瑗真
1 瑗真
日本の東の洋上に、昂国という島国がある。
かの地は、争乱、天災が絶えない、過酷な土地である。その歴史の中で戦代と呼ばれる時代の終わりでは、綜、瑗、煌、河津の四大国が覇権を争っていた。
その一角、瑗環国は、昂国を東西に分かつタレイル河の東側全般を領分とし、二つの幹国と複数の枝国から成っている。
発言力の強い幹国の一つ、シシン幹国は、環国の中で南西に位置し、東にエンレイ河、西にタレイルという大河に挟まれている。主都の人口は七万人と、環国内では真都エントの八万に次ぐ規模で栄えている。
その主都へと、向かっている男がいる。
「それにしても、力強い」
額の汗を拭いながら、カク・源は呟いた。木陰の下に避難していても、日差しの強さを感じる。そのせいか、周囲の光の強さが違い、景色がすべて明るく鮮やかに見える。
「煉は火を尊び、その加護を受けていると聞くが……。こうも強くては、肝心の民が参ってしまうではないか」
シシン幹国の国主は、遥か昔に西方から流れてきた煉という名家が担っている。示向教や无主教徒の多い北方と異なり、火の素を尊ぶ火起教を崇める。
この地には、古くから素真崇拝がある。万物は火・水・気・物の性質を帯びた微細な素から成っている。炎は火の素ジが集まって成り、水溜りは水の素の集合体であり、大地は物の素の塊で、中空を気の素が漂っている。性質の違う素を併せ持つ存在を混成と言い、人や動物、生物がこれに当たる。
対して、単一の素が凝縮して意思を持つようになったのが素真である。たとえば、無数の火の素ジが集まると炎となり、絶大な火力を持つようになれば火の素真ジバとなる。
在り様が狂った素真をマガリ(曲形)といい、火の素真がマガリとなれば、野を焼き、街を大火で飲み尽くす。ゆえに、どの素真も恐ろしいものだが、この島の民にとっては特に火への畏怖がある。それはいつの日か〈万素の大元〉が目覚め、すべてを素に返すという伝説による。
最も力の強い火の素真を陽真と言い、それは大地の底で眠っているとも言われる。〈万素の大元〉の血であるともされるので、ジラは決して刺激してはならない。
煉家はかつて火を多用し過ぎて、ジラを起こしかけた、といわれている。その代償でレンゴウという都市ごと滅びかけた過去を持つというが、懲りずにまた頼ろうとしているのだろうか。この身に堪える陽の強さは異常で、火起教徒の所為だと思いたくもなる。
「まったく、迷惑な話だ」 と、カクはげんなりして言った。「物事には適度な温度というものがある。活性化させるのは良いが、限度を超えると干からびてしまうというのに」
顔を顰めたカクは、シシン幹国の主都シシンを遠く睨んだ。
*
「もっとも偉大な瑗真として、そなたは誰を挙げるか」
シシンの実力者ビゼン・源は、対面するなり、そうカクに問いかけてきた。
それは―――、とカクの脳裏に幾つかの名が浮かぶ。
瑗環国の創始者アマナ・ゼン、または、その後を継いで領土を広げたアマト・ゼン。幹国の離反を抑えて、再び瑗真の全権を取り戻したアトウ・ゲンもいる。もしくは源家の始祖であるアセト・源、この辺りを上げるのが無難か―――。
ただ、アセトは埴氏源家の祖であり、その弟アソンを祖とする无氏源家とは流れが違う。ビゼンの母はシエン幹国を領分とする无氏源家の出なので、そこを踏まえて、アソンの名を上げるべきか―――。
どう答えたものかと、カクは考えた。単純に、功績や偉業の過多での評価を聞いているのではないだろう。どの性質を評価しているかで、何が大事と思うかと問うている。瑗環国のあり方、望ましい瑗真の姿とは何か、カクの理念を現せということだろう。
カクは二十四にしてすでに環国中に名を知られている。ルーカラは隣国イダネハとの境界争いを繰り返していたが、カクは父の代行という形で指揮を取るなり、和解に至らせた。
