ワーヘ城での出来事2 大陸砲と光の矢
撤退を余儀なくされたレーテとレベセス、スサッケイと影飛びの面々。
衝撃だった。
『影飛び』の中でも屈指の……いや、世界中の傭兵の中でも屈指の戦士であるスサッケイが瀕死の重傷を負った。
しかも、スサッケイに攻撃を仕掛けた相手は、仮王ゴウ=ツクリーバ。驚くべきは、この男は半死半生だったという事実。眼球は干からび、荒れた肌は皸の様に弛む。所々に皸の様に亀裂が入るその皮膚は、血が滲んだ後にかさぶたに覆われ、毛髪も抜け落ち、極僅かに残る頭皮にこびりつく有様。一見して、ミイラだ。ミイラがカタラット国王の部屋着を纏っている。だが、その部屋着もまるで数百年経ったかのようにボロボロになっていた。
予備知識がなければ、ゴウと判別する事すら難しいだろう。
追跡はなかった。
確かに、あの体では追跡など出来ないだろう。歩けばその部分が風化して砂になると言われても強ち否定はできない。それほどにゴウの身体は朽ちていた。
だが、ワーヘの城に、明らかに何か禍々しい存在がいる事は、そこにいた全員が確認し、納得した。
レベセスとレーテは、瀕死のスサッケイを連れて一度宿に戻った。
『影飛び』の面々には、一度アジトに戻るように諭したが、流石に頭領を放ってアジトに戻ることもできないだろう。そもそも彼らはレベセスたちを信用しきっているわけではない。どちらかといえば、スサッケイが盲目的にレベセスたちを頼っただけであり、彼らは彼らでスサッケイを治療したかったようだ。『影飛び』には『影飛び』の長年培われた医療技術があると言われる。その施術を迅速に使うことでスサッケイの命を救う意志は間違いなくあった。
だが、秘伝の薬草を使うにしても、光の矢で貫かれたスサッケイの患部は焼けただれており、その部分を切除し、氣を照射することで細胞そのものの治癒力を活性化し、傷を治すしか、彼の四肢を元に戻す方法がなかった。残念ながら『影飛び』の治療法は、傷を壊死させなかったり、止血したりする類の作業では秀でていたが、いわば復元に近いものではなかった。
彼等は、レベセス達の宿を取り囲み、事の趨勢を見守るしかなかった。そして、レベセスも彼等の存在を気づきつつ、実際にスサッケイを救う事の出来ぬ彼等自身の歯がゆさについても、納得していた。だからこそ、何とかしてスサッケイを元通りにしたいという彼の心に火をつけたのだった。
ベッドに横たえられたスサッケイに対し、応急で行われた止血措置を、もう一度厳重に再施術した後、レベセスは傷部に対して氣の照射をはじめた。
氣功術の回復術は、傷つき弱まった人間の氣の波動を、あくまで氣を照射する人間の元気な氣の波動に同調させて回復能力を高める物であり、いきなり傷を癒したり体力を回復させたりする類の術ではない。また、傷の回復を促進するだけであり、傷をなかったことにする術でもない。ましてや、非生物のエネルギー構成は『真』が大元であり、服やその他装備品を回復させるものでもない。ただ、切断された指を縫合する時間が早ければ早いほど後の回復に障害が残らないのと同様、如何に早く氣功術の回復術を施せるかが今回のスサッケイの回復の度合いの鍵となっていた。
レベセスの氣功術は、生命活動の低下したスサッケイの回復力を増幅させるための暫定措置でしかなかった。治癒術の中で、最も優れているものがあるとすれば、それは時間の逆流術だろう、とはレベセスの意見だ。
負傷する前の状態にその部位を戻せれば、一番正しい形での回復と言えるだろう。だが、そのような術があるとすれば、それはもはや人間の使える術ではない。それに、一部位のみ時間が遡ったならば、その他の部位との老化の進行が異なってしまい、結果的に体の部位が時間的につぎはぎだらけになってしまう。それに、若返らせることは可能になるだろうが、体が習得した技術も失われてしまうのではないだろうか。その部分の問題が解決しなければ、真によい回復能力とは言い難いだろう。
施術が終わり、ベッドで深い眠りにつくスサッケイ。
極端に低下した生命力を、レベセスと同じレベルまで引き上げ、治癒力を増加させる。普通の人間の氣の波動に共鳴させたところでその効果は微々たるものなのだろうが、聖剣の第三段階にまで高められた氣の波動を照射させれば、実際の回復の速度は、時間が高速で遡っているように見えるほどの早い回復になるだろう。
だが、ダメージを受けているのは体だけではないはず。
親友として……主として尽くしてきたゴウのあの変わり様は、歴戦の勇士である『影飛び』頭領スサッケイ=ノヴィを以てしても容易く受け入れられるものではない。体のダメージに加え、心のダメージも受けてしまったスサッケイがいつ目覚めるともわからないこの現状で、彼を大陸砲奪取の戦力としてカウントするわけにはいかなかった。
痛みで唸っていたスサッケイから、安らかな寝息が聞こえてきたところで、レベセスは氣功術による体力の回復措置を終了する。そして、唸るように呟いた。
「バカな……。大陸砲には私の氣でコーティングを施したはずだ。それをあのゴウという男は自分の力で解いたというのか。あの男は氣功術が使えるということなのか? それとも、何か別の方法で大陸砲に施した氣のコーティングを外したというのか?
