6‐6 この花に、遺恨を残し続けようとするのなら
いつも通りの朝を迎えると、俺とセレナは起き上がり、寝袋を畳んでからセレナが土のドームを元に戻していた。俺もそこから離れて家に顔を見せようとすると、丁度ヴァルナ―が扉から出てきた。
「おっと。ハヤマか」
そう呟いた体には、包帯が見えないように鎧が着られている。当然、矢が刺さった跡は残ったままだ。
「ヴァルナ―か。もう動けるのか?」
「ああ。美しき女神のおかげで、ばっちし回復したぜ」
「ミツバールを襲ったりはしてないよな?」
「んなことはしないさ。男の恥になるようなことは、絶対にやらない主義なんだ」
そんな会話をしていると、ヴァルナ―が突然目つきを変えた。怪訝そうな表情に俺も背後に振り返る。するとそこには、体がやせ細った象の獣人がいた。歳のいった獣人なのか、片手に杖をついて立っている。灰色の体が低くて小さいせいか、長い鼻が地面すれすれの状態だ。
「人間ども。ここで一体何をしている?」
年老いた声で話してくると、ヴァルナ―が前に出て答えた。
「ちょっと近くでケガしちまってさ。丁度通りかかった彼女に助けられてたんだ」
「嘘をつくな。貴様のその身なり、ログデリーズ帝国の兵士だろ? さては偵察でもしに来たのか?」
「誤解だってお爺ちゃん。これはその……そうコスプレだ。王都では騎士に憧れる人間が多くてな、最近の流行りなんだ」
「私はこの村の村長ハナノだ。貴様ら人間から村人を守る必要がある。さっさとこの村から……む? その顔、どこかで見たことが……」
そう言って象の獣人ハナノ村長が、まじまじとヴァルナ―を見つめる。ヴァルナ―はしまったという感じで顔をそらしたが、ハナノ村長の目がパッと見開いた。
「そうだ思い出したぞ! 貴様は土拳のヴァルナ―! 今は皇帝側近の騎士だと聞いたが、そうか、お前がここに来たというのか」
「ヴァルナ―? そっくりさんじゃないのか? 俺の名前はハヤマだぞ」
ヴァルナ―に勝手に名前を使われた俺は、思わず「え!?」と言って振り向いたが、象の獣人から「なんじゃその変な名前は?」と言われて「ええ!?」と振り返った。
そうこうしていると、横で作業をしていたセレナが俺の隣に来た。家の中からミツバールも現れる。背中になぜか弓と矢が装備されていると、ハナノ村長の存在を見て彼女はため息をつき、俺たちの前に出てハナノ村長の話しを聞いた。
「ハナノ村長。おはようございます」
「ミツバール。これは一体どういうことなのだ? 人間が三人もいるだなんて」
「一日だけ彼らを泊めただけです。私のせいで、彼を傷つけてしまったので」
「人間の傷を治したというのか!? それも、土拳のヴァルナ―と言えば、お主の兄さんの仇ではないか!」
「勘違いしないでください村長。私は別に、人間たちを許したつもりはありません。彼を見殺しにしては、私の目覚めが悪かったので助けたまでです」
「世迷言を。ミツバール! お前の兄さんが、どれだけ偉大な人物だったか知っているだろう! 戦争で一万を圧倒した功績を残す、英雄の中の英雄なのだ! その男の仇を、みすみす見逃したというのか!」
「ハナノ村長!」
声を荒げる村長に対し、ミツバールは冷静に、鋭く刺すように名前を呼んだ。村長も思わず口を閉じ、全員が自分の顔を彼女に向けてしまう。
「たとえ彼を殺しても、お兄様はもう帰ってきません。人間を憎んでいても、それは同じことです。だから、私は決心しました。お兄様がいないのなら、私がここにいる理由はない。だったら、新しい居場所を見つけに行こうと。私が幸せに生きていけるような場所。そこがたとえ人の国だろうと、関係なく求めていくつもりです」
