実には生きてる。それにやっぱりゲームと現実のヒロインは、見た目の印象が違う気がする。
本来ヒロインはサンタンドレ王国の血筋なんかではない。母親は間違いなく平民だ。
一体いつから歴史が変わった?ニキータ公女が逃れたことが、間違いなく分岐点。
まさかとは思うが、ニキータ公女も転生者だった?
まさかとは思うが、でも有り得る。当時ニキータ公女は、この大陸では超がつく有名人だった。何故かと言うと彼女は当時大スターだったからだ。恐らくジジイ世代の中央貴族は知ってる。
サンタンドレ王国王立劇団の女優筆頭、それがニキータ公女。魔法を使った派手な演出、大人数で踊り、音楽と声楽のミュージカルは、当時先進的で大流行したらしい。
その劇団を発足、牽引していたのがニキータ公女だ。劇団は各国でツアー公演を行い、外交しパトロンをつけて貧乏な祖国に金を落としていた。
絶対そうだ、絶対転生者だ。菫の園とか有名劇団の真似をしたんだ。
ゲームでもサンタンドレ王国は滅亡してた。理由は現実とは違うかもしれんが、遅かれ早かれあの国は滅びてた。
多分本来の歴史ならニキータ公女も死んでいた。でも、彼女は生き延びた。そこからヒロインに変化が生じた。なんてこったい。
ヒロインの出自はなるだけ秘密との事だが、ニコールと皇城に来た時に、ジジイ世代の大臣とかに会ったら普通にバレそうだよな。
うわぁ、ヒロインこれから大変だぞ。あの大スターの孫を是非嫁に!って、求婚が殺到しそう。
まぁ、イザイアと別れたみたいだし、丁度いいかもしれん。前の恋を忘れるには次の恋と言うし。
それにしてもイザイアとヒロインが別れるとは。しかもニコールの護衛て事になったから、嫌でも俺に会うことになる。強制力を感じて仕方がない。まじ怖い。
俺のニコールへの愛は揺るがないと俺は自信を持って言えるが、それ以外を引っ掻き回されても困るし、元彼イザイアとの今後の関係も問題になる。
あー、ホント頭痛い。クソジジイ、余計な事しやがって。
と、ウダウダ考えながらも、仕事を処理していく。成人してから仕事も増えたので、俺割と手一杯なんだよ。勘弁してよ。
溜息をつきながら、俺はそばにいたバーソロミューにボヤいた。
「なぁ、いっその事お前がシヴィル嬢を娶らないか?」
「は?」
「そうしてくれたら私も安心なのだが……」
「シヴィル嬢の何が不安なのかはわかりかねますが、検討します」
「頼む」
悪くないと思うのよ、バーソロミュー。伯爵家の次男だけど、代々皇族に仕えてる家系だし。ゲームでは攻略対象じゃないし。バーソロミューもイケメンだし。今の所お互い全く興味なさそうだけど。
でも前回の失敗から反省して、変に煽ったり噂流したりはしない。
俺はやっぱり仕事に集中出来なくて、ペンを放り投げ、椅子にぐったりもたれかかった。
「あー、来年度からの学園超ダリー」
「殿下、素が出ていますよ」
「今くらいいーじゃねーかよ。あー、マジめんどくせー。どーせ俺とニコールが、イザイアとシヴィル嬢に振り回されるの、目に見えてんじゃん」
「……ついでに言えば、皇帝陛下も絡んでくるでしょうね」
「うわぁぁぁ!なにそのカオス!もうやだ……」
「茶を淹れましょう。殿下のお好きなローギョク茶が入りましたので」
「頼む……」
想像だけでめんどくさいのに、現実ではどれ程面倒な事になるのか。そう考えたら今から鬱だ。
彼はジョナサン・スカーレット・アズメラ第2皇子。前世からずっと気苦労の絶えない少年である。




