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初投稿でっす

お手柔らかにお願いします

 「ジェーン・バーキンス、メセトナ医療団団長に任命する」

 染み付いた敬礼で答える。

 「はっ、拝命します」

 ジェーンにとって5度目の野戦病院勤務が決まった。

 今回の戦争は今まで小競り合いが続いていた隣国との全面戦争である。

 とはいえ、まだ30でしかも女の自分が団長なんて、と1人ごちる。

 上官の執務室を出て廊下を歩いていると、ヒソヒソ声が聞こえてくる。

 だいたい内容はわかっている。

 女だの若いだのコネだの。

 残念ながら全て事実である。

 生物的な性は女性、今日でちょうど30歳と3ヶ月になるわけで軍医としては比較的若手。

 しかも軍立医師学校に入るために、試験を受けるだけでなく、元軍医の父のコネも使った。

 ジェーンとしては、夢を叶え、自分の能力を最大限生かせる居場所を自分で掴み取っただけなのだが、どうも香ばしい輩は湧いてきてしまう。

 きっちり首席だし、男と同等の体力と気力を持ち合わせてるからいいだろと思うくらいには慣れた。

 女は結婚して子供を産み、家庭を守るのが一般的とされるこの国で、初の女医となったからには、女としての価値観や幸せを全て投げ打って励んできた、そういう自負がある。

 いくら精神的、肉体的に削られてもただひたすら前を向いてそこに立ち続けた。

 お陰様で、負けん気が強く、頑固と言われた少女は、苛烈で屈強な30女になった。

 今回昇進とともに大きな役職を与えられたのは、吉報だった。

 実家の父も喜ぶだろう。

 女でありながら、高等教育も受けさせ、軍医としてもてる知識を全て与えて育ててくれた父だ。

 ジェーンの資質を信じて、常に協力を惜しまなかった父だ。

 見慣れた自室の前に立つ。

 ひと月後の出立のために身辺を整理しなければならない。

 宿舎の自室を少し片付け、自分の仕事を引き継ぎ、荷造りすると同時に実家に挨拶することになる。

 そこにあるのは、疲労感や劣等感ではなく、ある種の達成感と使命感だった。

 そしてひと月後、前線の町メセトナに1人の女医がいた。

 「ジェーン・バーキンスだ。この基地の医療団団長に任命された。よろしく頼む。」

 肌は白いが瞳はグレーで地味な外見、長い黒髪をうなじできつく束ね、白衣と軍服に身を包んだ女ージェーン・バーキンスはそう言った。

 これは長い戦争の顛末と1人の女の生き様を綴ったひとつの物語である。


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