ミツバールの決意が、強い言葉と共に明かされた。それを聞いた時、ヴァルナ―は驚くように目を向け、セレナは嬉しそうに微笑み、俺は腰についていた私物入れのポーチを見て、納得するようにうなずいた。そしてハナノ村長だけは、いかにも不服そうな顔を浮かべているのだった。
「なんということを言うのだ! 人間と生きていくつもりかミツバール! ゼインの妹のお前が、見損なったぞ!」
「なんと言われようと、私は私の選んだ道を進みます。きっとそれが、お兄様の求めることでもあるのだから」
「血迷ったかミツバール。いや、さてはこいつらにたぶらかされたな?」
そう言ってハナノ村長は、俺たちに一人ずつ目を向けていく。その途中に長い鼻がピクッと動くと、臭いを嗅いでいるのか、俺たちにゆっくり伸ばしてきた。
「……臭う。血の臭いがする。それも花の中に混ざって……貴様からだ」
ハナノの長い象の鼻が、俺を示してくる。
「貴様のポケットから、怪しい臭いがする。何を隠している?」
隠している? 覚えのなかった俺は、とりあえず言われた通りにポケットの中を確認してみた。すると右手になにかが当たり、素直に取り出してみると、それは花弁がへこんだアトロブの花が入っていた。
「それはアトロブの花。国のために亡くなった者たちが咲かせたその花を、貴様はむしり取ってきたというのか。この無礼者め」
いつ俺はアトロブの花を取ったのか。記憶を辿ってみると、それはミツバールとヴァルナ―の沈黙を、どうにかしようとした時、セレナがこの花で平和になったらと言った時だった。
「そんなに悪いことでしたか? 綺麗な花だったから、つい取ってしまっただけなんですけど」
「その花には獣人たちの魂が眠っているのだ。それを平然な顔をしてちぎるなど、生き物として恥を知るべきだ。若さですべてが許されると思うな!」
「そこまで言わなくても……ですが爺さん。この花は、獣人の血と人間の魔力が一緒になって咲いたって聞きました。だとしたら、獣人だけじゃなくて、人間の魂も宿ってるんじゃ――」
「知ったような口を利くな!」
ハナノ村長がぴしゃりと俺の言葉を遮る。
「あくまでそこにあるのは魔力だ。人間の魂なんぞ入っとらんわ! 戦争を知らぬ田舎者が、適当なことをほざくでない!」
村長の言いがかりが、だんだん勢いを増していく。お前は若いだの、田舎者だの、そんな訳の分からない言葉で俺を攻め立ててくる。当然、俺にとって気分のいいものではない。隣にいるセレナも、同じような立場からか、頬を膨らませている。そんな不機嫌な気持ちだけが募っていくと、ミツバールが間に割って入ってきた。
「ハナノ村長。彼を許してやってください。戦争とは無縁だった人間です。彼らが私たちを苦しめたわけではないのです。ですから――」
「裏切り者の言葉など、私は聞かん」
そう一言であしらわれると、ミツバールは黙ってしまった。そのあんまりな言い分に、セレナが反応していて、尖った口から「あの」と切り出して言い返そうとしたが、ハナノ村長はすぐに「人間は黙っていろ」と突き放してきた。それに怒りを見せるセレナが言い返そうとするのを、俺は肩に手を置いて止めた。すぐにセレナが抵抗の目を見せてくるのに、俺は冷静に首を横に振って抑える。その代わりに、俺がいくと目で訴えた。
ハナノ村長の言ってることは言いがかりだ。戦争によって獣人至上主義を徹底し、俺たち人間が何を言おうとすべてに難癖つけて否定してくる。頭を固くし、何も受け入れようとしない、老害とも言い換えられる存在だ。彼はそれだけ人間を憎み、拒絶しているのだろう。ミツバールでさえも裏切り者と言われてしまえば、もはやこの場の誰の言葉も決して届かない。村長が人間を許さない限り、絶対だ。