武力で押さえ込めば、どうしても遺恨は消せない。カクは裏工作に奔走し、力づくではなく、平和裏に事を収めることに成功した。長年引き摺ってきたわだかまりも解消したかのように見え、カクは高く評価された。
一方、北方の蛮族との抗争にも辣腕を振るい、少ない戦力ながらも、意表を突く策で相手を突き崩し、快進撃をなした。この評判は国内に広がり、策師としての教えを請う者達もいる。
今では環国の中央政府・桂層部に属し、政(政治)・言(法)・廻(経済)・統(軍事)の四道のいずれかの司になれるかと期待もされていた。
ただ、其々の司は歴任する国が決まっており、カクが国主を継いだルーカラは僻地の枝国であり、そこに割り込めない。それでもカクならば成し得るかとも言われたが、祖国を巻き込んでまで、争うことをカクは望まなかった。桂層部政道の一員として、瑗環国の主、瑗真のために働くとだけ公言している。
ところが、今の瑗環国は一枚岩ではない。桂層部内では勢力争いが日常化している。
ここでカクが素直に理想を口にしたならば、では、今の瑗真をどう思うか、と話をつなげてくると予想できる。そうして現瑗真ショウ・源の是非を問い、このままでは良くないであろう、ならば我に協力せよ、誘導してくると思われた。
「さて……」 と、名前を思い出す振りをしながら、カクは別の事を考えた。
その手には乗るまいと、生真面目な回答をして失望させるのも、つまらない。かといって、あまりに優れた例を持ち出せば、比べて今はどうかと問われると、困る。
「……創始者のことは、言うまでも無いこととして、私個人の考えを申せば……。アマト様か、アトウ様か。真としての器を考えれば、そのお二方のどちらか、でしょうか……」
真とは人々を受け入れ、導いていく才を持った者がなるものとされる。最も多くの人を従え、受け入れたのは、つまり、最大領土を得た者であろう。
「ほう。この島の半分を治めたのだからな。並大抵な器ではなかったであろうしな」
そら来たと思いながら、カクは、ちなみに、と言葉を足した。
「私が最も尊敬する者が、他におられます」
「他に? それは?」
「お話からそ逸れるようで、申し訳ないのですが、過去、これほどの器を持った者をほかに知りません」
それはコランです、とカクは答えた。意外そうな顔をして、ビゼンは頷く。
「コラン、か。古のシン・トー、素真基類の一翼だな……」
はるか昔、深代と呼ばれる時代に、この島を支配したのが彼従―ヒイト―と呼ばれる種族である。その支配者をシン・トーといい、その中でも、偉大な七徒を素真基類と呼ぶ。コランはその三代目である。
深代は伝説に彩られる時代である。彼従の偉業も現実ではなく、すべて空想の産物だとみなしている者も多い。ビゼンはその一人であるようで、面白くなさそうな顔になった。
「いえ、それが、超人的な逸話はさて置いて、彼の政だけを見れば、その偉大さが際立ちます。まず、ドノーと呼び、見下していた科人(人間)を、彼従と同等の存在と見たこと。これは、革新的な考えで、並大抵の器ではなし得ません」
コランには謎が多い。実は彼は彼従ではなく、科人であったという説もある。だとすると、ドノーが彼従の主となったというのは、飛び抜けて偉業で、いったいどれだけの才知と器があればそのようなことが成せるのか。
彼の前のシン・トー、始祖ケエスやラジクが、圧倒的な武威を示して支配していたのに対し、コランは急に知性的になる。もし、彼従を伝説どおりの異人種ではなく、現実的に捉えて先進的な異民族であったと解釈すれば、ケエスは武力に長けた豪族であろうか。その三代目に至り、支配下の異民族と融和し、協調をはじめたのだから、コランは変わっている。
