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10‐7 お主に、死の救済を……

 デリンにハイハイで近寄り、最後に頭を土につけるオーレン。望んでいなかった選択に、俺は強く歯を食いしばって顔を前からそらした。


「よかろう。我、デリンの名のもとに、そなたに死を与えん」


 ミリエルが両手で自分の顔を覆う。ヒックヒックという鼻息と、不規則に揺れ上がる肩。急いでセレナが歩み寄り、彼女の頭を自分の胸に包んだ。優しくその背中をさすってあげ、赤子を慰める母親のように彼女の涙を胸に受け止めていく。ミリエルは声を押し殺すように泣き続け、セレナの服を強く握った。殺し切れなかった嗚咽が聞こえてくるが、オーレンは一瞬だけ顔を向けては、すぐに忘れようと首を振ってデリンに向き直った。


「た、頼みます! 死神様! 僕を、エールの元に!」


 土下座をするように、額を頭にこすりつけて懇願するオーレン。デリンは木杖を握る腕を振って、丸まった彼を囲うように、黒い魔法陣を地面に浮かべた。


「……死を与える前に、お主の勘違いを一つ、訂正しておこう」


 ハッとオーレンが頭を上げる。俺もつい気になって目をむけると、デリンはこの場の全員に聞こえるように、はっきりとこう言った。


「お主は、死後の世界に美徳を感じておるようじゃが、それは都合のいい考えにすぎん」


「……へ? そ、それは、ど、どどどどういう意味ですか、死神様?」


「死後の世界がどんなものか。そこは、この世のすべてのしがらみが消えた世界。混沌とも呼べる、幽霊どもの社会じゃ。お主たちの言う楽園、いわゆる、雲の上のあの世なぞ存在しない」


「そ、そんな! 死神様は、そ、それを見たと!? た、ただの虚言だそんなの!」


「フォッフォッ。虚言とは面白い冗談だ」


「そんな……だ、だとしても、幽霊の世界だとしても、僕はエールと出会えれば!」


「――まだわからぬか?」


 むくっとしたデリンの動きに、オーレンがごくりと唾を飲む。デリンは木杖を優しくゆっくり横に振り抜き、魔法陣を淡く光らせながら顔を寄せた。


「幽霊となるのは、この世に未練を残した者のみ。そのほとんどは、憎しみに縛られた老いぼれか、意味もなく復讐を誓い続ける大人どもじゃ。この中に、幼子の娘はあてはまるか?」


 オーレンの身が、氷になったように固まった。かく言う俺も、背中を冷たい指でくすぐったいように撫でられるような感覚がして、一瞬で目が覚めるような気がした。


「そんな!? エールは!? エールは、まさか! 死んでも会えない!?」


 叫び出したオーレン。その下半身が床を抜けるように地面に吸われ、ずぶずぶと生々しい音を立てて体が埋もれていく。


「ひっ!?」


 手をついて必死にもがこうと抵抗し始めるも、抜け出すどころかその手すら沼のように沈んでいく。まるで巨大な芋虫がむしゃむしゃと葉を食べるように、光り出した魔法陣は容赦なくオーレンの体を土の中へと引きずり込んでいき、彼の顔を歪ませる時間をあえて与えるかのようにゆっくりと時間をかけていく。


 俺も全身の血が逆流しそうなショックを感じてしまう。隣で女二人も思わず驚愕していると、遅れながら俺はミリエルの両目を手で覆って隠した。


「見るな! これはお前には毒過ぎる!」


「――過酷な現実から目を背けた者よ」


「や、やめてくれ! いややめてくください死神様!!」


「――世界に夢を見出すのはよし。じゃが……」


「僕はあ! 僕はエールと会いたいだけなんだあ!!」


「――夢はいつか覚める。現実を思い出してな」


 オーレンがいくら叫んでも、デリンは魔法を解除しようとしなかった。そしてとうとう、首も埋もれて顔だけが残った時、


「お主に、死の救済を……」


 振りかざした木杖に反応して、魔法陣から真っ黒の光が真っすぐに伸びた。中に見えなくなるオーレンの姿。いつの間にかダラダラと流れていた冷や汗に気づいた瞬間、消えた魔法陣の光の中にはオーレンの姿はなく、地面の土は何事もなかったかのように元通りになっていた。


