髪型革命ゲームpart2
それにしても店内は綺麗だ。
まだ出来て数年しか経ってない。
それなのに 日本一の美容室と言われる様になったなんて凄いとしか言えない。
中田さんとは前の独立する前からの知り合いだった。
まだ雑誌ってものが息をしていて
そこでカリスマだった人で憧れていた。
こうやって独立して 日本一の美容室の社長になっても尚
自分が前線に立ち続けてる事が凄い。
もし自分なら経営に回り他の事に手を出すんだろうなって思う。
そうゆうのって大体失敗するんだけど 自分なら大丈夫ってタカをくくって
結局失敗するんだろうなって。
中田さんを見ると本気なのが伝わる。
アクションなのかもしれないけど両手で髪の毛を持ち上げ
全体を見ながら バランス良く切っていく。
ワイルドな見た目から想像できない繊細さ
このギャップに心打たれるんだろうなって
モテ道のページに新たな一ページが加わった。
「へぇ!なるほどね!俺もそれ良く聞く!あ!あと知ってる〜?」
「え?そうなんですか?!私もそれは聞いた事なかったです!!!」
何より話術だ。
どんな事でも知ってる。
コミュ障で簡単に心を開かないはずの翠が
ずっと喋っている。
美容室に限った話ではないが
こうゆう有名な場所って クラスで5番目くらいに
イケてる奴が行くってイメージがある。
承認欲求と自分の実力が見合わないから
どこか空回りしてしまう人が
居場所を求めて 有名な場所に辿り着くのだ。
クラスだけじゃないよ もっと世界は広いんだよって
教えてくれる。
なぜか 容姿がずっと恵まれてる人って
家庭環境がよほど良くない限り
ヤンキーに走ったり 容姿に胡座をかいてたせいか
一度のいじめなどで 心が折れて 静かになったいたりする。
今の アイドルなんかにも多いよね。
いじめられてたアピール。大小あるけど 本当のいじめを経験した人からしたら
腹が立つだろうなって。
「はい!カット終わり!!!」
そんな事を考えていたら あっという間にカットが終わっていた。
え?もう?!ってなるくらい早く感じた。
時間が立つことが体感で早く感じることが多い人は老けにくい
だから 美容師はいつまで経っても若々しいんだろうなって思った。
「今日さ、メイクもしてあげようか??」
「「いいんですか?!」」
まさかの言葉で2人してハモった。
「全然いいよ!むしろここまで可愛くなるなら最後までやりたくなるじゃん!
むしろ 美容室って 文字どうり美容室だからね。髪だけじゃないんだぜ〜?」
その目には自信と誇りが溢れている。
「ぜひよろしくお願いします!!!!!」
なんだか俺も嬉しくなった。
翠はなんだか キョットンとしている。
「え?いいのかな?」
さっきまでノリノリだった翠が心配そうに 俺に聞く。
「大丈夫だよ!!!やってもらおうぜ!!!!タダでやってもらえるなら最高じゃん!!!」
そんなこと小声で話していたら 中田さんが笑い始めた。
「あはは 聞こえてるよ お二人さん!」
急に申し訳なくなった。
「でもね、大丈夫。俺の仕事は人を綺麗にすること。
でもそれだけじゃないんだぜ?」
一息入れて中田さんが話す。
「俺の生き甲斐も人を綺麗にする事なんだよ!
人を綺麗にして 自信がつく それでその人の人生が少しでも
いいものになったら最高でしょ??
大切な時に俺に会いに来てくれる。
その度俺らは幸せを少しずつ分けてもらえる。
こんな幸せな事なんて無いよ!!!
葵ちゃんも 翠ちゃんが変わってくれたら 嬉しいでしょ?」
はい。と少し頷く。
俺らの同盟は 翠が可愛くなって
翠は 蒼と付き合う そのこどで 俺は学校で 蒼が脱落して 一番の モテ男になる
ってのが 目的だった。でも確かに 少しずつだけど 変わって行く翠を見ていて楽しかった。
「ただ〜し!条件がある!!!」
まさかの条件を突きつけて来た。
「条件??」
少し意地悪そうに中田さんが笑う。
「完成形まで 葵ちゃんは 見ちゃダメ!バックルーム入れてあげるからそこで
待ってて!」
今まで可愛くする過程を見てただけあって 少し不服である。
「え?なんでですか??」
翠も気になってるようだ。
「ビックリさせたいから!翠ちゃ〜んは 確実に可愛くなる。
というか 絶対に可愛くする。その自信が出来た!だから完成まで待ってて!!」
その目には力が 入っていた。
その目を見て翠も
「楽しみにしてろおお!惚れんなよ!!!」
と憎たらしい顔をした。
「ば〜か!!!!誰が お前みたいなブスに惚れるかよ!!!!!