しかも、道具という存在、物を造るという考え方を広く知らしめ、共通の言語を創造し普及させた。有利となる先進文化を持ちながら、それを一般にまで開放して啓蒙し、民からの支持を得たのだ。
「かの存在以上に、多くの人のことを考え、身を切って施しを成し、その心を摑んだ者がおりましょうか。ゆえに私は、コランを崇拝しております」
「それはよい。よいが、ただ、なぁ」 と、ビゼンは言う。その眼が鋭く光って見える。「その偉大なコランも、身内からは評価されていなかったと聞くぞ」
結局、その話になるのかと、カクは内心ため息を付いた。
「確かにコランは、シン・トーを継ぐ際、兄弟たちの反感を買っています。そして、彼の子たちは、父に劣らず英明なものばかりであったが、誰もシン・トーと認められなかった……」
父ラジクの急な指名により、兄弟たちはコランを妬んだ。不和を解消しようと苦心したコランだが、最後まで理解は得られなかった。また、コランの子たちは有能であったが、誰も後継者として認められなかった。シン・トーの座が次世代のレノガーに移ると、コランの子達は姿を消してしまった。
「コラン自身は有能であったかもしれないが、その継承は適切であったのか。全体の流れというものはあり、それを無視して偏った考えを押し通せば、返って混乱を呼ぶことがある。彼の逸話は、教訓としても有益だな」
カクは黙って頷いた。
「そう、偏った独断といえば、だが……。見直さねばならぬ継承が、ごく最近でもあると思うのだが―――」 と、ビゼンは本題へと話を強引に転じた。
国主・真の座は、先代がその素質ありと認めた者に譲られるのが通例である。多くの場合、身内から有能な者が選ばれる。それでも、人々を率いた真が選んだ者として受け入れられる。
勿論、我が子の可愛さに眼が眩み、資質のない者に強引に継承した例も数多い。だがその場合、暗愚な者を良しとした先代の目も無能であったと見なされ、評価が地に落ちる。有害であるとされた場合は、先代の一族全体が罰せられる。下手に情で道理を曲げれば、自身を巻き込んで損が出るので、大抵の真は慎重に後継者を選ぶ。
遠縁の子であればその内実まで見通せないので、身内から見込みのある子を選び、真として立てるように厳しく育てる。なので、一番目をかけられ、時間もある長男が真となる確率は高い。病弱であったり、才能が乏しかったりする場合は他の子が選ばれることもあるが、セドウの場合は、子に恵まれていた。
長男セスは有能で、人の上に立つ資質も申し分なく、人あたりも良い。彼の周りに集う人材からして将来有望とされる者が多く、自然と人を惹きつける魅力も兼ね備えていると見て良い。次代はセスで揺るがないと思われていたが、急に退座を表明したセドウが選んだのは、次男のショウであった。
皆は驚いたが、表立って反対するものはいなかった。セドウがそう決定したのならば、次の瑗真はショウとなる。
「自分がそうであったから、それが異例なことではないと知らしめたかったのではないか」 と、そう邪推する者もいる。
実は、先代セドウもまた次男であり、長男ビゼンを差し置いて真に選ばれている。当時のビゼンは、己の立場にあぐら胡坐をかいた倣岸な男であったため、次代がセドウであればという声は大きかった。それゆえ、抵抗は多少の摩擦で済んでいた。
ただ、その分、セドウが抱える重圧は大きく、失敗を恐れるあまり慎重すぎる治世であったともいえる。その締め括りとして、己の選択が際立たないように、同じ立場のものを選んだのではないか。そんな意見が口に出されるほど、唐突な宣言であった。
当のビゼンは、泰然として見える。
「わしのことはもう良いのだ。今だからこそ分かるが、当時のわしは愚劣そのもので、あのまま真となっていたらどうなっていたか。歴史に残る暗君として見做され、父の名を貶めてしまっていたであろう」
