冒険者ギルド 5
投稿いたします。
宜しくお願いします。
「おい!本部長自らクラス試験するらしいぞ!」
「何? 一体あいつら何者だあ?」
「ん? 全員女か?」
「いや違うらしい、あの小さいのが一人ガキらしいぜ。」
「とにかく本部に来てる奴にも教えてやらんとな! こんな面白そうな余興そうそうねえぞ!」
たまたま練習に来ていた他の冒険者や観客席に居た、何人かが、僕達のクラス試験に興味を持った様で、少し周りが騒がしくなってきていた。
「まあ、外野はほっといて、早速始めようか。」
パラディオ本部長は視線をリーシェンに固定したまま、口端を上げて不気味に笑っていた。
この人が、母様が言っていた人か。
確か母様の元部下で剣術とかも色々教えていたって聞いたけど、そうとうに強そうだと言うことは解る。
一方リーシェンは軽装の防具以外、特に武器を持たずに本部長と相対していた。
「レン様、武器の仕様はどういたしましょうか?」
リーシェンが尋ねて来た。
「そうだね、対人戦闘のSクラス相当でも大丈夫じゃないかな?」
僕がパラディオ本部長の雰囲気から察した戦闘基準をリーシェンに伝えると小さく頷く。
それと同時にリーシェンは両の掌を胸の前で合わせると、魔力をその手に集中させ始める。
すると、手の周りが一瞬光出したかと思うと、ゆっくりと合わせていた掌を離しはじめた。
「ほー、次元収納の魔法も使えるんですか?」
パラディオ本部長が、リーシェンの魔法にいち早く反応する。
そのリーシェンの掌から金属の棒の様な物が引き出されて行く。
それは手の長さを超え、どんどんと伸ばして行き、最後の剣先が手から取り出されると、リーシェンの身長よりも1.5倍はありそうな槍がその姿を現していた。
青みがかった銀色の長柄の先端に、白銀に輝く刃渡りが人の顔程もあるとても美しい長槍だった。
「え? え! 次元収納って、私始めて見ました! 次元収納の使い手って本当にいたんですね!」
パルワさんが、リーシェンの次元収納魔法を使った事を物凄く驚いていた。
あれ?次元収納ってそんなに珍しいものなのかな?
「そんなに珍しいですか?」
「レン君!何言ってるんですか?! 次元収納を使えるだけで商人から引く手数多ですし、国からも国軍の先鋭魔導師として地位と名誉と莫大なお金を貰えるくらいなんですよ! はあ、はあ、」
そんな息切らしてまで説明するほどの事なのか?
「ちなみに僕も使えるし、母様や父様も使える。カーナも容量は少なめだけど使えるからそんなに珍しいとは思って無かったんですけど?」
パルワさんにそう言ったら、目を丸くして何か人でないものを見るような目で僕を睨んで来ていた。
これはあまり人前で出し入れしない方が良いかもしれないな。
「パルワ! そろそろ始めるぞ! 開始の合図を頼む。」
心此処に非ずの状態のパルワさんに、パラディオ本部長が開始の合図の催促をしてきた。
パルワさんはその声で我にかえって冷静さを少し取り戻したようだ。
「こほん、すみません。少々取り乱しました。それでは、これよりリーシェンさんのクラス試験を実施します。」
「おおおおお!!」
え?何この歓声?!
僕は訓練場に響き渡る声にびっくりして辺りを見回すと、いつのまにか訓練場に設けられた観客席に先ほどよりも明らかに多いい人が集まって声援を送っていた。
「なんでこんなに?」
僕が疑問に思っていると、パルワさんが僕に説明してくれた。
「しかたありませんよ。普通クラス試験に本部長自らなんて前代未聞ですからね。余興の少ない冒険者達にとっては良い見世物なんですよ。」
ん~ん、何かリーシェンを見世物にして面白がっているのが少し嫌だな。
そんな風に思っていたら顔に出ていたのかな?
リーシェンが大丈夫だと頷いてくれた。
「それでは、私の合図で開始致します。双方宜しいですか?」
「はい。」「おー。」
両者がそれぞれの武器を構え、開始の合図を待った。
読んでいただき有り難うございます。




