ふつつかな藻野ですが。
☆拙作「ニートを追う藻野、伊東をも得ず。」の続編です。そちらも合わせてお読み頂けたら幸いです。
コートを羽織って出てきたはいいものの、買い物袋を持ちながら歩いている内に、しっとりと汗が噴き出してきた。最近まで寒さに縮み上がっていたものだけど、春はもうすぐそこにいるんだなあ。
私は持っていた買い物袋を左手に持ち替え、右手の回復を試みる。お米もあるので大変だ。スーパーまで徒歩圏内とは言え、食料品を買い込むと疲れるね。車を運転出来れば買い物も楽になるよなあ。早く免許取りたいな。
私は歩みを進めながら、思いを馳せるーー春の訪れを予感する今日のような日は、あの日を思い出す。
私が決心を下した日。
それを二堂くんに伝えた日。
あれから、はや一年が経つ。
◯
「私、本気出してみようかな」
高校3年生に進級した日の下校中。
桜並木に彩られた通学路を歩く中、卒業後の進路の話をしていた流れで、私はそう呟いた。
「明日から?」
直前まで私と雑談に耽っていた二堂くんは、いつもの軽薄な感じで、そんな返しをした。
「『明日から本気出す』はダメ人間じゃん。ニートじゃん。私じゃん。……って、誰がダメ人間かな!?」
「今日も元気いっぱいだな、藻野」
人を小馬鹿にした、いつもの小癪な笑顔を振りまく二堂くん。いつもながら憎たらしい顔ですよ、全く。
「二堂くん。私、決めたよ」
どうでもいい掛け合いというワンクッションを置いた後で、今度こそ私は決意表明を__
「そうか。応援してるよ」
「まだ何も言ってないんだけど!?」
どうでもいい掛け合い、ツークッション目が入りました。どこもかしこもフワッフワだぁ。エアバッグかな?
いつもながらその軽薄さには感心するけれど、私は『流されまい』と無理やり真面目な顔を作って、本題に入る。
「進路の話。決めたの、志望校」
間を空けると、また二堂くんの茶々が飛んできそうだったので、私は間髪を入れずに志望校を告げるーー受験生に限らず、大抵の人は名前を知っているであろう、有名なところ。
それを聞いて、二堂くんはさぞ動揺することだろうと一人心の中でほくそ笑む。
いつもテキトーな二堂くんの驚く顔が見たい。
滅多に取り乱すことのない、幼馴染の顔が。
しかし。
「…………」
ノーリアクションだった。
ノーリアクション!?
「あ、あの…… 二堂くん?」
「今日も元気いっぱいだな、藻野」
「話が戻ってる!?」
ノーリアクションどころか、無かったことにされたんですけど、私の決心。セーブせずにゲームをがんがん進めてたら、電池が無くなって電源が切れてしまった時のような虚無感。
「よー、藻野。プリント届けに来てやったぞ」
「どこまで戻ってんの!? 久しぶりに私の部屋に来てくれた時にまで遡らないでくれる!?」
私が志望校を告げたことによって二堂くんの中でタイムリープが引き起こされた。うん、文章だけで見ると全く意味ワカンナイ。
私がニートしていた時まで戻られちゃうと、その時期を思い出して、恥ずかしさで悶えちゃうよ。
「二堂くん! 起きて! 元の時間軸に帰ってきて!」
私は二堂くんの両肩を掴んでゆさゆさ揺すった。意識のない人にはとりあえず大きな声で呼びかけるのがいいみたいだし。
私の応急処置によって現実に帰ってきた二堂くんが一言。
「よう、おはよう」
「寝てもいないのに寝ぼけないでよう……」
数ヶ月の時間跳躍を終え、おめざめ二堂くん。心なしか目がぱっちりしてる気がする。
「全く、二堂くんはしょうがないなあ」
呆れた感情を包み隠さず二堂くんにぶつけると、彼は少しの間黙ってから、小さな声で呟いた。
「……寝ぼけているのはどっちだ、とは、言えないよなあ」
