でっかい目覚まし気分は最悪。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
オルフェンティアラは混乱する。
歪みは正したはずだ。
戒律は破られていない。
ならば何故、山が哭いている?
黄緑色のマナが、とめどなく山から噴き出している。
マナはこの世界の血液であり栄養素だ。
叡智の竜が創り出した龍脈に乗り、世界の隅々までマナは循環する。
水が雨となり、川を下り海に出でてまた雨となる様に。
生き物には決してその流れを堰きとめる事など出来ない。
出来ても流れる向きを変えたり、流れの力を借りること位だ。
魚が潮の流れに乗る様に。
鳥が気流を掴むように。
そう、生き物にはーーー。
372年ぶりに目覚めた体はまだうまく動かない。
動かすたびにパキパキと、薄い石が割れるような音があちこちからなる。
奇跡を起こした代償にオルフェンティアラは文字通り石と化したのだ。
恐らくは他の天使達も。
だが、今は姉妹とも言える他の天使より、子供の様に成り立ちを見守ってきたこの世界の方が気になっていた。
黄緑色の霧に包まれた山頂をぎこちない動きで歩くオルフェンティアラはようやく見通しのよい切り立った崖にでる。
「そうだ・・・ここは雲の上だった。400年近く眠るとそんな事も忘れてしまうのか。」
まだ体は完全ではない。
寝足りないかのように体はだるく、頭は重い。
食事も睡眠も必要ない天使には分からなくて当然だが、それは正に無理矢理叩き起こされたような感覚だった。
不調というものすら、オルフェンティアラには初めての体験だったのだから、戸惑うのも、一回の動作で休憩が入るのも仕方のない事だった。
ティアラは少し悩んだがやはり山を滑空して降りる事にした。
歩いて降りる方が安全だが、翼を使った方が断然楽だったからだ。
何が起きてるか、確かめねばならない。
天空の使いは、マナを噴出し続ける霊峰を滑空し、最も近い亜人族の国へと飛んで行ったのだった。