Prelude
今ぼくは、確実に引き金を引いている。
真っ直ぐに、狙いを定めて、愚直に、頭を。
どれだけ体中の筋肉を奮い立たせても、反動は芯に響く。
あるいは臓、あるいは節、あるいは筋。
身体は悲鳴を上げている。
でもらぼくの意志はどんな力でもぶれない。
手に握った銃は魂の咆哮を飛ばした。
魂を受けて飛んでいる弾はあいつの側頭部に向かっている。
父を殺し、真の父を名乗るあいつに向かって、ぼくの魂が。
反動が強すぎた。
肩の骨が外れた音がする。
右肩が痛い。
痛すぎてどこが痛いのか判らない。
でも、これでいい。
これじゃなくてはならないとも思った。
もう一発のための引き金を引いた。
まだ最初の弾は宙を貫き続けている。
両腕が使い物にならない。
「デザートイーグル。その一発の強さに相応しい反動は女子供には耐えられない。」
これでいい。
その通りだ。
その通りだと気付けたからこそ、これでいい。
二つの弾丸が、あいつを貫こうとする。
でももう、目が見えない。
腕が痛い。
肩が痛い。
体が痛い。
もう自分が自分でないかもしれない。
これで終わるんだ。
遠くで、…これはライフル、アサルトライフルの音がした。
間違いなく、吐き出された弾はこっちに向かっている。
目玉はあるけど瞳孔が存在してないかもしれない、それくらいに目の前が暗い。
あのときみたいに、真っ暗だ。
これで終わるんだ。
これで、
終わるんだ。