苦笑していうビゼンは、当時の鬱屈など微塵も見せない。
「ゆえに、同じ選択がなされたから、それはおかしいと思うのではない。客観的にみて、我が甥の才を認めていたので、不可思議に思うのだ」
おぬしもそう思わぬか、とビゼンは問いかけてくる。
これまでのセスの振る舞いに、ケチをつけるのは難しい。ほぼ理想どおりの真となりうる。そう思う者は多かろうが、かといって、真が決めたことに反意を抱く事は出来ない。真の導きを疑うことは相応の覚悟がいる。どれだけ正論であっても、その集団の多数が是と認めるならば、導き手の選択は有効とされる。その真に逆らう事は、この共同体にいられなくなることを意味する。
内心では首を傾げている者は多かろうが、その声が表沙汰になる段階ではない。
「セドウさまは、真に選ばれた方です。凡俗とは違う眼を持っていた、という事です。ならば、そのお眼鏡に止まったショウさまもまた、凡俗では見抜けない資質を持っている、ということではないでしょうか。今はまだ、凡人にはその大きさが測れない。それだけの大器である可能性も、あると思います」
自分で言いながら、空々しく感じないよう、カクは言葉に力を込めた。
「なるほどのぅ。だが、本当にその翼は羽ばたくことがあるのか。大きすぎると扱いが難しくなる。下手に動けば、周囲はあたふたと振り回される。空に広げる前に翼に穴が空いて使い物にならなくなっていることもあろう」
「それならば、眼に見えて整った羽根を持つ者の方がわかり良い。形が明らかである方が、次にどう動くか予想出来て、安心できる、ということでしょうか」
セスは有能であろう、とは思う。だが、良識を持っているということは、その分、動きが制限される、とも言える。ふり幅には限度があるようにも思える。
「これから先は、堅実だけでは足りない、とお考えなのですか」
このまま、であるならば、セスは大過なく役目を終えるだろう。だが、もし、動乱が瑗国を襲うならば、その場合は不安となる。生真面目だけでは対応できず、時には飛躍的に動き、時には厳しい決断が要される。果たして、人のよいセスにそれが可能であろうか。
そう考えると、一敗地にまみれ、苦汁を呑み、それゆえ必要ならば厳しい決断を下すことを恐れない者が求められる。そうした者は、意外と近くにいる、とビゼンは言いたいのであろうかとカクは思った。試しに、問いかけてみた。
「西、ですか―――」
西方の動きに不穏な匂いがあるとカクは感じていた。ビゼンも同じように思ったのであろうか。それゆえに、有事に臨機応変に対応できる者がいる。ショウがその器を備えていたとしても、今はまだその才は眠っている。それよりも、軍事を押さえ、権力を増しつつある己こそが、適任ではないか。その意に賛同して、我が陣営に付く気は無いかと誘っているのだ。
どう転ぶか読めない兄弟よりも、このビゼンは分かりやすい。近い将来対処すべき問題が見えており、そのために力を蓄えようとしている。その備えを最大限活かす為の立場を必要とみなし、争う覚悟もある。どこまで登れるかはともかく、彼はこれから大きくなっていくことは明白だ。その勢いに乗り掛かることは、魅力的な提案であった。
「おぬしの目は、相当遠くを見られるとみた。どうだ、そこに立つものは、どうあるべきか」
「買いかぶり過ぎでは、ないでしょうか」 と、カクは苦笑した。
「西のきな臭さに気付き、備えを考え始めている。それだけで、十分そなたの目の良さがわかる」
「……」
「それとも、見えるのは、凍りついた土だけか」
ビゼンの眼は真剣である。断れば、今後政敵として容赦はしない。良い椅子に座ることはなく、僻地に閉じこもり、不毛な大地と格闘する人生で良いのか、と脅しているのだ。