渋々セレナが顔を下げていくと、誰も何も喋ろうとしなくなった。ただハナノ村長の威圧が俺たちにかかるだけで、俺たちは発言する権利を奪われていった。まるで、昨日と同じような状況だ。重たい空気の中、投げかける言葉を考えるだけの、無駄な時間。
当然、俺は腹が立っていた。人間というだけで同じように扱われ、勝手に否定をされる。それも、たった今出会ったばかりの老人にだ。彼がどれだけの苦痛を受けたかなど、俺には分からない。戦争とは無縁だった俺には、想像できる範囲なんかも限られている。だとしても、まるで俺たちを舐めているような態度を許す気にはなれない。悲痛な過去なんか知らずとも、俺たちには俺たちの言い分があるはずだ。それだけは、はっきり彼に伝えておこう。
「ミツバール。さっき言った、人間と一緒でもって話し。人間と分かり合おうとするお前の意思は、嘘じゃないよな?」
ミツバールは急なことで驚いたのか、少し間を作ったが、それでもはっきりとこう答えた。
「……ええ。お兄様の意志を知った今、私は新しい生き方を見つける。本気でそう思ってるわ」
今度はヴァルナ―に聞く。
「ヴァルナ―。アトロブで亡くなった人間と獣人、そのすべての死を、お前はずっと背負っていくんだったな?」
「もちろんだ。彼らの死を、決して無駄にはできない」
ヴァルナ―もはっきりとそう答える。隣にいるセレナにも、俺は手に持ったアトロブの花に目を向けたまま聞き出す。
「セレナ。事情を知った今でも、この花は綺麗に見えるか?」
「事情、ですか。戦争を知った今では、確かに悲しい花だなって思います。けど、たとえ偶然だったとしても、争っていた人間と獣人が、こうして一輪の花を咲かせたって思うと、とても美しい花だって、ちゃんとそう思っています」
「そうか。お前にとってこれは、やっぱり美しい花なんだな」
全員の意志を再確認し、俺はまとめるようにそうはっきり呟く。すると、それまで黙っていたハナノ村長が苛立つような声を上げた。
「何が言いたいんだ人間! そんな意味のない話しをしたいなら、さっさとこの村を出てってくれ! 目障りだ!」
「分かってますよ村長さん。俺たちはこの村を出ていきます。けれど一つ、俺から伝えたいことがあります」
俺は顔を上げると、アトロブの花を持つ右腕を伸ばし、顔と同じ高さまで持ち上げた。よれよれの花びらをその場の全員に見えるようにすると、俺はハナノ村長の目を真っすぐに見つめた。
「この花を美しいと言う人間がいる。獣人の中にもそう言う奴はいるかもしれない。そんな感想を抱けるこの花は、とてもいいものなんだと思います。でも……ハナノ村長がこの花に、遺恨を残し続けようとするのなら、俺の答えはこうです」
そう言い切りながら、俺は右手を固く閉じて花を握りつぶした。指の間から血が滴り、腕にも何本か筋が流れてくる。その様子に当然、ハナノ村長は目を丸くしていた。
「き、貴様! なんということを! 喧嘩を売ってるつもりか!」
酷く声を荒げてきたハナノ村長に対し、俺は顔を俯け平然を装い、それでも力を込めた腕を上げたまま、話し始めた。
「ハナノ村長。俺に戦争の恐ろしさは分かりません。体験したことがなければ、話しを聞いても記憶のどこかから抜け落ちてしまう。この世界の政治や歴史にも詳しくない分、それだけ俺には遠い別世界の話しなんです。でも、そんな俺でも一つ、とても単純な事実が一つだけ分かります。戦場に出ていった彼らが、これ以上の戦争を望んでいる訳がない」
「これ以上の戦争だと?」
そこでしっかりと顔を上げ直す。彼の目を見据えて、強く訴えるように。