 突然にして断末魔がなくなり、辺りは鳥のさえずりが聞こえてきそうなほど静まっている。ミリエルの目を隠していた手が力なくだらんと下ろすと、俺は全身の震えをこらえながら口を開いた。


「……い、今のが……今のが、禁忌級魔法」


 最後になんとか平常心を取り戻し、はっきり言葉に出来た。それにデリンはいつもと変わらない爺さん口調で話してくる。


「死属性禁忌級魔法、アンリミテッドドレイン。彼の精力が今、我の体へ流れ込んでおる」


「……永遠の命は、また長くなったんですね」


「我を恨むか? 若者よ」


「いえ、俺には関係ないですよ。だけど、デリンさんって容赦ないんですね。最後の最後に、あんな怖いこと言うなんて」


「フォッフォッ。虚言じゃよ。すべて」


「え?! 嘘、だったんですか?」


 思わず声が出てしまうと、デリンは茶目っ気を見せるかのようにこう続けた。


「ああそうとも。我はそもそも、死んだことなどない。死後の世界なぞ、我にも分からない」


 笑った顔に浮かんだ細い目。それをじっくり見て、俺は根拠もなしにこう聞いてみる。


「……それこそ嘘、だったりしませんか?」


「若いのう、少年よ」


 そう言い切った言葉に、嘘の臭いは感じない。けれど俺を見透かしてるように感じているからか、何を言っても通用しないんじゃないかと思ってしまう。死後の世界にエールがいたかどうか。どの道正確に知るためには、自分が死なないと分からないことだ。そう思い切った時、不意に俺は右手に違和感を感じた。


 俺は自分の手を見てみる。ミリエルのこぼした涙で濡れているのに今更気づいた。心臓の高鳴りもまだおさまらない。ミリエルに振り返ってみると、彼女は目頭が真っ赤に腫れた顔をデリンに向けていた。肩を落としきって、まるで叱られた子どものような状態の彼女に、デリンが声をかける。


「シスターよ。お主にとっては、残念な結果になってしまったな。死に魅力を感じる者は意外と少なくない。それに魔王の振りまいた絶望の残滓ざんしが合わされば、彼の選択も仕方のないこと」


「……ウチは、彼を救いたかった。それだけだった。死の救済とか、オーレンさんの選択とかどうでもいい。ただただウチは、……ウチは、彼の助けに……」


 うなだれるように真下に俯いてしまうミリエル。


「彼らは見える光よりも、見えない闇を選ぶ。光の温かみを知った者は、闇の冷たさを忘れてしまうのだ。……この私のように」


 ――私のように?


「デリンさん?」と不思議そうに俺が聞いてみると、デリンはわずかににこりと笑ったような顔をする。


「少年よ。永遠の命の先にあった真理はなんなのか、お主は我に聞いたな」


「そう、でしたね」


 デリンが禁忌級魔法を発動した理由。不死に興味のなくとも、それを聞いていたのを思い出す。


「教えてやろう。永遠の命の先に得られたもの。――それは虚無だ」


「キョム? ですか」


「何も感じられず、すべてが虚しい。永遠の命を得て、我が感じたのはそれだ」


「……そうですか」


 あまり深く考えたことはなかったけれど、そんなに驚くような内容でもない。老人のただの自語りでも始まったのかとも思ったが、どうやらそうではなかった。


「その虚無から我は、ほんの一瞬、解き放たれたのかもしれない。シスター、お主のおかげでだ」


「へ? ウチ?」


 ミリエルが自分を指差し、拍子抜けするような顔を作った。


「お主の光の温かさ。幾百年ぶりだろうか、そんなものに触れ、安心感を覚えたのは」


 達観するような、急に本物の爺さんになったように、随分と満足そうな態度でそう呟いた。俺たちはどういうことだと顔を見合わせるが、デリンはまた神妙な面持ちに戻って話しを続ける。


