3、王都マドリア
王都マドリア。豪華絢爛たる教会の大聖堂や演劇場や闘技場もある。聖王国といっても、商業活動が活発であり、人やモノが集まっている活気にあふれた大都会だ。王侯貴族の邸宅あり、お抱え芸術家たちの豪邸ありと娯楽を積極的に楽しむ女神ルウローラへの信仰もあって、聖王国は賑やかだった。
馬車が大きな邸宅の前で足を止める。
「ここがおじいちゃんの家……」
少年は目をキラキラさせながら、家を見た。祖父・サーカディアン。現在も現役で働いている女王の臣下と聞いている。
父・サディアスの実父に当たる祖父だ。
父と母は田舎の村に残ったので、エリックは一人この王都に引っ越すことになった。メイドのマーニャと使用人のウィルプスがエリックを王都にまで案内することになっている。
「坊ちゃま、荷物はお任せくださいませ。さて、マーニャよ。エリック様を屋敷にお連れせよ」
ウィルプスがそう言うと、マーニャがこくりとうなずいた。年は十八歳くらいの愛嬌のある娘だ。
「さあさあ、坊ちゃま。こちらがお屋敷でございますよ」
マーニャに先導される形でエリックは邸内に足を踏み入れた。邸内には庭園やテラスがあり、使用人たちがのんびりと働いている。
「これはこれは。坊ちゃま、よくぞおいでくださいました」
エリックを見つけた白髭の男性がうやうやしく、お辞儀をする。執事服をまとった男性はこの家の執事だろう。
「大旦那様もお待ちでございます。どうぞこちらへ」
エリックはうなずくと、執事の後をついていった。
魔術師サーカディアン・ストラトスは六十歳になるが、背筋もピンとしており、老人と言うには早すぎるくらいだ。
サーカディアンは自らの書斎の椅子に座りながら、孫であるエリックと対面していた。
「エリックか。大きくなったな」
「お久しぶりです。お爺様」
エリックの言葉にサーカディアンは嬉しそうに目を細めた。孫と会うのは一年ぶりになる。サーカディアンは複数の役職を掛け持ちしている王国の重鎮だ。それ故に孫たちと会う機会も少ない。
「魔法学園への入学か。エリックはもうそんな年になったのだな。良かろう。わしの邸宅から通うが良い。さて、この後、大臣たちとの会合があってな。急ぎ、行かねばならんのだ。入学式は明日だったか?」
「はい、そうです」
「分かった。わしも保護者として出席しよう。さて……そうだな。せっかくだから王都を」
「お爺様。サディアス叔父様のところの子が来ているなんて、何でもっと早く知らせてくれなかったのよ!」
甲高いキンキン声。扉を開け放ったのは緑髪の美少女だった。