ファルシアの決意 2
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「母様、修業って、シアがですか??」
「そうよ? 修行の旅よ、冒険よ! 何かおかしい?」
「いや! シアは姫様ですよ? 簡単に修行の旅と言われても、出来るわけないですよね?」
「あらそう? やろうと思えば出来るわよ。」
簡単に母様は言われるけど、一国の王女が簡単に冒険の旅とか、修業に行ってきますとか無理でしょ?
リーシェンもカーナも難しい顔して僕と同意見だと頷いているしね。
「あんた達、ファルシア姫の専属近衛騎士でしょ? どんな状況でも姫を守る自信は無いの?」
「いえ、命に換えても守る自信はあります! けど、普通その前に危険を回避するのも近衛の仕事じゃないんですか?」
「うっ、い、痛いとこついてくるわね。」
僕がもっともな事を言ったので言葉の勢いが無くなり考え込んでしまう母様。
「で、でもほら、若いうちにはお金を払ってでも冒険しなさい!って云う言葉もあるじゃない?」
う~ん、ちょっと違う気もするけど。
ただ、僕自身もシアの加護の力の制御が出来れば自信にも繋がって良いとは思うんだよね。
シアは今までに独学と、一時エルフの里で修練を積んで、常時発動している力の出力をかなり抑えれるまでになってはいるんだ。
後は経験が必要だろうし、何か他に良い手があるかも知れないし、そのために旅に出るって云うのは悪くはないんだけど。
「ただ、旅に出ると言っても各街には検問があるから、その都度、ファルシア姫だと言って通る訳にはいかないでしょ? そんな事したら行く先々で大騒ぎになりますよ? それに姫が単独で城外に出た事が判れば、引っ切りなしに刺客が放たれると思いますよ?」
「そうね、う~ん、だとしたらファルシア姫様は城に居ると思わせておけば、城外に出ても危険は少なくなるはずじゃない?」
それはそうなんだけど、何か良い案でもあるのかな?
「その辺りは大丈夫じゃない? もともとファルシア姫は引きこもりで公の場に出たのは、今回が初めてと言っても良いくらいなのよ? また病気が再発して引きこもったと言って、姿を隠せば旅に出ても解らないわよ。」
「シアはそれで良いの? せっかく頑張ってみんなの前に出て来れたのに、また姿を隠せば色々と言ってくる人間もいると思うけど?」
頑張るというシアの気持ちは尊重したいけど、それでまた嫌な思いをするのも僕としては良いとは言えないんだよな。
「私は、もう大丈夫です。前の私なら冒険をするなんて考えもしなかったと思います。でも家族以外で私を恐れないでいてくれる、システィーヌ様を始めリーシェンさんやカーナさんが居て、そして何よりもレン様が一緒にいてくれるんですもの何も怖い事などありません。是非、私を外に連れて行って下さい!」
シアの清々しい笑みのある顔からは決意を感じる。
こんな良い表情をするシアに、駄目とは言えないだろう。
「判った。それなら僕達はシアと一緒に行くまでだよ。目標は自分の事を守れるだけの最低限の体術と武術、そしてシアの加護の力の完全制御! これが出来ればどんな国とだって対等以上に渡り合えるフォレスタール王国の重要な力になるはずだからね。そうすればシアを必要ないなんて考える者は確実に少なくなるはずだよ。」
「はい!頑張ります!」
良い返事をして満面の笑顔になるシア。
「そうですか、では私もシアが旅に出る準備をしなくてはいけませんね。」
修練場に姿を現したのは、シアの母様、王妃ルエナ様だった。
後で聞いた話だと、かなり前から母様とお妃様とでシアの将来を考えて今回の旅に出す事を決めていたそうだ。
しかし、旅に出ると簡単に言っても色々と考えなきゃいけない事があるからなあ。
「まず、名前とかどうするんです? まさか堂々とファルシア・ラル・フォレスタールなんて書かないですよね? 冒険とか旅とかするには、各街への出入りに身分証明を提示する必要があるんですよ? その身分証を作成する時に虚偽の報告をする事は規則違反になるのでは?」
僕はまず身分証明をどうするかを考えた。
この世界では、国境の行き来の時に身分証の提示が必要なのは当たり前の上、各街が自己防衛の為城塞を築いている事が多い為、街に入る時点でも身分証の提示が必要になるのだ。
読んでいただき有り難うございます。




