終わりの始まり
拙い物語ではありますが読んでいただけると嬉しいです。
【あらすじ、話しを→話を】 「なにか騒がしい・・かな?」
青年は、何か歌声の様なものに気づき目を覚ます。
頭がボーとする中、その歌の様な音を求めて半開きの眼を手で擦りながら周囲を見渡す。
目に映ったのは黒い人群集だった。
すすり泣く声があちらこちらから聞こえるその場所は、数人のお坊さんがお経を唱え木魚を鳴らす。
「ここは・・・お寺? なんで??」
青年は、自分のいる状況が判らず困惑する。
しかも、今自分が立っている場所が混乱に拍車をかける。
自分の目の前にお経を唱える和尚さんが座っている。
和尚さんの後ろには自分が小さい頃からお世話になっている養護施設の先生や友人が並んで座っているのが見える。
その後ろにも見知った顔が並び、その一段を見下ろしている感じなのだ。
「あの~、すみません」
「・・・・・・・・・・」
「すみません!!」
「・・・・・・・・・・」
青年は目の前にいる和尚さんに声をかけるが、反応する様子もなく、ただお経を詠み続けている。
困った青年は、事情を聞こうと見知った顔の方に歩きだそうとした瞬間、体がフワッと浮く感覚にビックリする。
体はそのまま、お寺の天井付近まで浮くと自然と止まり、部屋全体を眺めることが出来た。
青年は今まで自分が立っていた方を振り向くと、和尚さんの座る目の前には祭壇に沢山の花に囲まれて自分の写真が飾られているのが見えた。
「これって、幽体離脱? それに、あれって・・・俺の葬式なのか!?」
自分の写真を前に和尚さんがお経をを詠み、その後ろに沢山の人が俯きながら、すすり泣く光景を上空から見ている事に最初は驚いたものの、特に取り乱すことも無く思ったより冷静でいる事に驚いてしまった。
「あれはやっぱり俺の葬式だよな? やっぱり俺死んだのか? でも、どうやって死んだんだ?」
ならばと、どうしてこうなったか思い出そうと腕を組み考え込む。
「たしか、大学の講義が終わってバイトに向かっていたはず。で、交差点に差し掛かって、信号待ちをしてて・・・ああそっか、女の子が飛び出して車にひかれそうになって、助けた俺がひかれたんだ」
自分の葬式を眺める。
結構参列者がいる。
あ、報道関係の様な人もいるなあ。
女の子を助けたヒーロー、なんて書かれてたりして。
「はあ、俺、死んだんだ・・・・・・まあ、しょうがないか。人一人の命を直接守れたんだから、良しとしますか!」
晴れやかな顔で天を仰ぎながら自分に言い聞かせるように呟く。
が、直後眉間に皺が寄る。
「で、これからどうすれば良いんだ?!」
状況は判ったものの、このままフワフワ浮きっぱなしでいる自分はこれからどうなるのかいきなり不安に襲われる。
「ま、まさかこのまま浮遊霊に・・・」
頭を抱え唸りながら悩みだすと、不意に体が上空へ引っ張られる感覚に襲われる。
「?!?!!」
その力は徐々に強くなり、目を開けていられなくなる。
瞬間、周囲が黒一色に染まり気が遠くなっていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あなたの次の生まれる世界を選択させてあげましょう」
唐突に、綺麗な女性の声が聞こえて来た。
「次の世界? 生まれる?」
「はい、あなたの来世の事です」
ピンとこないぞ?
来世って、前世とか来世とかの来世なのか?
「はい、そうですよ?」
「え?あの、今声に出してませんでしたけど?」
「あ、あまり気にしないで下さい。一応、管理神ですので、人の魂が考えている事くらい分かりますよ」
「そ、そうなんですか。え?魂ですか?」
「はい、あなたは今、魂の状態です。魂って分かりますか?」
「え?ええ、まあ、あ?でも良く分かってないかもしれません」
「まあ、大体あなたが考えているイメージで合ってますよ。で、申し訳ないんですが後がつかえていますので、手短に説明しますね」
えらく事務的だな。
神様ってこんなもんなのかな?
「こんなもんです」
「あ、ごめんなさい!」
「いえ、別に構いませんよ。本当は新しい旅立ちをする魂一人ずつに丁寧に説明してあげたいんですが、何せ今、転生ブームで日本人の魂が、各世界から引っ張りだこなんですよ」
「そうなんですか?」
そういえば、そんな小説や漫画がたくさん出てたな。
あんまり読んだことなかったけど。
「そうなんです。日本人の方って、そういう物語をよく読んでいて、それを転生先で実践するものですから、その世界が急激に成長したり、魔王を討伐したりと縦横無尽の活躍をするんです。おかげで日本世界の担当管理神の私に転生出来る魂が欲しいと依頼が山ほど来るんですよ! 一人で、処理する量じゃないんです! だから、チャッチャと終わらせます!」
管理神さん、焦ってるんだろうな。
だんだん、言葉が早口になってきてるし、よく見ると眼にクマが出来てるよ。
「なんかブラック企業みたいで大変ですね」
「本当ですよ! 天界神様に、職場改善要求でもしてみようかしら?」
「そうですね。それで少しでも改善されるなら、そうした方が良いですよ」
「解ったわ!頑張ってみる!」
「はい!」
「・・・・・・・えっと、ありがとう」
管理神さんが何故か御礼を言ってきた。
どうしたんだろう?
「何か、愚痴言ったら少しすっきりしたの。まさか人に慰められるとは思って無かったわ」
少し俯き加減に顔を赤くしている管理神さん。
こうして改めて見るとやっぱり女神様だけのことはある。
もの凄く綺麗だ。
「その綺麗な顔にクマが出てるとだいなしですし、我慢せずに言うべき事は言って下さい。」
「優しいわね、あなた。よし!今度の世界の管理神に、貴方のこと目に掛けてもらうよう頼んであげるわ。神の愚痴を聞いてもらった御礼よ」
ウインクしながら、僕に微笑んでくれる神様。