「本気だよ、私。明日からと言わず、もう本気出してる最中だよ」
これまでは、学校の試験で困らない程度の点数を取ることしか目標にしてこなかったけど、今は違う。
明確な目標に向け、意識を一段階高いステージに引き上げることが出来たと自分でも思う。
「まあ藻野は、よく趣味でからかわれてるけど、学力はあるもんな」
「好きでからかわれてるわけじゃないんだけど!?」
趣味でからかわれてると思っていたのか、この男。
「お前がそれを望むなら、俺は応援するよ」
何でもないような顔でそんなことを言う二堂くん。
しかし、次の言葉にはーーなんとなく、翳りが感じられた。
「……ただ、俺じゃあそこは到底無理だ。今後もなんとなく、ずっと身近にいるもんだとばかり思っていたからさ。一緒の学校に行けるのも、今年までなんだなって思って」
二堂くんは二堂くんで、しっかり動揺してくれたようだった。
クールなフリしてるくせに心の中ではちゃんと動揺してて、でも私を否定せず応援してくれて、でも正直な言葉をぽろっとこぼしちゃう二堂くん。
嘘付きで口が悪くて意地も悪いけど、私の大事な領域を踏み荒らさないでいてくれるところ。
ああ、もう、くそう。
可愛いなあ、そういうところ。
大好きだなあ。
大好き、だけどーー
「そういうわけだから、今後あんまり遊んだり出来ないかも。とは言っても、教室や登下校でしか付き合いないから、今とあんまり変わらないね?」
二堂くんのことは昔から大好きだったけれど、私は二堂くんと同じ大学には、絶対に行きたくなかった。
◯
二堂くんは昔からクールというか、あまり感情を乱さない子だった。周りの子たちが子供らしく年相応にやんちゃしてた時だって、一人だけ、どこ吹く風でアリの行列をじっと見ていたり。他の子よりも落ち着いてて、それがなんだか大人に見えて、かっこいいなって思った。我ながら浅い理由だよなあ。
「うわ、藻野。お前の点数エグいな」
お昼休み。
図書室にて、先ほど返却された中間試験の答案用紙を広げ復習しようとしていたら、後ろから聞き慣れた声が飛んできた。
二堂くんは私の後ろに回り込み、私が確認していた答案用紙を覗いた。衣替えによってあらわになった二堂くんの腕が、肩越しに私の答案用紙をさらう。
「いやんえっち。勝手に見ないでよ」
「……と言う割に、取り返そうとしないんだな」
「恥ずかしい結果にはならなかったからね。自慢してやろうと思って」
「いい性格してやがるぜ」
二堂くんは難しそうな顔をして、私の答案用紙をまじまじと見つめた。感嘆の声を上げる二堂くんを見て、私はドヤ顔しながら聞く。
「二堂くんはどうだったの? 私の見たんだから二堂くんも見せてよ」
「食った」
「食った!?」
二堂くんはお腹をさすり、「不味かった」と呟いた。見せたくないからって腹を満たす糧にしない方がいい気がするよ……
「まあ、俺のことはさておき、受験に向けて順調な滑り出しを見せたわけか」
「でも、安心ばかりもしていられないよ。今までで一番の成績とは言え、ケアレスミスもちょいちょいしちゃってるし。いかに改善していくかが次に繋がるんだから」
「……何というか、変わったな。雰囲気」
「そう?」
「昔から、出来る奴とは思っていたが…… 何というか、勉強に対して今まで以上に前傾姿勢と言うか」
昔から出来る奴って思われてたんだ。いつもイジってくるくせに、改まってそんなこと言われたら照れちゃうなー。
「ニート極めてた頃のお前とは、違うんだな」
「恥ずかしい過去を掘り返さないでくれる!?」
ニートを追っていた頃のことは、何十年先でもネタにされそうだなあ…… 我ながら、軽率なことをしたものだよ。
「それ以前の…… 去年までの、お前とも」
