加護の啓示2
投稿いたします。
宜しくお願いします。
「今の話の中で、カーナ達を雇いたいみたいな事言ってた人がいたね」
「はい、私どもをどうにか出来るとでも思っているんでしょうか?」
カーナとリーシェンが不機嫌に顔を歪ませ、先ほどの計画を立てている少し小肥りの中年男性を睨んでいた。
多分、自分の家の子でも加護の啓示に参加していて、それを見に来ている貴族なんだろうけど、カーナ達を厭らしい目つきで見ている事が不快だったので、僕はそのおやじ貴族の視線を邪魔してやろうとリーシェン達の前に立ってやった。
「レン様、どうしました?」
「え?ああ、あのおやじ貴族がカーナやリーシェンを厭らしそうな目つきで見てたから我慢出来なくって」
ガバッ!!
「え?」
突然二人が僕を左右から抱きしめて来たのでびっくりした。二人とも僕より身長があるから抱きしめられると必然的に彼女達の胸に僕の顔が埋まってしまう。案外二人とも着痩せするタイプ何だろうか? これは嬉しいけど一体どうしたんだろう?
「カ、カーナ、リーシェン、ど、どうしたの?」
うわ、胸に揉まれてちょっと喋り難いがどうにか言葉を発するとカーナの顔が僕の顔に近づいて来た。
「レン様、私感動しています。私達の事を悪漢から守って下さろうとするその御心がとても嬉しいんです」
カーナ? 少し顔赤くなってない?
「そうです。私なんかもう20才後半になって男から女性として見られていないんじゃないかと思っておりますのに、レン様は私を女性としてちゃんと見ていて下さる事が嬉しいのです」
リーシェン?君も顔赤いよ?
「そんなの当たり前でしょ? 僕にとってカーナは一番大切な人なんだし、リーシェンも女性として僕、とっても綺麗な人だなっていつも思ってるよ。頭も良いし、僕がお嫁さんにするならリーシェンやカーナみたいな綺麗で強くて頭の良い人が良いなっていつも思ってるんだからね。そんな大切な人をあんなに厭らしい目で見られるのは我慢出来ないよ」
僕がそう答えると今度はバッ!と云う音を残して一瞬で二人とも僕から離れて後ろを向いて二人でひそひそ話を始めたようだ。ここは聞かないのが紳士と云うものだろう。でもどうしたんだろうね?
ヒソヒソ話し中・・・
『カ、カーナさん! 鼻!鼻血出てますよ!』
『えー!リーシェンメイド長も出てるじゃないですか! それに耳まで真っ赤ですよ!』
『つい、勢いで抱き着いてしまったけどレン様、嫌じゃなかったかしら?』
『大丈夫ですよ、リーシェンメイド長。いつもメイド長の事褒めておられますから』
『そ?そうなの?』
『尊敬されてますよ。私が嫉妬するくらいにです』
『えへ、えへ、へへへへへへへへ』
『メイド長怖いですよ』
『でもでも、わ、私はカーナさんほど,こういう事態に免疫が少ないんですよ』
『私だって、面と向かって、大切な人、なんて言われるのそんなに慣れてませんよ』
『うー、はっきり言ってカーナさんが羨ましいです。私だってレン様が生まれてからずっと一緒に過ごしてますけど、専属じゃないですからどうしても接点が少ないと云うか、関わりが少ないといいますか』
『年の割りに可愛いですよね、リーシェンメイド長って』
『う!年の割りには、余計です!』
『解りました。システィーヌ様にお願いして、メイド長も専属にしていただきましょう』
『え? ええ?!!』
『実は、今回の加護の啓示を機会に社交界にも出られるレン様の身を確実に守る為にもう一人専属をとお考えだったんです。どうしても、私が冒険者組合の仕事で抜ける事もありますから。それで信頼のおける方で、戦闘能力も高い方が必要だったんです。そういう意味ではメイド長がピッタリですから。歳以外は』
『最後、余計です!でもそれ本当ですの?』
『はい、事実です』
『いっよっし! よし! よし! カーナさん! 私頑張るから!』
『はい、頑張って下さい』
『そ、それでは、ここは冷静にいきましょう。レン様より年上の私達が慌ててはいけません。メイドとしてちゃんとお礼を言って平然と構えましょう』
『はい』
あ、二人が振り向いてくれた。話は終わったのかな?
「レ、レン様、あ、ありがとう、ご、ございます。メイドとして、これ以上ない、お言葉、でしゅ!」
「私も、レン、様の専属メイドと、し、してこの上なく、か、感謝、し! しちょしましゅ!」
「リーシェン、カーナ、何かもの凄い緊張感が漂ってるし、かみかみだけど、大丈夫?」
「「だ!大丈夫です!!」」
まあ良いか。悪い事じゃなさそうだしね。
「ありがとう、二人とも、これからも宜しくね」
そう言って僕は満面の笑顔を二人に向けてあげた。
「「!!!」」
あ!二人ともだらし無い笑顔になっちゃった。どうして?
「あー、そこのレディー、少しお話しても宜しいかな?」
カーナ達とやり取りしていると、後ろから男性の声がしたので振り返った。レディーではないけどね。
僕はちょっと驚いてしまった。
その声の主がさっきカーナ達を厭らしい目つきで見ていたおやじ貴族だったからだ。
「申し訳ありません、レディーとはこの二人のメイドの事を言っておられるのですか?」
僕は素直にそのおやじ貴族に聞いてみた。だって僕は男だし、レディーと言われればカーナ達だろうなって思ったからだ。でもそのおやじ貴族、お前何言ってんだみたいな怪訝そうな顔を僕に向けてきた。
「何を言ってるんだ。あなたの事ですよ?」
あ、ちょっと口調が悪者感が出ているよこの人。
あんまり関わりたくないなあ。
「申し訳ありません。僕は女の子ではなく、男ですよ。ミスター」
深くお辞儀をしながら無礼のないように注意して対応する。
こういう人はこっちが不遜な態度とると倍返しされるからな。
しかしその顔はさっきよりの悪くなったような気がする。
「はあ? 男だと? そんななりでか? 私を馬鹿にしているのか?」
「よく女の子に間違われてしまいますが、男であることは事実です。なんでしたらこの二人のメイドにお聞きになりますか?」
僕は、相手の言葉にムッときたけど、ここで喧嘩ごしで話してもややこしくなるだけだから冷静に対応するよう努めた。けど相手の態度は悪くなる一方だった。
「私を馬鹿にしたな! こんなナヨッとした男が居てたまるか! 正直に女だって言っておればわしの第八夫人にでもしてやろうかと思ったんだが、もう怒ったぞ!」
えーー?!何だそれ! 僕をナンパしに来たのか? それに第八夫人ってなんだよ。あのおやじ貴族一体何歳だ? 7才の僕を嫁さんにって、どんだけロリコンおやじなんだ? 気持ち悪っ!!
僕が気持ち悪くて身震いしていると、カーナとリーシェンが僕の前に立ってくれて、あのおやじ貴族からの視線を遮ってくれた。
「申し訳ありませんが、我が主人に無礼を働くのは止めて頂けませんでしょうか」
リーシェンがおやじ貴族の前に出て深々とお辞儀をし、今の行為を止めてくれるようお願いをしていた。
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