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目覚め2




復習するようにゆっくりと現状を確認していると、目の前に母である、システィーの顔が間近に迫っていることにようやくと気づく。


「レンちゃんさっきから黙っているけど何か気になることでもあった?」


心配そうに見つめて来るシスティーヌに、ドキリとしてしまう。日本人の大学生としての意識がハッキリとした今、前世では絶対に巡り会えないであろう美しい女性が心配そうな顔しながら息のかかるほど近くにいるのだ。ちょっとくらい変な気持ちになっても仕方ないじゃないか! と、心の中で叫んでいた。


「お母様が美しすぎてちょっとドキッとしただけです。」


少し赤い顔になりながら正直に答える。するとシスティーヌは大きく瞳を見開き、目にも止まらない早さで抱き締めて来た。


「レンちゃん、あなたの将来が心配だわ!」


そう叫びながら、でも顔は嬉しさ一杯のシスティーヌ。お母様、顔に出てますよ。


「はは、レンは女の子みたいに可愛いからな。将来ものすごい美少年になるんじゃないかな?」


ニコニコしながら二人の所にやって来たのはレンの父親であるレイナードだ。


「貴方!レンは可愛いなんて陳腐過ぎるのよ! まさしくこの世に舞い降りた天使と言って欲しいわね!」


ふん!という感じで、形の良い胸をさらに突き出す。


「君と僕の子だからね。天使の可愛らしさと云うのも間違いではないと思うよ。ほら、こんなに目元が僕に似てるんだよ。」


「聞き捨てなりませんわね。レンは私に似てるんですのよ!」


「はは、君が美しいのは知ってるよ。でもそんな綺麗な君が選んだ僕の顔が、格好悪いわけないじゃないか。」


「あら、私はあなたの心と剣技に惚れたのよ。顔なんて二の次だわ! 私が選んだ理由は、その一途な思いと心根の美しい人でないと私はこの身を捧げよう等とは絶対に思わないですからね。」


等と言い争っているように見えるけど実際は、お互いを誉め合っている様にしか聞こない。


「レンちゃん、ちょっと待っててもらっていいかしら? ちょっとお母さん達白黒つけてくるから。」


そう言って二人で部屋を出ていった。その腰には剣を携えて。


大きく溜め息を吐く。この二人、相当の脳筋なのだ。

じつはこのブロスフォード家、先祖代々に渡り王国に仕える武人の家柄で近衛師団を代々引き継いで来た名門である。特にシスティーヌは幼少の頃からその才能を開花させ、若干15歳で近衛師団の師団長になり、狂飆(きょうひょう)の姫神の通り名を持つ程の王国随一の騎士であった。

その後、近衛師団のナンバー2だったレイナードと結婚をし、レンを授かった事を期に引退していたのである。結婚した当時、その美貌と剣技で絶大な人気を誇ったシスティーヌを娶ったとして、物凄いバッシングを受けレイナードは円形脱毛症になったと言う話は有名らしい。


「ちょうど良いや。これで落ち着いて考え事が出来る。」


部屋の隅で控えるメイドに冷たい水を持ってきて貰うよう指示を出し、改めて現状を確認する事にした。

まず、この家の事は、お父様、お母様供このバーレフォレスト王国ではかなりの有名人であって、特にお母様は二つ名を持つ程で実質この家はお母様が実権を握っている。といっても先ほどの絡み合いからも推測出来るように二人の仲はとても良いようだ。

そして、自分はと言うと、髪は父親に似て太陽の陽に透かすと燃えるように見えるほどの明るい赤髪に、母親によく似たコバルトブルーの大きな瞳と可愛らしい口や鼻が女の子と間違われる程の男の子らしい。

そして今日は自分の7才の誕生日。貴族社会での7才とは社交界へのデビューの年齢でありそして、加護を授かる年でもある。加護とは、その人の人生に大きな役割を課す重要なものである。

例えば、システィーヌの加護は神速の英雄だ。神の名を持つ神速は絶対的な力であり、英雄の加護となると、世界でも最強の剣士の一人となるのだ。レンはその加護を授かる儀式と会わせて社交界へのデビューが一週間後に迫っているという状況のようだ。


「ふー、どうして自分なんだろうな。」


小さく呟き前世の日本人だった頃の事を思い出す。


「みんな、どうしてるのかな? 僕が死んで悲しんでるだろうか? そう言えば、死んだ後、管理神とか云う神様に会ったんだっけ? そこで、何か質問にあって色々と答えたような気がするんだが。」


はっきり思い出せないが、何か重要な事を決めたような?


「しょうがない。いつか思い出すかもしれないから、今は考えない事にしよう。」


せっかくの転生だし、社交界なんて前世では経験出来るものじゃないし、このファンタジー溢れる世界を精一杯生きてみようと、前向きに考えることにする。


そう考えていると、システィーヌが清々しい笑顔で部屋に入って来た。


「あー、あの笑顔。また、お父様は勝てませんでしたか。」

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