確かに、高校3年生になるまではそうだった。
二堂くんが行くところで、二堂くんと一緒に。
これまでは、それで十分だった。
でも今は違う。
「私、もっともっと本気出すよ」
私は、二堂くんと同じ学校には行きたくない。
「そうか……」
二堂くんは冗談を言う雰囲気を微塵も見せない。いつもなら飄々と、嬉々として軽口をぶち込んでくるのに。
もしかしてこれはーー好機かも。
「言いたいことがあるなら、今のうちに言っといた方がいいんじゃないの? 大学で、すっごい秀才イケメンに捕まえられる前にさあ」
私の言葉を受けて、二堂くんが顔を歪めた。伝えたいことがあるのに、どう伝えたらいいかわからないみたいな、そんな葛藤の表情。
「……やれやれ。困ったことになった」
「どうしたの?」
「いつも嘘ばかりついてきたせいで、お前に信用されるかわからない」
「そんなの簡単だよ。私の目を見て、真剣な顔で一言。二堂くんの正直な想いをぶつけてくれたら、私みたいなのは案外コロッといっちゃうかもね?」
「……そうか。じゃあ、藻野。聞いてくれ」
二堂くんはゆっくりと呼吸を往復させてから、私に言った。
「小学校1年生の時、遊びに行ったお前の家の冷蔵庫にあったプリンを食べたの俺なんだ。お前がガチ泣きしてたから言うに言えなかった」
「あれ二堂くんだったの!?」
ニートを追っていた頃どころか、思い出せる記憶の中でかなり序盤の方の記憶を持ち出してきやがった二堂くん。
私の感情表現が真っ直ぐだった頃ーーというか、まあそれは今もあんまり変わってないと思うけどーーともかく、もっと純粋だったあの頃は、楽しみにしていたプリンが忽然と姿を消して恐ろしくなったものだ。お母さんとお父さんに聞いても食べてないって言うし、『好物が急に消えることってあるんだ!?』って震えたものだよ。
「はー、言えてスッキリしたよ。これで今日からぐっすり眠れそうだ」
「言われた方は超モヤモヤしてるんだけど!?よくそんな昔のこと覚えてるね!?プリンも食べて答案用紙も食べて、本当食べ盛りだよね!?」
10年以上の時を超えて明かされた真実。灯台下暗し。そういうことをする妖怪の存在、結構本気で信じてたよ。
「償いと言っては何だが、何か甘いもん奢るよ。……受験が終わった後にでもな」
そこで予鈴が鳴って、すっかり気を逸らされてしまったことに気付く。
結構勇気を出して二堂くんを誘い込もうとしたのに、二堂くんは肝心なところでギャグを挟むんだから。
やっぱり二堂くんって……
「あ、そうだ」
二堂くんに遊ばれてる内に休み時間も終わり、復習し損ねたことを悔いていると、二堂くんは言った。
「今のうちに言っといた方がいい言いたいこと、もう一つあった」
肩透かしを喰らい脱力していた私に、二堂くんは続けた。
「お前と同じとこ、受けるから」
凛々しくて、真面目な顔つきの二堂くん。
彼がこの顔をする時は、冗談は言わない。
「お前の志望校を俺も目指すなんて、おこがましいと自分自身思ってるーーが、お前と違う学校に通うなんて、想像するのも切な過ぎるんだよ。賑やかな幼馴染がいない教室じゃ、考えただけで退屈で死にそうだ」
二堂くんはそう言い残して、図書室を出て行った。私もそろそろ荷物をまとめないと。
「……二堂くん」
最近、私の部屋から見える二堂くんの部屋が、夜遅くまで電気が点いてたことも知ってるよ。授業中も結構あくびしてるもんね。席が隣だからすぐわかるよ。
影で努力してるくせに、それでも『解答用紙を食った』なんて冗談言っちゃうのは、勉強漬けの私を元気付けようとしてくれたのかな。
優しいなあ、そういう気遣い。
胸の内が温かくなるのを感じる。
