貴族の陰謀 2
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「しかしじゃ、今日のブロスフォードの剣姫と王家の話し合いは注意せねばならぬが、何か判った事はあるのか?」
ジルデバル辺境伯は、ゴルード伯爵に尋ねる。
「はい、内容については皆目見当もつきませんでした。 給仕に見せかけた密偵を忍ばせようとしたのですが、あの二人のメイドに気付かれまして、失敗したそうです。」
特に悪びれもせず答えるゴルード伯爵。
「その様子では、特に足の残る様なまねはしておらんようじゃが気をつけろ。」
「はい、その辺はお任せ下さい。ただあの戦闘メイドは何者です? 私の自慢の密偵がいとも簡単に見破られてしまいましたが。」
「あれは、ブロスフォードの子飼いの者じゃ。わしも手に入れようと画策するが取っ掛かりさえなくての、どうもあのシスティーヌ嬢の息子の専属らしいわ。」
「おお、あの男か女か判別がつかん様な者ですな?」
「左様、あの鬼と恐れられるシスティーヌ嬢も子供には甘かったようじゃて。あの様な化け物じみたメイドを二人も専属につけるとは、何を考えているやら。」
両手を横に拡げ、首を横に振りながら大きな溜息をつくジルデバル辺境伯だった。
「ともかくじゃ、話の内容は掴めんかったが、これ以上動くのは控えた方が良いようじゃの。」
ジルデバル辺境伯の言葉に二人は頷く。
「それでは、兼ねてよりの計画の方を進めるという事でよろしいですかな?」
「ゴルード伯爵、宜しく頼むぞ。クデブーラ長官にはボルドール候爵一派の出方の監視を願えますかな。」
「お任せ下さい、ジルデバル様。」
三人は、計画が成功するよう願いを込めるように、葡萄酒の入るグラスを高らかと上げた。
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一方、そのボルドール候爵の館にも、幾人かの貴族達が集まって会合を開いていた。
「ボルドール候爵様、ジルデバル辺境伯が動く気配があるとの報告が上がっております。」
30才台くらいのまだ若い貴族の一人がテーブルの上座に座るボルドール候爵に向けて、直立の姿勢で報告をしていた。
「ようやく動きよるか。時間が掛かったの? わしはもう王座を狙うのは諦めたのかと思っとったわ。ガッハッハ!!」
大仰に高笑いをするボルドール候爵に周囲の貴族達も吊られて笑い出す。
「本当に、ジルデバル辺境伯の慎重過ぎる性格にはほとほと困ったものでありますな。」
先ほどとは違う若い貴族が呼応し、ジルデバルの事を小馬鹿にする。
この二人もそうだが、体つきが大きく服の上からでも解るほどに胸板が厚く、それだけで体を鍛えている事が解る。
その筆頭が上座に座る、ボルドール候爵だ。
彼らは、軍事に携わる職務につく武闘派であり、ジルデバル辺境伯と権力を争う最大派閥であった。
「まずは、ジルデバルのお手並み拝見としよう。我等は当分高見の見物と洒落こもうではないか。」
「さすがは、ボルドール候爵様、辺境の山猿共とは格が違いますな。」
「当たり前だ! 我がボルドール家はフォレスタール王国に仕える最古の貴族ぞ。この国を影から支えて来たのはわしらだ! 新参者のジルデバルと比べる方が間違っておるよ。」
そう語るボルドール候爵の顔は冷静だが、武人特有の覇気を周囲に放ち威圧していた。
「ジルデバル一派には当分好き勝手にさせておく。我等は王に味方するふりをしながら成り行きを見極める。そして上手くジルデバルが王を退かせたら、国敵として我等が討伐する!」
「ハッ!!」
ボルドールの勢いある言葉に吊られ周囲の若い貴族達は一斉に立ち上がると、ボルドール候爵に向け最敬礼をした。
それぞれの思惑が動き出す夜であった。
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