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じゃない方の

ギルドの羊じゃないほう視点


そいつは黒い猫耳のフードつきポンチョを直しながらギルドに入ってきたその、姿は、疚しいことがあって顔を隠したいものの行動そのもの。


怪しい。


ギルドの受付は第一印象を大切にしろ。


初めて受付についたときにそうギルド長から、教わった。

どれだけ付き合っていい人だと解っても、最初の印象を大切にすること。最初に感じた相手の本質を感じたその時の自分を信じるのだと。この教えは何度も私を救ってくれている。人当たりのよかったヤツが盗賊崩れだったり、腰のひくい殺人狂、ごく普通にみえる詐欺師…等々あげればきりがない。


さてこいつはどうだろうか?


ギルドの受付は2つ。

片方は常に混んでいる。

羊娘のメリッサは見目も良く人気がある。

肉食系には庇護欲を誘うように、草食系には仲間としての安心感を与えるように使い分けるのが上手い。

そして、草食系は群れたがるので常に混んでいる。

何より彼女はギルド内の情報収集担当と位置付けられていることもあり話が長い。どうでもいいような話まで全て聞いている。

しかしそれが事件や異変が起きたときの鍵となることも多い。

そいつは私の方をじっと見てきてに少し首をかしげた。目深に被ったフードのために、表情は見えないのだが恐らく私の種族がわからないのだろう。よくあることだ。

(あいつら…)

たっているそいつの側に然り気無く近づく豚のアグーとそのとりまきだ。メリッサ親衛隊を勝手に名乗り新しく入ってくる者にちょっかいをかかけているのだ。

今も手に持っていた馬鍬の柄をそいつに当てた。

当てられたそいつは、よろりとよろけ、ぶつかったのがアグーの持つ柄であるとわかると…

さっと埃を払い、そのまま何事もなかったかのように私の方へ向かってきた。


その後ろでは驚いた顔の豚。

え?いいのか?普通もう少し何かあるだろ?

アグーと取り巻きたちのそんな声がきこえるようだ。


軽やかな音とともにそいつは私前までやってきた。


椅子に座った私は下から見上げることになる。

フードで隠されていた顔が露になる。神経質そうにひそめられた眉とその下の鋭く目力のある瞳。薄い唇の端に垂れた黒く長い耳が触れそうで…


思わず息をのむようなキリリと迫力のある美形だ。

歴戦の…とまではいかないものの、辛苦を知る者の顔だ。


「あの~すいません。身分証を作りたいんですが。」


おや?話すと見た目よりも物腰が柔らかい。

しかし、その柔らかさがしっとりと低音のきいた声にとても合う。

思わず照れそうになりぶっきらぼうに申請書を渡してしまう。


「ほらよ、これに名前書いてここに手をかざしな。」

ぺらりと紙を渡すと、そばにあった石盤を示すとそいつは少し考え込み紙に名前を書く。うつむいたまつげが長い。

ぼんやりみていると、すっと紙が返される。

そこにかいてあったのはギルド受付検定の時に学んで以来使う機会のなかった文字。


「うぁ?なんだこれ?あぁ、古代文字か。古代文字で書くとか…お前どんだけ僻地から来たんだよ、ったく書きにくいな~」


下手な字が恥ずかしく、思わず悪態をついてしまうが、そいつは何もいわない。いつも通りの説明をしていると石盤にぼんやりと住所や年齢が浮き上がってきた。

「住所は…あぁ、あの花屋の奥か」

年齢17歳。…若いな。

引き出しから通信鏡を取り出しカウンターに置く

「証明書に顔写真つけるからこの鏡みてろ、フードは取れよ。」

そう言うとそいつは少し躊躇う様子を見せる。

「種族、隠したいのか?なら写真は裏で撮るんでもいいぞ?」

レア種族は姿を曝すとレア種狩りに合うことがある。そのためフードの着用も認められている。

「だ、だ、大丈夫です。取ります。ちょっとあんまり自分の見た目好きじゃなくて…」

恥ずかしそうに目線を反らして言う姿。


どちらかというとキツい顔立ちだというのにこのギャップ!

萌える!!脳内がたいへんなことになってきた。

しかしここは神聖なるギルド受付。

こんな乱れた脳内だということは、おくびにも出さない。


そいつは覚悟したようにフードを取る。

黒い髪に黒いたれ耳、それが立ち上がる…のを見て慌ててフードを被せる。

回りの様子を見るが誰も此方は見ていない。こいつの後ろにも人は並んでいない。

フードは衝立の中でとられたし、大丈夫だろう。


声を極力小さくして話しかける。

「お前!レア種族なら先に言え!こんなところで姿晒すなアホが!!!」


そいつはきょとんとした顔をして私の瞳を見つめるだけ。

うおっ!可愛い。流石バニー族…やべえ!顔が近い!!ひぃぃ!照れる!!!

照れかくしに顔をしかめてしまった。


「お前本当に田舎から来たんだな。いいか、バニー系は愛玩用にさらわれやすいから耳は人前で晒すなよ。写真はそのフードのまま顔出しとけばいい。耳は見えるから耳の長い山ヤギー系で通しとけ。ほらよ。」

早口にいって相手の顔の前に鏡をおしつける。

山ヤギも里におりるのはめずらしいから大丈夫だろう。

あ~目が違うな…足音も違うか…。

だめだいい考えがうかばない…


ポーンと音がなる。

みるとギルドカードの写真のスペースにキリリとした顔つきの男前が、少し困惑している写真がうつしだされていた。


「うっし、とれたな。ほらよ、お前のギルドカードだ。」


ポイと投げるように渡すとそいつはあわあわと受けとる。


どんくせぇ…。


それをポンチョの下につけていたポーチを出して大切そうに入れている。

ポーチは白い花の形。

男が花のポーチ!?

なんだそれ!!バーニー族だからか!?

しかも、やばいくらい似合ってる!!


「ありがとうございます。」


ただ笑っただけなのに鋭い眼光が和らぎ花が咲くようだ。


さすがバニー族…クールな美形のおもわぬギャップ…この魅力恐ろしい。


「おうよ、わかんないことがあったらまた来いよ。ケケ・エカセ」


どさくさに紛れてさっき知った名前を呼ぶ。

赤くなっていそうな頬を隠すため下をむいて、仕事をしているふりをする。


ケケ・エカセなんて…名前まで可愛いとかどうなんだ!!



パタパタッ



目の前に広がる白い紙に音を立てて赤い点が散った。


~の


がつく話は別視点でのお送りです。



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