私は席を立って、二堂くんが先に帰った教室に向かった。
◯
「藻野。俺はお前のことが好きだ」
本格的に冷え込んだ12月の下旬。
二学期の終業式を終えた日の帰り道。
『久しぶりに寄ってみないか?』と二堂くんに誘われた近所の小さな公園。四つ並んだブランコの向かって一番右のブランコに座った二堂くんは、その隣のブランコに腰掛ける私にそう伝えた。
雑談が途切れて少し間が空いたところだったので、その声を聞き漏らすことも無かった。私はニヤけたい衝動を必死に抑えて、毅然とした声で応える。
「もう、ほんと、タイミング悪いんだから。まだこれからだよ?受験」
「すまん」
「意地悪。ずっと待ってたのに。もっと早く言ってほしかったな」
「すまん」
「いっつもからかってばっかりなのって、単なる照れ隠しだよね。二堂くんってクールな顔して、ほんとは結構ヘタレだよね」
「すまん」
私の嫌味に、すまん、を繰り返す二堂くん。期待させるような甘い台詞を吐きまくるくせに、『好き』って明言だけは避けてきたもんね。
ニートしてた頃の私の部屋から出る時に言い放った『好きな女にしか意地悪しない』発言だって、二堂くんが『お前にしてるのは意地悪じゃない』って言い張れば、私が『好きな女』かどうかはうやむやになるし。
「お前の重荷になりたくないと思っていたはずなのに、気付けば、自分の気持ちを抑えきれなくなっていた。すまん」
「……いつから、私のこと、好きになったの?」
私はたどたどしく、そんなことを聞いた。
「お前が生まれる遥か前から、俺は恋に落ちる運命だったのさ」
「茶化さないで」
私は出来るだけドスを効かせた声で言う。ここ大事なところだから。シリアスなドラマのシーンを観ている時に家族にどうでもいいこと話されるのと一緒だから。
「……いつから、なのかは、よくわかんないけどさ。いつも本気で笑ってて、本気で楽しそうにしてて。本気で驚いて、本気で泣いてーー裏表がない奴だなあって見てるうちに、気付いたら、いつの間にか。我ながら浅い理由だろ?」
「……そうだね。あっさあさだあ」
ははは、と声を出して笑うと、二堂くんはこそばゆそうな顔を一瞬見せて、顔を背けた。
「……喜んで」
「え?」
「告白…… 喜んで、お受けいたします」
私は横を向いて、隣のブランコに座る二堂くんに、わざとらしい深々としたお辞儀をする。顔を上げて見た二堂くんの顔は、困惑そのもので、二の句を継げずにいるみたいだった。
「嬉しいよ。私も、ずっと好きだったから」
その日が、人生で一番嬉しかった瞬間。
心が奥底から揺さぶられる感覚に、笑みを抑える事が出来ない。
でも__幸せを噛みしめるのは、そこまで。
「……だけど、ごめん。私は止まらないよ。目標は変えない。全ての時間を合格するために使う。だから結果が出るまでは、一緒にお出かけしたりも出来ないよ?」
そこだけはーー揺るがない。
例えどんなに幸せになろうと。
そこだけは、譲れない。
「ああ…… わかってる。お前の邪魔はしないよ。……まあ、こんな時期に告白した辺り、十分空気読めない奴だけど」
そう言って、二堂くんが苦笑する。いつもの人を小馬鹿にした憎々しい笑みではなく、心の奥底から顕現したかのような、そんな可愛い笑顔。
「それ以上の邪魔はしない。受かるといいな。俺も頑張るよ」
「うん。ありがと」
「別に今だって、家も席も隣同士なんだ。いつもすぐそばにお前がいるって思えば、寂しくなんかないさ」
そう言って二堂くんはブランコから立ち上がった。私もそれに続いて、公園から出た。数分歩いて、私たちは家に到着する。
「じゃあ、またな。良いお年を」
「うん。良いお年を」