「真理にたどり着いた我に、もはや生きる意味はない。永遠の命を断ち切るために、お主の力を借りたい」


「ウチの力って。一体、何を言ってるんですか? まさか、死にたいとでも?」


 疑問形の言葉にデリンはゆっくり顔をうなずける。


「我が死ぬには、どんな魔法や武器も通用しない。いくら体を傷つけようとも、この山と同化している体では意味がない。唯一の方法はただ一つ。私の前に、生者が現れないことだ」


「それってまさか、ウチにみんなを救ってほしいってこと?」


 デリンはリプレイ再生のようにまたうなずく。彼女を真正面から見据える青い瞳は、ちゃんと光が灯っているようだ。今までになく、強く宿したような光が。


「シスターよ。この老いぼれに、救いの手を差し伸べてくれるか?」


 顔を真っ赤にしたまま、不安げな表情をするミリエル。後ろで肩に触れていたセレナも似たような顔をしていたが、すぐにミリエルはごしごしと目元を拭って勢いを取り戻そうとする。


「その言い方、誰かさんに似ていてムカつく」


「え?」と俺は情けない声をこぼしてしまった。さっきまでしょげていた人が、どういう気の変わりようだと言葉を疑う。


「オーレンさんを持っていったあなたを救うつもりなんてない。絶対に許せないことをしたんすよ。どう思ったら助けるって言うと思ったの? マジあり得ないから」


 ヤケクソになったように乱暴な言葉を連ねていく。デリンが「これはこれは――」と言いかけたが、ミリエルの怒りがそれを遮った。


「ウチ! もうここに誰も来させないから! ゼッターイに、死の救済なんて思わせないから!」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は間の抜けた顔を戻した。そうだった。彼女ほど正直な人間はいないんだった。愚痴をこぼす時は容赦なく人に聞かせるし、自分の想いだってはっきりと言えるし、気に食わないことにだってこうして堂々と口にできる。そんな彼女の本気をデリンも直に受け取ると、いつものように「フォッフォッ」と笑った。


「面白いシスターだ。これは、期待できるな」


「嫌な言い方。後で泣いて後悔しても、絶対に聞かないんだから!」


 ミリエルは最後までそうきっぱりと言い切った。デリンはまた小さく笑い声を上げると、木杖を軽く一振りして、俺たちの周りに灰色の魔法陣、あの時ワープさせた魔法を発動しようとした。


「行くがいい。お主の救いを待つ者の元へ。ここは、お主らのいるべきところではない」


 線が円を描いて、内部に不思議な装飾を施していく。それが完成しようとした時、俺はデリンに聞いてみた。


「命が終わったら永遠じゃなくなると思いますけど、それでもいいんですか?」


「永遠のその先を、見てみたいのじゃよ」


 光で次第にデリンの体がはっきり見えなくなってくる。眩しさに目がチカチカし始めると、デリンはもう一度木杖をゆっくり振って、俺たちを柱に包むように魔法を発動させた。灰色の光と深緑から変わった空気。やがて光が音もなくスッと消えると、前と同じく、ピトラの城壁が見えるあの平原へと転移させられていた。


 太陽が真上に昇っているのを見て、長い半日だったなと感じる。横でミリエルが曇った表情をしていると、「はあ……」とため息をついた。


「ミリエルちゃん?」とセレナが声をかける。


「なんだか疲れた。こんだけ頑張ったのに、結局オーレンさんを助けられなかったし。マザーにもどんな顔して会えばいいのよ……」


「いくら悔やんでも最後に決めたのはオーレンだ。お前が気に病むことじゃない」


 ミリエルはよくやっていた。今回は運が悪かっただけだと。そう伝えるように俺は言う。


「ミリエルちゃんは、私が今まで会ってきた人達の中でも、本当に優しい心を持ってますよ。オーレンさんのことは残念だったかもしれません。だけどきっと、それで救われてる人だっているはずです」


