わかった
俺はぴょんぴょんという足音を頭の端においやりながら考える。
俺バニー系っていう種類なんだな、しかもレア種族。
さらわれやすいから普段は山ヤギー系を名乗る。しっかり覚えとこう。
山ヤギーってきっと、ヤギだよな。
そういえばヤギって瞳孔が横なんだけど大丈夫か?ばれないか?
うーん、まあ、出来るだけフードは深く被ろう。
ヤギーを騙りながら足音はぴょんぴょんだしなぁ…
この足音は消せないのか?
そう思ったら突如、視界の端に点滅するものが出てきた。
足跡マーク?
じーっと見ていると足跡マークの横に5と出てきた。
下がれ。
そう念じると5、4、3、2と動き、足音がごく小さなものになった。数字は1。
どうやらそれ以下にはならないらしい。
…便利だな。
便利だけどちょっと違うな…こういうんじゃなくてさ、
ほら、ステータスっていうとステータス出たりするじゃん?
よく異世界にいって無双してるやつらの、目の前とか頭の中にうかぶじゃん?
何で俺がステータス出ろって考えると、頭の中でブブーって鳴るんだよ。
なんだろな…この…これじゃない感。
異世界だ~ヒャッハー!!ってしにくいっていうか…
はあ…。
あっ!そういえば
かしじゃない方姉さんが最後に言ったケケ…なんとかってなんだ?挨拶か?
日本語で書いた名前は古代文字だって言われてたからな。会話は日本語じゃなく自動翻訳?
とりあえずポーチに入れたギルドカードを取り出して見る。
…読めるな。
見たことの無い文字の意味が頭に浮かぶ!
とかないな。
文字が二重になって見えて不思議と読める!!
とか…ないな。
フツーに日本語だもんな。
種族 表示せず
名前 ケケ・エカセ
ギルドレベル G
ーーーーー
ケケ・エカセ?
あれ?俺の名前ケケ・エカセじゃないよな?異世界行ったら名前変わった!?
なんでケケ・エカセ?
ケケって、カエルかよ…
うん?待てよなんか昔、一度だけそう呼ばれたことがある…ような気がする。
あれは…
そうだはす向かいの厳ちゃん!
ちょっとガキ大将気質でよく俺に理不尽な命令とかしてたんだよ。
その巌ちゃんが…
「力也!お前は今日からケケエカセな!!」
って言ったんだ。
そうそう、で。その時もなんでケケエカセなんだよ、カエルかよ。って子供心に思ったんだった。
そんで、いつもはしょうがねぇなぁって感じでつきあってやってたんだけど…
その日はイラっときてすっげぇ嫌な顔したんだった。
そしたら、その日から厳ちゃんが遊んでくれなくなったんだよな…
ケケエカセ…なんで厳ちゃんがそう言ったんだろう?
俺の名前は竹工力也だし…うん?
竹…ケケ
工…エ
力…カ
也…セ
これかー!!
ごめん厳ちゃん!あのあだ名は小学生2年生が考えた渾身のギャグだったんだな…
ごめんよ~。
巌ちゃん気付いてやれなくてごめん~
睨んてごめん~
こんな悪人顔の俺が睨んだら怖かっただろうな…
きっとあの日、こんな面白味のない男とはもう付き合えない!って思ったんだ…
そうだよな、俺だってそう思うよ。
ごめんな、厳ちゃんの笑いのセンスは異世界の神レベルだよ。
全然面白くないけど。
遠い異世界の空の下、俺は心の中でもう会えないかもしれない巌ちゃんに詫びた。