自分の家の方に去っていく二堂くんに、私は手を振る。二堂くんが笑いながら手を振り返し、家の中に入っていく。それを確認して、私も我が家の玄関扉を開けた。
嬉しいな。
二堂くんがやっと、正直になってくれた。
ずっと近くにはいたけれど、ようやく手の届くところまでこれた気がする。
精神的に近くなった気がする。
でも__受験が終わるまでは。
「……明日からも、家にこもって勉強だからなあ。次に会うのは、来年の始業式かな」
隣の家にいるのに。
すぐそこにいるのにーー遠いなあ。
◯
「……お前と違う学校に通うの、初めてだな」
「気安さしかない幼馴染の重要性、分かった?」
合格発表の日の夕方。
二堂くんが告白してくれた、近所の公園のブランコの上。告白してくれた時と同じブランコ。3月とはいえまだ鋭い冬の風に、無人のブランコが揺れる。
「合格おめでとう。藻野」
「二堂くんこそ、すっごく頑張ってたよね」
二堂くんは私と同じ大学に受からなかったものの、去年までの二堂くんを思えば大躍進と言えるぐらいのところに進学を決めている。去年まではなかなか悲惨だったからなあ、二堂くん。何だか泣けてくるよ。
「……ねえ、これからどうしようか?」
寒さもあるので、私はすぐに本題に入る。ずっと画策していたあの言葉を、遂に言う時が来た。
「今は付き合っているけれど、環境が変わればどうなるかわからないよね? それも同じ大学じゃないわけだし、疎遠になる可能性が高いと思う」
私は、二堂くんと同じ大学には行きたくなかった。
だって、もし大学まで同じだったらーーきっと最後まで、気安さしかない幼馴染の関係性でしかいられなかったと思うから。
「茶化さないで聞いてね」
『押して駄目なら引いてみろ』
恋愛系の話で、よく聞く言葉。
普段のアプローチが通用しないから、受験という形で二堂くんから引いてみたけど、そのまま逃げられちゃったらたまらないよね。
だから私はーーもう一回押すの。
「二堂くん。私とーー」
◯
アパートの階段を登り、玄関を開ける。買い物から帰宅した私の視界に入ったのは、整頓された靴。私が出かけた時には無かったその靴を見て、あの人が帰宅していたことに気付く。
「ただいまー。お米運ぶの手伝ってー」
私が声を張ると、リビングへ繋がる扉の奥から、うーい、と声が聞こえる。あの人はすぐにやって来た。
買ってきたお米を担いでくれた彼の顔を、私はジッと見つめる。それに気付いた彼が不思議そうにこちらの様子を伺うのを確認して、私は言った。
「ふつつかな藻野ですが、これからもどうぞよろしくお願い致します」
私はわざとらしく、深々としたお辞儀をする。
同居人に。
……同棲とも言うかな?
「急にどうしたんだよ。改まって」
そう言って、彼はーー二堂くんは笑った。
困惑した時の、可愛い笑顔。
「いや、別に?」
私が公園のブランコで同棲を申し込んでから1ヶ月。
危惧していた両親の説得も「まあ、彼なら」とあっけなく了承されてから、そこからは目まぐるしかった。
ドタバタとしていた引越し作業も少し前に終わって、ようやく生活リズムが決まってきたところだ。
「ほらほら、晩ごはんの準備するから二堂くんも手伝って!」
「わかったわかった」
二堂くんを急かして、私も続く。
「今日も元気いっぱいだな、藻野」
「元気だよ!二堂くん」
そりゃあ、だって。
元気にもなりますよ?
大好きな二堂くんとこれからも一緒にって、一つの夢が叶ったんだからさ。
「二堂くん」
「どうした?」
いつものクールな顔の二堂くん。
意地悪だけど、優しい二堂くん。
そんな彼に、私は持ち前の真っ直ぐな感情表現でぶつかる。
「大好き!」
今後もしすれ違う事があったとしても、そうやって二人で乗り越えていけたらいいな。