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その聖女、ゴリラにつき  作者: 時任雪緒
第1章 幸福な子ども時代
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1-3 1歳



 今日も母は桶いっぱいに水を汲むと、顔色一つ変えずに肩に担いで、「じゃぁお先です」とにこやかに井戸から帰る。


 言葉がある程度理解できるようになった。

 もう春だ。生後1年。


 勿論、私が喋れる言葉も格段に増えた。とはいえ、水をみじゅと言ったり、かなり舌足らずだ。

 なので、舌をレロレロ動かして訓練しまくった。お陰でかなり発語が鍛えられた。早く喋りたくて頑張ったのだ。


 1歳の割に結構しっかり話せるので、他のおばちゃん達は驚いていた。私もおばちゃん達に「ばいばい」と言って手を振る。

 やはりコミュニケーションが取れるというのはいい。お陰でこの村のことなど、いろいろなことを知る事が出来る。



 私の成長が早いことには、母も驚いたようだ。祖父にしきりに私の成長を報告している。


「お父さん、シヴィルったらもう会話ができるのよ」

「ははっ。うちの家系は、皆成長が早いぞ。お前もそうだったぜ」

「えぇ? そうなの?」

「あぁ。多分第1スキルの影響だな」

「なるほどねぇ」


 母は納得しているが、私は初耳の単語が気になり、よちよちと這っていく。


「おじいちゃん、第1しゅきるってなに?」


 くっ、噛んだ。

 密かに悔しがる私を尻目に、祖父は私を抱き上げて、向かい合うように膝に乗せた。祖父は、燃えるような赤毛に紫の瞳をしている。母の髪色は祖母譲りのようだ。


「第1スキルっつーのはな、生まれつき持ってる才能とか、特性……意味わかるか?」

「わかる! ジスさん(狐の獣人さんだ)は、生まれちゅき、耳がいいって言ってた!」

「そうそう、そういうことだよ。でな、第1スキルは誰もが持ってるものじゃねぇんだけど、うちの家系は「改造」ってスキルでな」


 祖父によるとこうだ。


 第1スキルは先天性のスキル。種族特性などに代表される、遺伝性のスキル。例えば獣人族の犬系なら超嗅覚、エルフなら精霊親和など。

 人間は第1スキルを持っていないことも多いが、持っていることもある。第1スキル保持者は王侯貴族であることが多く、第1スキルが市井から出ると、庶子だと思われることがある。突然変異で生えてくることはないそうだ。

 変身、魔眼、嗅覚、聴覚、金剛、夜目、縮地など、肉体に変化をもたらすスキルが多い。


 うちの家、ゴリンデル家系が保持する第1スキルは「改造」。

 自己の肉体を改造できる。初期レベルでは自己のみで、それでガンガン強化することができるそうだ。

 中期から他者にも影響を与えることが可能になり、その延長で治癒させることもできる。

 はっきり言って滅茶苦茶なスキルなので、このことはあんまり公にしてはいけないのだそうだ。


 このスキルの話を聞いて、母もそうだが祖父も、尋常じゃない力持ちな理由が判明した。

 私にもこのスキルが遺伝しているなら、成長が早いのは当たり前だそうだ。なるほど。



 ちなみに、第1スキル保持者が王侯貴族ばかりなのは、過去の権力者たちが、有用な第1スキル保持者を集めて地位を与え、それが習慣化し、やがて定着した結果のようだ。

 とはいえ、人間と違って獣人族やエルフなんかは、第1スキル保持者であることが普通だそうで、こちらは市井にも貴族もいる。


 王侯貴族しか持っていない第1スキルを、なぜゴリンデル家系が保持しているのかというと、遠い遠い、それこそ500年以上前の先祖が、亡国の貴族だったらしい。

 その国は既になくなっていて、ゴリンデル家も貴族ではないが、その血とスキルは脈々と受け継がれてきたらしい。


「じゃぁ、わたしも頑張れば、はやく、もっといろんなことができる?」

「おう。ぶっちぎりでイカレたスキルだからな。やろうと思えば何でもできるようになるぜ。お陰で俺もガキの頃から戦闘職だったけどよ、騎士団でもべらぼうに強かったからな」


 ぶっきらぼうだが、愉快そうに祖父は言う。

 ぶっちぎりでイカレているのか……。確かにそうですね。


 しかし、公にするなと言った割に、騎士団に所属していたとは、これいかに。

 べらぼうに強いなら、既にバレているのではなかろうか。

 疑問には思ったが、この辺境の村で呑気に狩りに勤しめているようなので、問題はないとみていいか? まぁいい、そう思っておこう。



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