テキトーにトラブルでも起こそう。
話のタネでも植えますか。
「久しぶりですわねティアラさん。山の上の生活はどうですか?」
「特に何もない。耳の長い亜人・・・エルフとかいったか。彼等の信仰が時折届いて、心地よい。それ位だ。そういうお前はどうだ?」
「海の果てで魂を選別していますわ。
・・・先日、初めて歪んだ魂を見ましたの。きっと今回アマルーラさんが集合を呼び掛けた原因だと思いますわ。」
「歪んだ魂・・・?まさか、三戒が・・?」
「破られたのでしょう。」
それは大空の何処か。
山の上なのか、海の上なのか、大地の上なのか、人には知る由もない。
「またせたわね。ティアラ、アクア。」
三天使が顔を突き合わせたのはこれが初めてになる。
「先日、人間族が殺し合いをしたわ。
亜人族がいなくなった事で食糧の生産が低下したの。
我が子にたべさせるものが無くなった人間の男が、比較的食糧のある家の人間を殺して、食糧を奪い、我が子にたべさせたのよ。」
「でもアマルーラさん、三戒で言えば『守るため』に力をふるったわけなのでしょう?
それが三戒を破ることになるなら、狩猟はどうなりますの?」
「そうよアクア。三戒的には問題はないわ。問題はその後。殺された人間の肉親が、その男を憎み、報復したの。
・・・他の種族なら守れなかった事を悔いる所なんだけど・・・人間族は、悔いることより、憎む事を選んだわ・・・。
報復された男の肉親もまた憎み・・・。」
「負の連鎖、ですわね。それは由々しき事態ですわ。ですから歪んだ魂が海の果てにやってきましたのね。」
「そうよアクア。
私達に出来る事は二つ。
憎みをもって力を奮う人間族全てに『天罰』を与えるか。」
「私は反対ですわ。憎しみを持った1人が問題なのでしょう?。それ以外は被害者に過ぎませんわ。」
「アクアの意見は最もね。ティアラはどう?」
「私は・・・人間族にも愛着がある。
罰するよりは救うべき方に舵を取りたい。」
「2対1、ね。罰するべきの意見は私だけか。」
「手段は二つ、と言いましたわね?
もう一つの手段は何ですの?」
「時間を逆行し、今回の事を『無かった事にする』。
知ってるとは思うけど、時間を遡るのは、魚が滝を登ろうとするようなもの。
常に押し流そうとする時間という力に抗いながら作業をしなければならないわ。
幸い、問題地点からさして時間はたっていないけど、反動でどれだけ動けなくなるか・・・。」
「仕方あるまい。我々はその為にいる。どちらを選ぼうとな。」
「動けなくなる位で修正できるのなら、望むところですわ。」
「わかったわ。それでは、食糧を奪おうとした男に、施しを与えましょう。
奪わずとも、我が子を守れるように。
ーーアマルーラの名において」
「オルフェンティアラの名において」
「アクアの名において」
ーーーー奇跡を執行する。