「戦争は終わったんです。とっくのとうに、人間と獣人の争いは終わった。もう二つの種族が争う必要はないんです。それなのに、まだあなたは人間に歯向かおうとしている。戦争を続けようとしている。死んでいった者たちの、思いも知ろうとせずに」
「貴様が死者の言葉を語るつもりか!」
「あなたが崇める英雄、ゼインの言葉なら語れます。彼は朽ち果てる最後まで、妹ミツバールの幸せを願っていた。国の勝利や世界平和なんかより、大事な人のことを思っていたんですよ」
「何をデタラメを。どうしてお前がそう言い切れる。戦争となんら関係ない人間だったのだろう?」
「ヴァルナ―から聞いた話しです。それが本当か嘘かは分からないにしても、その言葉をミツバールは信じることにした。兄の仇から聞いた話しを、彼女自身が信じることにしたんです」
「何!? そうなのか、ミツバール?!」
「信じたら悪いですか?」
ただ一言そう言い放たれると、ハナノ村長は杖を握る手に力を込め、まるで悔しさを表した。
「よもや人間の言葉を信じるとは……そういうことだったのか。だからお前は、そうなってしまったのか。後悔しても遅いぞミツバール! 目を覚ますんだ! その愚直な男を今すぐ殺せ! それがお前のための、お兄様のための行動だ!」
村長の声が一層荒れていく。
「ハナノ村長。彼を殺す意味なんか――」
「あるに決まっている! お前の大事な人の敵討ちだ。それはお前が救われるだけでなく、我々獣人たちの悲願でもあるのだ! 英雄を奪った憎き人間への、反逆ののろしになりえるのだぞ!」
そこまで言われ、ミツバールが苦しそうな表情を見せる。そのまま一度ヴァルナ―の方へ目を向けていると、まるでまだ迷いが払いきれていないようだった。それを察したのか、ヴァルナ―がすかさず口を開く。
「君には俺を殺す権利がある。目覚めが悪いと言うのなら、俺が自害したとか、魔物に食い殺されたとか、そういう理由をつければいい。そしたら、人間は誰も君を責めないし、君も背負っていたものが解消される」
「あなたは、それでいいって言うの?」
「君のような美しい女性に殺されるのなら、それ以上の最期なんか存在しないさ」
ヴァルナ―がそう言い切ると、ミツバールは黙ってしまった。ハナノ村長が横から「やってしまえ!」と野次を飛ばしてくる。ミツバールはずっとヴァルナ―を見つめ続けたが、ふと、その目が鎧に向けられたかと思うと、ミツバールは村長に向き直ってからこう言った。
「……馬鹿な男。今更殺す気になんてなれないわよ」
ヴァルナ―とハナノ村長の目が大きく見開く。セレナも安心したような素振りを見せると、すぐさま村長が叫んだ。
「ミツバール貴様! その男を、糞のようなそいつを許すと言うのか!?」
「彼の覚悟は侮辱できない! もし舐めた口を利く者がいるのなら、そいつの鼻の中にありったけの臓物を詰め込んでやるわ!」
忘れていた毒舌に、その場にいた誰もが身をすくめた。だがヴァルナ―だけは、すぐに笑みを浮かべてると、俺とセレナもそれを見て微笑んでしまう。
「そうか。お前はもう、ゼインの妹のミツバールではないみたいだな。人間を許そうなど、そんな甘いことをほざくまがいものになってしまうとは」
「私は別に――」
「喋るな裏切り者が!!」
その叫び声で、彼が完全にミツバールを見限ったのだと俺たちは気づいた。手に持っていた杖を持ち上げて、ピシッと俺たちに向けられる。
「お前がその気でも、私は未だゼインを、獣人の戦士たちを見捨てない! 彼らが残していった思いを背負って、一生人間たちに歯向かってみせる! そうすることで、彼らのやってきたことに間違いがなかったことを証明するのだ!」