カクは、まっすぐにビゼンの眼を見た。
*
「そういえば――――」 とカクは言った。「エイゼンさまと、偶然お会いしました」
「ほう―――」 と言って、ビゼンは戸惑った。彼にはエイゼンという息子がいる。今ここでその名を出してくる意図は何かと、眉を潜めた。
「恥ずかしいものだ。いつどこで誰に見られようとも、見栄え良くしておく様に、言いつけて置けばよかった」
「いえいえ、とんでもない。実に、素晴らしい方でした」
確かカクの二つ下で、ショウより二つ上の歳と記憶している。歳は近いが、内に秘めた物が違うとカクは感じた。セスもまた才能に溢れているが、温厚な性質からして、どうしても上品で大人しい。現状を維持して整えていくのには最適だが、その分、激変する情勢に対応していけるかどうか。
対して、態度は丁寧で理知的だが、エイゼンは何か烈しいものを秘めているように見えた。少し話しただけだが、年上のカクをうやま敬うようでいて、その価値をお推しはか量っているかのような強い視線を感じた。今は隠そうとしているが、おそらく父に似て向上心が強く、闘争心も強い。かつ、必要とあらば大事な物でも斬り捨てる強靭さもあるのだろう。敵にまわせば厄介だが、付いて行っても良いと思わせる人誑しの性質もあるように思えた。
「そう見えたか。それは、愚息にしては上出来」
そう謙遜して答えつつも、全くの不安も抱いていない。息子に対してすでに全幅の信頼を寄せているなとカクは思った。
「いえ。あの方は逸材です。歴史に名を残すことでしょう」
「それは、つまり―――?」
「もし気を悪くされたら申し訳ない。これも、貴方様が仰った、遠目の所為なのかもしれません」
「ふむ」 と唸ったあと、ビゼンは片頬を上げた。怒るかと思ったが、意外と嬉しそうである。愚息と謙遜したが、実は跡継ぎを誇らしく思っているのだ。
カクは唐突にビゼンの後継者を褒め上げた。自分の味方になれと説いている最中に、貴方の息子は有能だと誉めたのである。それは、ビゼンの代ではまださしたる事ができない、だが、息子の代では違う。そこで大きく飛躍する。その時こそ与しましょう、とカクは伝えた。
誘われて今すぐ断れば、角が立ち、先行きが閉ざされる。簡単に与すれば、扱いやすい奴だと軽視される可能性もある。難しい選択を、次世代に協力しましょうと逃げた形である。
そこで、わしを侮るかと怒れば、自分の満足のためによからぬ心を抱いていることになる。そうではなく、今後自分たちで瑗国を変えて行くのだという遠望があるならば、先々を見据え、将来の味方を得たことで良しとできるはずだ。ビゼンは自身の不遇を恨み、政権奪取を望んでいるのではない、ということになる。
「よかろう。まだ甘いところのある青二才だが、どうかよろしく導いてほしい」
器の大きさを見せたビゼンに、今後瑗の主導者はこの父子であろうと、カクは確信した。
エイゼンは優秀な臣下として、ショウを支える逸材となりうる。ビゼンの跡を継ぎ、シシンの武力を上手く使いこなしてくれれば心強い。西方との間に高き壁として立ち、国内に安寧をもたらしてくれるだろう。
ただ、支える側から外れると、彼の存在は脅威となってしまう。強い野心と行動力を秘めた彼が相手では、磐石な意思と決断力を持たないショウでは敵わない。
父ビゼンの人生が、彼の行く末を決めることだろう。ビゼンが己の苦労を伝え、耐え抜く心得を、言葉ではなく、生き方で示していてくれれば、エイゼンは磐石となる。
逆に、もしビゼンが己の不遇を恨み、その愚痴を発している所をエイゼンが見たら、良い影響は期待できない。己の未来の姿を見て、そうはなるまいとエイゼンは恐れにも似た思いを抱き、権力を得ようとするだろう。
どちらかというと、その傾向が現れていると思い、カクは不安を抱いていた。