流れで海の天使。
世界には大陸が一つしかない。
まばらに島が点在はするが、知的生命体へと成長せず、環境に適応した動物へと進化する。
陸と海の対比は3対7。
常に流れるマナにより、海の生物は巨大化する傾向がある。
その海を外に外に。
大海の果てには何があるのか。
青い髪と純白の羽根を持った大海神ウィタエの使いであるアクアは、ある日導かれるように海の果てを目指した。
太陽を目安に、海の生物の進化と成長に注視しながら、ひたすら陽の登る方向へと飛び続けた。
海の果てにたどり着くのに32回、日が落ちた。
急いでいた訳ではないが、これでは陸の生き物が海の果てにくることはないだろう。
果てには・・・何も無かった。
いや、一面の白い空間だった。
有ると言うべきか、無いと言うべき
。
アクアは首を捻る。
違和感はない。
この不思議な空間は、有るべくしてあるのだ。
境界の向こうは白い空間。まるで白い壁が、横には何処までも続いている。
「よくぞ参った。大海神ウィタエが娘、アクアよ。」
「あなたは・・・死神・・・ですの?」
白い壁の向こうから現れたのは、黒衣を纏った髑髏であった。
「私が神などおこがましい・・・。魂の導き手、とでも言っておこう。」
「貴方が私を呼びましたの?」
「うむ。全ての命は、海より始まり、海に還る。それは魂もしかり。
その魂を見極める力を私に貸して欲しい。世に放つべきか、無に帰すべきか。其方にはその力がある。」
全ては神の手の上。
これもまた必然なのだ。
アクアがここにたどり着くことも。
魂を選別することも。
アクアは幼さの残る顔に微笑を浮かべ応えた。
「喜んで」