拾った
コメディーとしてますが…
さほどコメディーではないです。
ラブコメとしてますが、ラブはあまり出てきません。
異世界転移してるけど、恋愛ではないし冒険もしない。ファンタジーってなんだっけ?
そんなんで、内容が微妙すぎてコメディーに置くしかなかった。
が正解の作品です。
俺の顔は悪い。
悪いというのは整っていない、という意味ではない。
鼻が低すぎることも、でかすきることもない。
目が小さすぎたり、細すぎたりすることもない。
唇が厚すぎたり薄すぎたりすることもだ。
しかし悪いのだ。
悪い顔なのだ。
道を歩けば必ず避けられ、学校では極道と影で噂され、落とし物を拾えば強盗と間違われ、お年寄りに親切にすれば通報される始末。
もちろん、子供には目があっただけで泣かれる。
この悩みは俺を常に悩ませ眉間に深いシワを刻んだ。
毎晩揉んで伸ばしているがその効果は定かではない。
当たり前だが友達もいない。
顔が悪すぎて誰も声をかけてこないのだ。
そんな俺が家の前の道で奇妙なものを拾った。
半円よりも円に近い形の枠に黒い流線型の物体がぶらさがるように2つついたもの。
黒い流線型の物体のさわりごこちはやわらかで滑らかな起毛の布?
なんじゃこりゃ。
そう思っいながら家に帰る。
外に置いておくには高そうなさわり心地なので後で落とし物として警察に届けよう。顔は悪いが俺は善良な市民なんだ。
「ただいま~」
ガチャリと誰も居ない家に帰る。
ふと、玄関の姿見に写る自分と目が合う。
制服のブレザーとその手に持った謎の物体。
ふと、手に持っていたものをくるりとひっくり返す。枠にぶらさがっていた流線型の物体がピンと立ち上がる。
あ、これ、知ってる。
従兄弟の家でみたエロ本の金髪ボインな女の人の頭についてたやつだ。
バニーガールの頭につけるやつ。
これをつければ誰でもウサギになれるやつ。
「へぇ、こんな風になってたんだ。」
魔が差した。
そうとしか言いようがない。
俺はなんとなくそれを頭に着けてみた、その瞬間。
プッペケペー♪
やる気のない音と共に視界かぐにゃりと曲がり…
見知らぬ部屋のなかに立っていた。
やたらファンシーな家。
白と淡い緑を基調としたレース溢れる家。
そしてぺらりと紙が降ってきた。
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竹工 力也殿
おめでとう!
貴殿は異世界行きの切符を手に入れた選ばれしものだ!
それさえあれば貴殿に恐れるものはない。
慣れぬ生活に苦労しないよう私からささやかなギフトを贈ろう。
家と金だ自由につかうといい。
人生はいつだって片道切符だ。
さあ、己を磨き、異世界を謳歌したまえ若人よ!
異世界の神より
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…なんだこれ。
つうか、きったねぇ字だなぁ…
神様?それにしちゃ悪筆すぎだろ。
ん?手紙の裏に何か書いてある。
おっ、こっちの字は凄い綺麗…あれ?
でっかく×って書いてあるな、なんだこれ。
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阿形百合様
おめでとうございます。
貴女は聖女として選ばれました。
貴女がひろったのは伝説のアイテム『聖ウサギの耳』です。
これがあれば全ての男性が変におちま
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変におちま?
いやいや。
変に落ちるって…恋に落ちるの間違いだろ。
なんだよこの古典的な間違い。
流石に気づいて他の紙に書き直ししたんだろな。
…阿形?
うちのとなり阿形さんちだな。
あそのこんちのゆり姉とはチビの頃によくキックスケーターで家の前を爆走…
…
……あれ?
これ、事故じゃねぇ?