平凡な日常
「こんにちは!」
大学終わりにバイト先に向かった私は、店主の文夫さんに声をかける。
「こんにちは。暑いから麦茶飲みな」
ここは住宅街にひっそり構える餡が自慢の和菓子屋梅花庭。
ちょっとした喫茶スペースがついた町の和菓子屋さん。
「ゆかりちゃん今日は暑いからそろそろ葛饅頭売ろうと思うの、味見してくれる?」
こちらは文夫さんの奥さんの花さん。
2人で仲良く切り盛りしている。
交通事故で両親を無くした私にとって、気にかけてくれる2人は両親のような感じでとても嬉しい。
2人はバイトである私に季節ごとの新商品を試食させてくれる。
1つ手に取る。やっぱり美味しい。
夏と言えば葛饅頭。つるっとした葛の中に餡が入ってて、1時間位冷やすと丁度良い。
餡の種類は、こし餡抹茶餡レモン餡。
笹が巻いてあるとさらに清涼感が増して夏らしい。
試食を終え私は売り子を始める。
いつも通り5時間のバイト。
和菓子を売って他愛のない会話をして、少し廃棄を貰って家に帰って大学へ行く準備をする。
そんな日常が明日も続くとさっきまで思っていた。
星を眺めていた私はマンホールの蓋がなくなっているのに気づかなくて、穴に落ちてしまった。