スイッチオン 恋愛ゲーム。
チャイムが鳴り 従業が終わる。
これから 昼休みだ。
中学の時には無かった 学食に
行ってみたいが 学年問わず 集まる場所ってのは
ちょっと怖かったりもする。
葵は コンビニで 焼肉弁当を買っていた。
「葵〜?一緒にご飯食べようぜ!!」
拓人が 机に駆け寄る。
「そうだね!そこら辺で食べよ!」
そうなると 弁当組は ワラワラ 俺も 俺もと
集まる あっという間に 10人くらいのグループが
出来上がった。
くだらない話や いまやってるハマってる事
他愛もない事を話す。なんて事の無い日常って奴だ。
ふと、楠瀬に目をやると 奴は一人で
ご飯を食べていた。誘われていたのに
コミュ障なのかは 分からないが
あっ... あっ... とだけ言っていた。
アイツは...バカかよ!!と思いながら
席から立ち上がり 楠瀬の席に向かっていた。
「お前 一人か!一緒に食べようぜ!」
周りは 不思議そうな目で見つめる。
男子のグループに 女子を混ぜるなんて
こんな思春期爆走中の 高校一年生
ましてや 初日からだとすると 変な奴だと
思われるだろう。
が、しかし 意外にも このクラスの奴らは
いい奴か バカなのか分からないが
快く受け入れ入れた。
「お!葵 やっさしー!!」
「こっちこいよー!楠瀬さんだっけ!」
なんだか 中学とは違う 雰囲気を感じた。
みんな こうやって大人になっていくのかな。
なんて ちょっと 嬉しくて 笑みがこぼれた。
「ほら みんな言ってるし 行こうぜ!」
恥ずかしそうにしてる 楠瀬。
長ったらしい前髪で どこをみてるか分からないが
小さく頷いた。
「えっ!!いいなー!私も一緒に食べていい??」
「お!いいぜ!!いいぜ!!」
「ねー!じゃあ 席合体しようよ!!」
「超いいクラスじゃん!ウケる!笑笑」
和気藹々とするクラス。
あからさまに 一番地味な楠瀬を
迎え入れる事によって
このクラスの最初の緊張感が 消えた気がする。
気付いたら 20人くらいのグループになっていた。
「葵君って 中学でもそんな感じだったのー?」
「そんな感じって?」
「みんなの輪を作るというか なんかクラスの中心みたいな感じ?」
抽象的過ぎるが 分かり易い説明ありがとうございます。
「いや なんも考えてないよ!俺アホだからさ!笑」
少しとぼけた表情をしながら 自分の頭をポンと叩く。無意識ではあるが 初日から いいポジションに座れたと思った。
「楠瀬さん こんにちは!私 和葉!よろしくね!」
一番派手そうな顔をしてる 美鈴和葉である。
ぱっと見一番怖そうだ。
「あ...ど..も...よよよ...よろしぐです...」
吃る 楠瀬。
「よろしぐですってなに笑笑!訛ってる?笑笑」
少しトゲがあるが 積極的に 話しかける
和葉の好感度が少し上がった。
しかし 下を向く 楠瀬。
少しもどかしい気持ちになった。
自信が無いのかな?
理解しないでも無いけど
このチャンスを掴まないのは バカなのか?って
思ってしまう。気まずくなる前に 話の主導権を
葵は握った。
「そんな事よりさ!みんなで 連絡先交換しようよ!グループみんなで 作ろうぜ!!」
「ありよりのあり!」
みんなが 一斉にスマートフォンを取り出し
各々交換して行った。その隙に楠瀬に小声で話しかける。
「お前コミュ障か!少しは 気の利いた笑顔でも作っとけよ!」
「いやいやいや 無理無理無理!!!!!!!
大勢と話した事無いの!!!!!
何話したらいいかなんて分からないし!!!」
「いや 待て!笑俺には普通に話せてるじゃんか!」
「お前は 人間としてカウントして無い!
人形に話しかけてるみたいなもの!」
「なんでやねん!!あほか!!人間じゃ!!」
少しずつ声が大きくなっていく。
途中から みんなも こっちに注目していたようだ。
「なんかさ 二人とも仲良さそうだね!」
「「仲良くない!!!!!!」」
同時に 声が出た。その瞬間
起こる笑い声。
「変なの!!笑笑あはあはは笑笑!」
こんな話をしてる間に 時間が経ち
もうすぐ休み時間が終わる 音楽が流れる。
「ごちそうさまでした!!」
席を片付けたりをしたり 自分の席に戻ったり
トイレに行ったり 各々動き始める。
「おい楠瀬!ちょっと...いいか?」
「お!!夫婦ごっこか??」
拓人が茶化す!!
「いや!そんなじゃねぇよ!笑
ちょっと シャーペン貸してるからさ!
早く返せ的なサムシングゥー!的な??」
「あーね笑笑!」
なんの疑いも無く 拓人は 返事をした。
そりゃそうだ。別に可愛く無い
楠瀬と 恋愛関係だなんて 誰も思わないだろう。
客観的に見てそうだ。
「なに??」
楠瀬が 少し不安そうな目で見つめる
何かに勘付いてる様な顔である。
席に戻りあの話をする。
「いや 言いにくいんだけどさ...
蒼くんさ 彼女居るみたいなんだよ」
隠しても無駄だ。どうせ無理だろう
初日から 諦めるって 高校生活を
楽しませるってのも優しさだと思う。
「だから...??」
「え...??」
思わぬ返答が返ってきた。
「彼女が居るなんて 当たり前じゃん
そもそも私が 蒼くんと どうのこうのって
なるのが 不可能な事くらい知ってる。
あんなカッコいい人が 私に靡かない事くらい
産まれた時から いや お腹の中に居るときから
含めると16年知ってる。私の身の程は
自分が一番知ってるし。
私は ちょっとでも 蒼くんの側に居たいだけで
そんな 付き合うとか 彼女になろうかなんて
思ってない。だから 彼女が居ても傷付かないし
それを 気まずそうに言われても困るし
てか なんなの!やめてよ!変なの。
もっと深刻な話かと思った 安心したー」
早口言葉で ケロッと話す 楠瀬が居た。
「プッ...あはははは!!お前バカだな!!
あはははは!!!!!!」
声が出るほど笑ってしまった。
みんなも 何事か!!ってな感じで
こちらを見てるが 気にもならなかった。
「え?なになに!やめてよ!!恥ずかしいから!」
「じゃあ...勝とうぜ!!!」
「えっ?」
「そんな自分を卑下すんなよ!!
そんな気持ちなら 必ず勝とうぜ!
奪い取ってやろうぜ!!面白いわ!お前!」
彼女が居たら諦めるなんて 普通だと思ってた。
でも ここまで楠瀬は 単純に人の事を好きでいれる。そんな 自分にとっての 初めての価値観に触れ
なんとか してあげたいって 思った。
決めた。楠瀬を蒼にとって完璧な女に仕上げて
完璧なシチュエーションを用意して
略奪させる。恋愛ゲームにスイッチを入れた。