このコミュ障おばけ!!!!!」
我ながら 大人気ない 女の子を傷つけてしまう言葉をこんなにも容易く放ってしまえる
小学生の様な精神年齢に一瞬嫌気がさした。
「ブスで悪かったンゴねぇ。ケタケタケタ」
変な笑い方をする翠に何故がホッとしていた。
本当に強い子だな。なんて感心を超えて尊敬までした。
「こら!!女の子に ブスとか言わないの。まぁ 二人の仲が良い証拠か!!!ラブラブか!!」
中田さんが茶化すと 二人して
「「そんなんじゃ無いです!!!」」
と慌てふてめいた。
「まぁ 大丈夫!葵ちゃんがいない間に 口説いたりするわけじゃ無いから!!
そんな事したこうよ!!!こう!!!」
両手首を2、3回ぶつけるアクションをする中田さん。
「いや、そんな心配してないすっから!はい!!!楽しみにしてますね!!1」
と、バックルームへ向かった。
「興奮しすぎて変な妄想すんなよ〜?」
背中で翠の冗談を受けると 今度は
「あぁ、せいぜい楽しみにしてるよ」
と大人ぶってバックルームへ入った。
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・
「いや!!!見たい!!!!可愛くなるとこを見たい!!!
いやさ 普通さお約束で メイクしたら一気に可愛くなるとかじゃん?!
でも既に片鱗見えてるもん!!!!マジか!!!!!
いやさ!!クソみたいじゃんかそんなの!!!!!!!!!!!!
アァァァァァ。なんだこの感情!!!!!いや落ち着け。
興味は無い。全身整形したと思え!
ふふふふ・・・興味がなくなって来ただろ?俺自身よ。
可愛くなった美女の元に現れる 昔の同級生
大体はみんな半笑いで去っていくだろ?
俺はそこのポジションだ。いや そんな嫌な役じゃ無いけど
感情はそいつらと同じ。そうであるべきなんだ。っしゃ!!!!!」
振り向くと カップ麺を食べるアシスタントさんが見ていた。
しばらくすると麺をすすりながら そのまま ゆっくりと去って行こうとしていた。
「チョ〜!!!!違います 違いますからね!!!!」
その言葉を聞くともう一度振り返り
軽くウィンクをされた。
「だから!!!!ちがいますからね!!!!!」
すると スープをぐっと飲み干し
「葵くん 頑張れ」
と肩を叩き 歯ブラシを手にバックルームから出て行った。
って!!!というか なぜ俺がこんなに感情を揺さぶられなければいけないのだッ?!
俺にあるのは 打倒 橋立蒼と No.1を手にしたい欲だけだ。
それ以下は 俺の展望に支障をきたすだけだ。あ〜よく無いよく無い。
この感情が一過性のものと俺はよく知っている。
少し良くしてあげたから 見返りに 俺を好きになってもらって
それを良いことに 体の関係に持ち込む それをクリアしたら用済みだ。
あとは どれだけ自分に被害が及びにくくするように 相手を悪くしていく算段を立てる。
がしかし、それは可愛くて人気がある子にだけに背負っても良いリスクであって
決して日陰に佇む 翠なんかに使って良いカードではぬぁい!!!
自尊心が満たされる訳でもなければ 泊も付かない 信頼だけが失われる悪手である。
「え?!葵くん顔とかで選ばないんだね!素敵!!」と好感度上げるのも有りだが
それには時間が掛かる。昔 「僕は一般の方と何年も付き合ってます!!!」と
公言し、好感度が爆上げした俳優が 結果モデルと結婚した時の バッシングたるや・・・
所詮クラスや学校なんて 偏差値で区分されているが 世の中の縮尺である。
世の中でバッシングされることは クラスでも起きるに決まってる。
て、事で俺は大丈夫!!!ははっ!僕◯ッキー!!
「葵ちゃ〜ん出来たよ!!」
そんな下心との戦いを終えると 丁度完成したらしい。
心構えは完璧である。俺は屈しないと 翠の元へ向かった。
「マジか・・・・」
そこには想像を超える変貌を遂げた翠が居た。
「どうかな?えへへ」
くるっと回り 顎をクイッとあげドヤ顔をした。
「えっと・・・うん。良いと思うよ。」
なんて言って良いか分からなかった。
「およ。なんか反応薄いな?私的には だいぶ良くなったと思うけど・・・・。」
だいぶどころじゃない。本当に本当に 良くなった。
さっきまでしていた決意すら容易く崩壊した。
「葵ちゃ〜ん 素直じゃ無いじゃ無いなぁ このこの!!」
中田さんが茶化してくるが なんて言って良いか分からない。
気さくに 軽々しく出るお世辞のような言葉すら湧いてこないし
そんな言葉で片付けたく無いんだ。
「いや・・・・感動したというか なんというか・・・・中田さん凄いなぁと思って!!」
結局 翠を直接褒める事が どこか恥ずかしくて なんだか悔しくて
中田さんを賛美することに逃げた。
「当たり前っだ!!!こっちはプロだからな!!!