 セレナもそう声をかける。だがミリエルは、落ち込むように俯いたまま、悔しそうに握りこぶしを作って何も言わなかった。




「そうですか。オーレンさんは死神の山で」


 マザーがそう呟く。教会堂に戻ってきた俺たちは、聖堂にいたマザーに事の経緯を説明し終えたところだった。依然ミリエルは不機嫌に頬を膨らませた様子でいたが、彼女の頭にマザーが手を置いた。


「お疲れ様でしたミリエル。今日はもう休みなさい。本日の業務は他のシスターたちに任せておきますから」


「はい、ありがとうございますマザー……」


 マザーは子犬を撫でるように手を優しく動かし、彼女から手をどかす。ミリエルはしばらくその場に立ったままでいると、再びマザーに口を開いた。


「マザー。ウチ、死神の潜む山で、ある人に救いを求められました。その人を救うためには、この国で救いを求める人たちを全員助けないといけないんです」


「そうなのですか?」


「その時はウチ、つい感情的になってそう言っちゃったんですけど、ウチにできますかね? ていうかムリですよね、フツーに考えて……」


 デリンから言われたことを、ミリエルはなんだか自暴自棄にでもなっているかのように、吐き捨てるようにそう呟いた。オーレンの件が相当ショックだったのだろう。一人を救えずどう国中の人々を救えるのか。俺がミリエルの立場になってもそう考えるだろう。


「顔を上げなさい、ミリエル」


 マザーの命令が飛ぶ。それにミリエルは一拍置いてから頭を上げる。


「私たちは神様ではありません。全員を救おうとしても、人のできることには限界があるのです」


「……そうですよね」


「ですが、今のあなたは神様よりもとても立派に見えますよ」


「え?」


 キョトンとするミリエル。てっきりマザーが現実は甘くない、的なことを言いだすのかと思っていたが、それは百八十度違う予想だった。


「神様が我々を直接救ってくださったことがありますか? 私の生きている限りでは一度もありません」


「えちょ! マザー?!」


「神は我々に拠り所を与えてくれますが、命までは助けてくれません。魔王の侵略の時を思い返せば、それも一目瞭然でしょう。クソッタレというやつです」


「クソッタレ!?」


 あのミリエルですら若干引き始めている。俺とセレナも耳を疑うような気分でいると、マザーは咳払いをしてから話しを続けた。


「道で倒れた人に手を差し伸ばせるのは、神ではなく人です。お腹が空いた子どもにパンを分け与えられるのも、神ではなく人です。人を助けられるのは、いつだって人だけなのですよ。私たちシスターは神の名のもとに人を救うのではありません。人を救いたいからシスターになったのです」


 ミリエルが何かに気づいたのか、ハッとするような表情をわずかに浮かべた。マザーは薄ら笑みを浮かべる。


「ミリエル。私もこの身が果てるまで人々を救い続けるつもりです。あなた一人だけに、すべてを背負わせはしませんよ」


「マザー……ありがとうございます。その話しを聞けて、ちょっと安心しました」


 ミリエルの言葉にマザーは満足そうにうなずいた。なんだか親子のような温かいやり取り。その最後にマザーは聖堂を出ようとしながら一言、


「あなたが大人になった時には、私の幼かった頃の話しを聞かせてあげましょう」と言い残していった。


 マザーが聖堂を出ていき、その背中が曲がり角で見えなくなる。ミリエルはくるんと振り返って後ろにいた俺たちを見てきた。そこに映った顔は朝に見た上機嫌なギャルの顔だった。


