表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その聖女、ゴリラにつき  作者: 時任雪緒
第4章 学園生時代
129/138

4-44 最後のお茶会

(だってアンタはヒロインなんだから、仕方がないのよ。ヒロインは脳みそお花畑って、相場が決まってんだから)


お花畑。樹里が身も蓋もない事を言って追い討ちをかける。


(つっても、アタシの倫理観でもアンタ寄りだけどね。でも、そのせいでゴリ子が死ぬのは絶対に嫌。だから、打てるだけ手を打っておいて)


樹里のアドバイスを受けて、家族にもサポートして貰って、その内にバカンスシーズンは終わり、学園の後期が始まった。


クインシー殿下の輿入れは知らされていたようで、学園は奇妙な雰囲気だ。シルケ殿下はいない。あれから城の自室に篭ってしまったそうだ。

というか私達も準備でバタバタしてて、学園には始業式以降出席してない。いよいよとなり、ニコール様護衛の任も解かれた。


この間に、アズメラ帝国から花の国へも使者が送られた。花の国からの返答は、残念だけど仕方がないって感じの内容だったらしい。

でも、元宗主国に強く言えないだけで、内心腸が煮えくり返る思いなのではと思う。

シルケ殿下も時々手紙を書いてたはずだし、シルケ殿下の思いを知ってるなら、悔しい思いをしたはずだ。


それもあって、花の国からの関税は、向こう5年間無税とされ、花の国と国境を接するホワイト辺境伯領には、帝国から補償することになっている。


これで花の国との関係性は、表面上落ち着いたけど、シルケ殿下のお気持ちが晴れる事はないだろう。


それに時期を同じくして、北部貴族のキンバリー様とディラン様が休みなのも気になる。

北部貴族は開戦派だ。その北部貴族の2大貴族の子女が、揃って休んでいる。

きな臭いよぉ……。


「僕なら、輿入れの身柄交換のタイミングで襲撃して、戦争を起こす口実を作るかな。僕が死んでも、あっちの皇子が死んでも、仮にどっちも生き残っても、火種は生まれるね。僕には君がいるけど、もしかしたら、あっちにこちらの間者がいて、あっちが殺されてアズメラ帝国の襲撃って事になるかな?その線もあるね」


と、クインシー殿下は呑気に言ってるけど、貴方当事者ですよ。なんで笑ってんの……。


とはいえ、ドルストフ帝国も皇子の警護は手厚くするはずで、この位のことは読めてるはずだ。

下手に人員を増やして間者の付け入る隙を作るよりは、少数精鋭プラス徴兵の方が良い。

おそらくドルストフ帝国にも開戦派はいるし、何か仕掛けて来ると思う。

私はクインシー殿下やパーシバル、騎士団の団長達や皇帝陛下達とも散々に話し合った。


内心ではそちらの対応に気が気ではなかったけど、この国にいられるのは残り2週間だった。

だから、くっそ忙しかったけど、最後の英雄達の茶会を開いた。強行したので1週間で開いてやったよ。



実は英雄達の茶会、ものすごく評判が良かったのだ。

前回のお茶会の後、お礼状が沢山届いた。大体が楽しかったと言う内容で、概ね好評だったみたい。いくつかアドバイス的なものもあったから、これは参考に取っておく。

本当にこの茶会自体の評価は良くて、また来たいと言う言葉が多かった。これは多分、私のおもてなしと言うよりも、参加者の面子が良かったのだと思う。

スタンピードと言う一大事に、率先して動けるほどに意識が高い人の集まりなのだから、同じレベルで国を思ってる人達にとっては、有意義な茶会だったらしい。


通常、高位貴族と低位貴族が茶会なんかしない。夜会でも大規模なものでないと中々交流しないし、同じ場所にいても低位貴族と高位貴族が話すのは、縁故がないと無理だ。特に地方領主には縁遠いこと。

その慣例が英雄の茶会では覆されて、様々な意見交換が出来た。


こんなに喜んでもらえたのなら、今後も定期的に英雄の茶会は開いた方がいいだろう。この茶会を通して、発展の足がかりになるなら私も嬉しいしね。と、思っていたのに、これが最後になる。


「皆様、本日もお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。お聞き及びの通り、クインシー殿下と、私とパーシバル・ビリジア侯爵令息は、ドルストフ帝国へ参ります。今後、英雄達の茶会は、私の母ステラが、主導させていただきます」


母が、ちょっと強ばった顔で頭を下げた。母は社交を頑張っていたので、既に剣鬼の娘と言うのは知られている。主催としてはうってつけだし、家の為にもなる。


「私はこの茶会が、アズメラ帝国の大いなる利になると考えております。身分に拘らず活発に意見交換出来る、皆様の有り様は、間違いなくこの国の支えとなるでしょう。私はこの国を離れますが、母も、志を同じくしております。私の最高の理解者である母が、きっと皆様を盛り立てて下さいます」


若い貴族をきっかけにして、わあっと拍手と歓声が漏れて、大きな拍手になった。

母には、私ほどの武名もないけど、母は、きっとカリスマを発揮してくれる。

母は剣鬼と大女優の娘なんだから、度胸ならワールドクラスよ。

母は父の妻になったのだから、この位出来なければいけないと、大奥様から言われたのもあるけどさ。

最後に美容整形に宣伝をして、最後のお茶会も、大好評の内に終えたのだった。



が、その数日後。

パーシバルの元実家であるアーモンド伯爵家が、違法奴隷売買の容疑で、一家全員が処刑された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