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その聖女、ゴリラにつき  作者: 時任雪緒
第4章 学園生時代
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4-38 相談会

次の日もお茶会に呼んでもらった。戦争回避の対策を色々相談していると、樹里が言った。


「あの、樹里がドルストフ帝国と軍事演習出来ないかと言うのですが」

「軍事演習?」

「はい。戦争を想定して行ってはどうかと。実際に戦争が起きなくても、戦争に近い状況を作り出すことで、回避できないかって」

「なるほど……」


戦争に近い状況を引き起こして、シナリオに錯覚させる事が出来ないかと、樹里が言った。


「ドルストフにも思うところはあろうし、北部貴族の鬱憤晴らしにも良いかもしれない。しかし、他国との演習など、前例がない」

「日本では普通だったようなのですが」

「それはあの時代の日本だからだ。ましてやドルストフは敵国。こちらが模擬剣を持っていても、ドルストフがそうとは」

「……そうですよね……」


ルールを守ってくれるかは分からない。上が納得しても、下が納得しないで真剣を使う可能性はあるんだ。それはこちらも同じ。

日本が上手くいってたのは、あの時代だったからだ。きっと100年も前なら、そんな事は出来なかった。この世界も、まだそこまで来ていない。


「しかし、一考の余地はある。戻ったら奏上しよう」

「お願いします!」


それからもしばらく会議したけど、中々良い案が出てこなくて疲れた頃に、「そういえば」とジョナサン殿下が言った。


「シヴィル嬢は、何か事業を興さないのか?」

「実はパーシバルにも言われて、考えているのですが……」


私は名誉貴族の一代男爵ではなく永代貴族だ。多分、私の強さが後世にも残ると、皇帝陛下は考えたんだろう。

今は貴族年金と、騎士と聖女の給料で、それなりの収入はある。むしろ現時点では貯金が増えるばかり。

でも、先の事を考えたら、何か事業をした方が良いと、パーシバルにも言われたのだ。だって普通貴族は税収があって、最低でも年商2億。私だけなら普通に暮らせる収入でも、貴族の中では底辺なのだ。


「前世の知識で医療チートなど出来ないか?」

「地元では外科手術も異端扱いで、皇都では点滴すらないのです。地元の鍛冶師なら針も作れたのですが、皇都ではそんな鍛冶師もおらず。調剤に関しても、詳しい成分や合成はわからないので」

「ペニシリンは?」

「地元では作れました。師匠と、師匠の師匠が開発しています。ただ、地元と皇都では僅かに気候が違うのか、中々……」

「地元で生産して、国内に流通させることは可能か?」

「保存の問題はありますが、流通路があれば」

「レイアース商会で流通しても良いが、薬師協会と揉めそうだな……」

「えぇ……」


薬の流通は、基本薬師協会が取り仕切っている。薬師協会を差し置いて、レイアース商会が横入りするのはいけない。こーゆーしがらみめんどくさいよね。

師匠はそういうのを嫌ってるので、作った薬も技術も、ユオヅ村以外には流通させてなかったのだ。資金出すから協力してって言っても、嫌がる顔が目に浮かぶ。

でも、私がズルして作ってたポーションなら、教会で手に入るけどね。


うーんと頭を悩ませていると、ニコール様がパチンと扇を閉じた。


「シヴィルの力は、美容には活かせないかしら?」

「美容ですか?」


その瞬間、樹里が叫んだ。


(その手があったか!イける!荒稼ぎできるわよ!)


え?と思った途端、樹里から情報が流れ込んだ。それを見て、私もイけると確信した。だって私のスキルは改造だから!


「ふっふっふ、なるほど」

「あの、シヴィル?」

「あぁ、申し訳ございません。もちろん可能ですわ」


私がニヤニヤするのでニコール様が引いている。引かないで。


「その、美容なら需要はあると思うわ」

「ええ、仰る通りですわ。何故今まで思いつかなかったのか……。時にニコール様、実験台をご用意願えますか?」

「じ、実験台?」

「いきなり貴族に施術する訳にも参りませんので。もちろん無理でしたら、実家に声をかけますわ」

「ええっと、そうね。一応声をかけるわね?」

「ありがとうございます」


ニコール様はまだ引いているが、私は事業計画を立て始めていた。

商売相手は貴族や金持ちの商会にしましょう。もちろん紹介制予約制。

施術は祖父と母にも手伝って貰えるかな?母はともかく祖父は暇してるから手伝ってもらお。

まずは英雄達の茶会メンバーが良い。信用出来るからね。

そこで上手く行けば勝手に広まるわ。これはパーシバルにもまた手紙を書かなくては。


鼻息荒くムフフと笑う私に、ニコール様とジョナサン殿下は、ずっと引いていた。



その日の夜には実験台の下女がやって来た。私の部屋にその下女を招く。洗濯場で働く自由市民だそうだ。下女をベッドに寝かせる。

ニコール様とジョナサン殿下も見守っている。


「希望はある?」

「もっと目が大きくなりたいです」

「わかったわ。痛むかもしれないけれど、我慢してちょうだい」

「は、はい」


下女はギュッと目をつぶったけど、大して痛まなかったのか、悲鳴の一つも上げなかった。施術はものの数秒。


「終わったわよ。目を開けて、鏡を見て」

「はい。えっ!ウソ……!」


下女はまじまじと鏡に見入っている。小粒の腫れぼったい一重瞼の小さな目が、パッチリ二重の大きな目になっていた。下女は、呆然と鏡に見入っている。


「うそ、これが、あたし?」

「成功ね。仕上がりはどう?」

「信じられない!最高です!」


ご満足頂けて何よりね。今回はプチ整形で済んだし、テスターだからお金は取らないけど、やるなら稼ぐわよ!


「美容整形か」

「凄いわ!」


ジョナサン殿下とニコール様も驚いている。これは金になるわね。ちなみに樹里から男性バージョンも情報を送られた。これは左団扇確定ね。


「ニコール様の助言のお陰で、一山築けそうですわ。御礼申し上げます。ニコール様とジョナサン殿下も希望がありましたら、お二人には特別価格で施術致しますわ」

「ありがとう。でも、こんな事が出来るのは、シヴィル位ではないかしら?」

「祖父も母も出来ますので、私の子も出来ますでしょう」

「……なんだかもう怖いわ」

「うーん、ヒロインチートなのか?」


やっぱり2人はドン引きしてたけど、そこはスルーした。

余談だけど、下女はその後モテモテになって、結婚が決まったらしい。おめでとう。

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