「二人も今日はありがと。協力してもらったのにごめんね」


 片手だけ首元まで上げて、首を傾げて“めんご”と言うような軽いノリでミリエルが謝ってくる。人に謝る態度かよ、とツッコみたい気持ちも湧いたが、「別にいいですよ」と言ったセレナの言う通り、ひとまず元気を取り戻してくれたようで安心する。


「今日のはしょうがなかったさ。向こうが勝手な幻想を抱いていたわけだし」


「うーん、でも悔しい。悔しいくやしいクヤシイ!! 今日は寮でふて寝する! 寝ながらもう泣きまくる! そして枕に向かって禁忌級ジジイのクソヤロー! て思いっきり叫ぶ!」


「ハハ。今日はそうした方がいいかもな」


 落ち着きなく腕を振って声を張り上げるミリエルに、俺は笑いながらそう返した。ミリエルは一息つくように冷静さを取り戻すと、少し疲れを残したような、それでも俺たちに向かって笑みを浮かべてくれた。


「そう言うことだから、ウチはもう休むね。明日っからまた、立派なシスター道を歩んでいかないとだから」


「そうですか。私たちも行くべきところがあるので、ここでお別れですね」


 セレナがそう言うと、ミリエルは突然彼女の体に抱き着いた。一瞬セレナはうろたえるが、ミリエルの優しいハグに自分も腕を回していった。


「今日は本当にありがとう。次に会える時まで、ウチ絶対立派なシスターになってみせるから。だから、セレナちゃんも頑張ってよね」


「……はい。お互いに頑張りましょうね、ミリエルちゃん」


 二人は体を離し、ミリエルの顔が俺に向けられる。


「ハヤマもありがとう。臭いで探るの、犬っぽくてちょっとウケちゃった」


「別れに言うことがそれかよ……」


「アハハ! 冗談だって。ケガとか気をつけてね~」


「ああ。お前もゆっくり休めよな」


 俺の言葉にミリエルはうなずくと、早歩きで聖堂を出て行こうとした。去り際に俺たちに手を振って、俺たちが振り返したのを見てから笑顔のまま姿を消した。聖堂に俺とセレナだけが残されると、出入り口の扉の横に置いてあったバックパックをそれぞれ拾い上げる。


「損な仕事だよな、シスターって。向こうがいい加減だったら、本人たちのストレスがたまる一方だし」


「そうですけど、仕方ありませんよ。魔王の襲撃で大事なものを失った人たちなんですから」


「痕跡辿って山登って、あれだけミリエルが手を差し伸ばしたって言うのに、結局は収穫ナシ。俺に出来そうなもんじゃないな」


「ハヤマさんは助けるよりけなす方が得意ですもんね」


「嫌な言い方だなおい。まあ間違ってはないんだが……」


 他愛ない会話をしながら聖堂を出て、教会堂の出入り口へと向かっていく。その途中、セレナは誰かを探すように辺りを見回していると、不安そうにこう聞いてきた。


「ミリエルさん、きっと大丈夫ですよね?」


 俺はセレナから目を離し、真っすぐ前を向いたままこう答えた。


「失敗は必ず糧になるさ。あいつは胸の中のものを正直に吐き出せる奴だし、立ち直りもきっと早いだろう。それに、あいつにはマザーや他のシスターたちがいる。一人じゃない」


「……そうですよね」


 それだけ言って、セレナは納得する素振りを見せた。不安気な雰囲気が残っているのは否めないが、俺たちも向かうべきところがある。ここに立ち止まってはいられない。魔王が死んだ後の異世界には、オーレンみたいに救いを求める人が多くいるのだろう。そして、そんな彼らを救おうとする人もちゃんといる。本気の想いが結果につながるとは限らない。けれど、それでも彼らは人々を救おうと努力し続ける。


 ――もしも時間を戻せるとするのなら、俺はミリエルの納得のいく結末を作れたのだろうか。


 思わず鼻で笑ってしまいながら、俺は教会堂を出ていった。



 十章 死神の潜む山

                               ―完―

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