でも・・・・・」
一瞬中田さんが肩の力を抜いた。
「翠ちゃん本人を褒めてあげなきゃ。一番近くで見てくれてる人に
褒められる事ほど 自信がつく事なんて 無いんだぜ??」
中田さんは 俺の後ろに回り 翠の目の前へ背中を押した。
目が合って 心臓が破裂するくらい 鼓動が早くなった。
翠は笑い 首を傾げる。自信がない女が出来る仕草じゃない。
きっともう自信は付いてるはずだ。だからわざわざ 俺が言わなくても・・・・
その瞬間中田さんに肩をポンッと叩かれ
中田さんは後ろを向いた。そんな気なんて遣わなくて良いのに。
「うん。とても可愛いと思う。」
そうすると翠は 大きく笑った。
「ありがとうッ!!!!」
目尻がグッと下がり 顔が溶けてしまいそうな笑顔
アイスクリームみたいに甘くて思わず手を伸ばしまいそうな気持ちになった。
「まぁ 見た目だけ良くてもダメだからな!!!!
大切なのは な〜か〜みだからな!!!」
そんな気持ちを悟られないようにグッと押し殺した。
「はい!!!隊長!!!!任せてください!!!!」
左手で敬礼をした翠。
「ばかやろ!!!敬礼は 右手だ!!1侮辱行為だぞ?それ。」
いつもじゃ気づかないどうでも良い一挙手一投足でさえ敏感に反応してしまう。
時間がゆっくり動いていて この瞬間に空間にあるものを すべて真空パックしたい気分だった。
「細かい 隊長様だなぁ!!!じゃあこっち!!!」
右手で敬礼をして 無邪気に笑った。
「うん!!!それでよし!!!!」
なんだか笑ってしまった。
「ほらほら〜お二人さん〜!イチャイチャするのは あっちでやってね〜営業中だよ〜?」
と外を指差した。
「「いや そんなんじゃないですから!!!!」」
またハモった。その瞬間 中田さんは 眉毛をあげて
はいはいと言いたげそうにして 腕を組んだ。
「もう二人と付き合っちゃえば良いじゃん!!!!」
爆弾を軍曹が投下してきた。
「「いやいやいや」」
俺は翠と顔を合わせ
「俺らそんなんじゃないもんな!!!」
と言った。
「はい。私好きな人がいるんで。」
まっすぐ中田さんを見つめて はっきり喋る翠を見て
分かりきってた事なのに 少し心臓に冷たい風が吹いた。
「お!そうなのか!だとしたら 葵ちゃんは優しいな!ここまで根掘り葉掘りやってくれて!」
キュッと喉にある唾液を 声が裏返らない様に 乾いた喉に流し込んだ。
「はい!!俺ら 同盟なんで!!!」
翠の肩に 右肘を置き 左手で チャリで来た! のポーズをした。
「チャラ〜い!!!葵くん顔はいいのに こんなんなんですよ!!!」
と翠は笑う。
別にチャラくしたくて チャラついてる訳じゃない。
そんな事を言ったら 世の中の人にどれだけバッシングされるか分からないけど
自分を取り繕ってるからなのか どうやっても人に踏み込めない。
だけらいつも 保険を掛けて 自分から離れていちゃうだけなんだ。
「まぁ、今まで 日陰で暮らしてた 俺様と お前とじゃ 住んでた世界が違うからな!
これから お前も こっちの世界の住人にしてやっからな!!!!」
精一杯の強がりをした。
「うん!!葵ちゃん頑張れよ!!!というか 葵ちゃん 美容師向いたるかもね!
いつでも雇ってやるからな!!!」
ガハハと笑うと それじゃ!と手を振り
中田さんは次のお客さんの元へ歩いて行った。
「ありがとう 葵くん。割と感謝してるかも。」
割との後に 〜かも という予防線の連打に 思わずたじろぐ。
「おう。ほんじゃ 飯でも食って帰るか。」
「うん!!!!」
お会計を済ませエレベーターに乗り込む。
このエレベーターがまさか 地獄へと繋がる ヘルゲートとも知らずに・・・・・
「おい!!!!」
「え?なに??」
「いや ここ一階だからな?」
「あれ?そうだっけ?」
「お前前回の話覚えてるか?外から見えてる 言ってただろ?
お前身長何メートルあんだよ。」
「155」
「んん!!!だとしたら一階が地下に埋まってるパターンのやーつ!!!」
「あははたまにあるよねそうゆうコンビニとか!!!!コンビニでご飯買う?」
「いや!!!!!カフェくらい行こうよ!そこ!!!話が進まない!!!」
「え?話が進まないってなんの話?なんか 進めなきゃいけない話あったけ??」
「こいつ・・・・しらばっくれてやがる・・・・・」
「次回!美女になった 翠大勝利!
希望の未来へ レディ・ゴーッ!!」
「それ Gガンダムな・・・・?」
「お、お主 さては おっさんだな?」
「うるせー!!!!ほら行くぞ!!!!
女の子が レディ ゴーッ!!ってな!!!!」
「さんむ。暖かいスープ飲むことに決めたわ。」
「おおおおおお!!!お前が先な?!
いやお前が先な?!」




