4-19 英雄達の茶会2
そしてお茶会当日、学園が休みの日の15時。我家に続々と貴族が集まって来た。
私はホールの入り口で招待客に挨拶してお出迎えする。緊張する!
そして、スタンピードで共闘してくれたお礼をスピーチして、お茶会が始まった。
招待客が多いので、今日はビュッフェ形式にした。歩き回って色んな人と交流出来るというメリットもある。
私はホストなので、順番にテーブルを回って挨拶をした。
男性だらけのテーブルにやってきた所で、お皿にサンドイッチを載せたゴールディ公爵と再会した。
「本日はお招き頂き、礼を言う」
「こちらこそ。ようこそおいでくださいました」
「この茶会は良い茶会だね。普段話せない方とも話せる上に、意識の高い貴族ばかりだ」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」
褒められた!ゴールディ公爵に褒められた!これは合格貰った!
ニマニマしそうになるのを堪えてニコニコしていると、ゴールディ公爵は、なんだか悪戯っぽい微笑を浮かべた。
「ところで、私との婚約は、検討してもらえたかな?」
その言葉に、会場は一瞬静まり返り、一斉に視線が向くのがわかった。
待って、待って!なんで今それ言うの!初心者に意地悪しないで!
内心冷や汗ダラダラだ。
「えっと、そう……」
「はいはーい!俺も婚約申し込んだー!」
ミカエル様ー!?やめてー!
「実はウチもでしてな」
「おや。実は私の倅も……」
「実はウチも。いやはや、剣聖殿はモテますなぁ」
「これほど美しいご令嬢ならば、争奪戦にもなりましょうぞ」
「賭けますかな?」
「良いですな」
「「「アッハッハッハッハ」」」
他の貴族も混ざり始めた。あっはっはって笑ってるけど、私はそれどころではない。カオス!あと賭けないで。
なんか一緒になって笑ってるけど、ゴールディ公爵、あなたのせいじゃないのー!
「困らせたかな?」
「……大丈夫ですわ」
「そう。それは良かった。では、私は私に1万」
「では私はスカーレット侯爵令息に1万!」
賭けるな!いや、もういいや。好きにしてくれ。
ゲッソリした気持ちになった時、私の地獄耳が、騒がしい声を拾った。
「どうして招待状があるのに入れないのよ!」
「こちらの招待状は無効でございます」
「そんなのおかしいでしょ!」
「また、茶会は既に始まっております」
「なんですってー!」
「どうぞお引取りを」
やっぱり来たわね。ちょっと顔を見に行ってやろうかしらね。
私は席を外すと挨拶してからホールを出て、玄関に向かった。
そこにはキャンキャン喚く令嬢が2人。名前も顔も把握しているけど招待客ではない。
「なんの騒ぎかしら」
声を掛けると、対応していた侍従が頭を下げて、状況を説明する。まぁ聞こえていた通りだ。
そこに令嬢2人が割り込んできた。
「こんなの、何かの間違いですわ!」
「招待状はここにありますわ!」
確かに私が最初に送った招待状だ。
「間違いなく、私が送った招待状ね」
ぱあっと2人の表情が明るくなるけれど、私は腕組みして見下ろした。私は165センチと割と背が高い上に、今はハイヒールも履いているので、ガッツリ見下ろす。
「けれど、これは無効にしたのよ。どこかの躾のなっていないネズミが、卑しくも潜り込もうとしたらしいじゃない。だから無効にして、新しく別の招待状を送ったのよ。時間も1時間早めてね」
「うそ……」
「ホストの私が、嘘を言う必要が?」
「でも……」
「所で、招待状を奪った方がいると噂で聞いたのよね。あなた方、ご存知?私、その方にとても腹を立てているのよ。知っていたら、教えてくれるかしら。私の剣の錆にしてやらないと」
「ひっ!」
「し、知りませんわ!」
「そう。それならいいけれど。あら、そういえばあなた方、なんの用件でご訪問頂いたのかしら?」
「いえ、か、帰ります!」
「そう。せいぜい気をつけて帰る事ね」
「ひっ」
「ひゃぁぁぁ!」
2人は蒼白になって、大慌てで逃げ出した。それを見送ると、ドアを閉めた侍従が苦笑いしていた。
「お嬢様、脅しすぎでございます」
「そうね。やりすぎたわ」
ちょっと可哀想だったかな。剣の錆は言いすぎた。