徹底された戦士たちへの心情。国を守ろうとした彼らを思うのは確かなことだろう。だがそれは、ただ戦争を行ったという行動に対しての見方であって、彼らの思考までは考えてない。結局これは、戦争とは名ばかりの、望まれぬ争いだったのだ。その真実に気づけていない彼に、俺は憐れむようにこう返した。
「人間の言葉を信じようが信じまいが、俺には関係ありません。でもさっきも言ったように、この花を咲かせた彼らは決して、戦争を望んではいない。戦争なんて、大事な人を脅かすだけの恐怖だ。互いに命を散らし合って、金や心を失うだけ失って、最後に残るのは、大量の死体の上に掲げられた勝敗の行方だけ」
花を潰していた手に、今一度力が入っていく。
「若者の俺でもこれだけは分かります。戦争なんて無意味だ。繰り返しても得なんかない。戦場に出ていた兵士たちが死に物狂いに戦う中でも、心のどこかでは戦争の終わり、つまり平和を求めていたはずですよ。誰かのために命を懸けられる兵士たちなら、世界平和くらい本気で願えるはずですから」
花の血が地面に滴り落ちる。ハナノ村長は怒りの形相を見せたまま歯ぎしりをしていると、その口から「貴様」という単語が出てきそうになったが、しびれを切らした俺は上から覆いかぶせるように声を張った。
「あなたの傷の深さは存じません! あまり知りたいとも思わないです。でも、ここまで俺が親身になって話しをしても、人間の言葉だと言って信じないというのなら、俺は、戦争を思わせるこのアトロブの花を、根こそぎ全部切り捨ててやります!」
「何!?」と叫ぶハナノ村長。後ろでも、ミツバールやヴァルナ―たちが驚きを隠せていなかった。
「アトロブの花は元々、偶然そこに血と魔力があったから咲いただけの、ただの超常現象で産まれた花。それに意味をつけようとするのは人の勝手ですが、こうしてまた新たな争いの種になるのなら、そんなのすべて失くした方がマシだ。そこに眠る彼らには、これ以上戦争に巻き込まれず、ゆっくり眠るだけの場所を与えるべきです!」
「そ、そんなことをすれば、また新しい争いを生まれると分かっているのか?!」
「その時は全員俺を責めればいい。偉大な戦士たちが残した花を、何も知らない無能な若者がすべてむしり取ったと、そう言って俺だけを攻撃してればいい。魔王の存在を見落とすようなあなたたちなら、これくらいしないと見向きもしないでしょうからね」
そうすべてを話し切ると、ハナノ村長はやはり、露わにした感情を制御できない様子だった。杖を持つ手は怒りで震え、歯ぎしりも一層強くなっている。人がこれだけ怒りを見せるのも、そうそう見れるものではないだろう。それも無理はない。最後は半ば無理やり、人間である俺の話しを聞かせたのだ。心の準備も整わないまま聞けば、冷静な思考が働かない分、苛立ちが積もる他ないだろう。
「貴様の言いたいことは、それだけか?」
震えた声でそう聞かれ、俺は「はい」と素直に返す。それを聞いて、ハナノ村長は俺たちに背を向けた。
「全員この村から出ていけ。貴様らの顔を、一生私の前に見せるな!」
「……行こう。セレナ」
俺はそう言うと、返事を待たずに真っすぐに歩き出していった。セレナも慌ててその隣についてくると、背後でも馬の足音と、翼が羽ばたく風音が鳴って、やがては遠ざかっていった。俺はハナノ村長の横を通り過ぎ、少し進んだ先で足を止める。
「……花。潰してしまい、すみませんでした」
最後にそう言い残すと、ハナノが杖を握り潰す音が聞こえた。俺は振り返らずに歩き出すと、血で濡れた手をそのままに、セレナと一緒に村の外まで歩いていった。