いずれにせよ、あの男の中で、何か異常が起きている」
レベセスは悩む。しかし、その悩んでいる様を他の人間、とりわけヒータックとレーテに見せる訳にはいかなかった。レベセスは先駆者だ。少なくとも、実子レーテ=アーグにとっては。彼の言動は先駆者としての自信に満ち溢れているからこそ、彼等は安心して様々な作業に取り組むことが出来るのだ。その先駆者たるレベセスが動揺を見せる訳にはいかない。例え、どれ程に理解不能な事態が発生したとしても。
暫くの間、スサッケイに施術を続けているしぐさをつづけながら、今回のゴウの状況を理解しようと努める。
「……いずれにせよ、ゴウは氣のコーティングを何らかの方法で解除した、ということなのだろうな。そして≪光矢≫を用いた。マナ術で、自らマナを収束しなければ放つことのできない術を。その現実が全てだな……」
一度大きくため息をつく。それを背後から見つめていたヒータックとレーテがどう解釈しただろうか。だが、今のレベセスには、それは正直どうでもよかった。
レベセスは立ち上がり、レーテとヒータックの座るソファに移動した。
そして、彼は呟くように言葉を続けた。
「現状、スサッケイ殿は命に別状はない。だが、負傷と出血によるショックで、今は意識がない状態だ。このまま目を覚ませば元のスサッケイ殿に戻るだろうとは思うが。
だが、彼を今の時点では戦力に加えるわけにはいかない。今のうちにある程度今後の方向性について決めねばならんだろう」
ヒータックは微動だにせず、レーテは少し戸惑いながらも深く頷いた。
カタラット国に存在するSMGの調達した宿の一室で、カタラット国の存亡をかけた計画が、カタラット国の人間以外で立案されようとしていた。
三人は状況を分析する。
ワーヘ城での戦闘中、傍に寄ろうとしたスサッケイのみを、砲台と化したゴウは攻撃した。離れた所にレーテやレベセス、『影飛び』の面々がいたのにも拘らず。そして、結果的に全員あの場から撤退こそしたものの、実際に攻撃されたのはスサッケイだけだった。彼を助ける為に躍り出たレベセスにも攻撃は及んだが、それはあくまで攻撃を受けているスサッケイの傍に寄ったからに他ならない。あの攻撃以後、ワーヘ城屋上部から離脱した後の追撃がなかった事を考えると、砲台は己に近づく存在に対して自動的に攻撃しているだけのように思えた。
だが、それはそれで考え物だ。
ゴウという国家の中枢は、いつの間にか、大陸砲の砲撃手となり、砲台に据え付けの存在にさせられてしまった。恐らく、その攻撃にゴウの意志は微塵も存在せず、ただオートで近づく敵を攻撃したに過ぎないという事なのだろう。
それでは、ゴウをそのようにした存在とは一体何なのか。
ギラ=ドリマやツッシーヂを撃った『黒い稲妻』なのか。それとも大陸砲そのものの機能なのか。はたまた全く別の何かなのか。
いずれにせよ、あの大陸砲からゴウを引き剥がすしか、ゴウが助かる方法を模索することは出来ないだろう。そして、あれだけ体が傷んでいる以上、早い時点での治療が望まれる。ゴウを大陸砲から剥がすことで、ゴウの命が尽きる可能性も否定はできないが。
あれは、既にゴウという人間ではなくなってしまっているのではないか?
レベセスがスサッケイに施術をしている間、あらましをレーテから聞いていたヒータックは、そう言わざるを得なかった。
「スサッケイを貫いたという攻撃が、大陸砲のエネルギーがコントロールされ、威力を弱めて発射されたものであるというならば、まだ合点はいく。もちろんどうやったかなどは知る由もないがな。
もし、奴が放ったのがマナ術の≪光矢≫という術だとするなら、だ。もうゴウ=ツクリーバはすでに人間ではないという解釈しかできないと思うが」
ヒータックの考えは、人間はマナ術を使うことができない、という前提に基づいていた。実際、ファルガやレベセスなどの超常の力の使い手、聖剣の勇者を目の当たりにしてなお、マナ術を使っている様は見たことがない。それ故、人間が普通にマナ術を使える状態というのは、やはり人間ではない、という結論に至っていた。
マナ術を使う存在は、魔族。その公式を暗にヒータックは作り出そうとしていた。
だが、レベセスは慌てて否定する。
「いや、そうでもない。ヒータック君が考えるほど、マナ術は難しい物じゃない。やり方さえ分かれば、私は勿論の事、レーテも、ヒータック君も使うことができるんだよ。
マナ術とは、単純に物質の存在エネルギー≪真≫を、様々な現象を引き起こすエネルギーに変換する術の事。≪真≫を変換させるための技術だから、マナ術と呼んでいるに過ぎない」
誰でもできる、と言われてヒータックもいささか動揺する。いや、興奮と言った方が正しいか。幼少期に魔術が使えたらどんなにいいだろう、と考えなかった人間などいないだろう。ヒータックも多分に漏れずそうだった。だが、年齢を重ね、色々なことを経験することにより、理論上はありうることでも実際には起きえない、できないと理解する。理解して納得する。
だが、その前提が覆されたのだ。幼少期の興奮が甦らない方がおかしい。
「普通の人間では、そのやり方がわからんだろう」
「君も、マナ術は使っているんだよ。ただ、君自身が使っているわけではなくて、道具に使わせているわけだが。
実際、マッチを擦るのだって、摩擦熱でリンが燃えるから火が付く。その摩擦のエネルギーを、大気中のマナを集めた上で、マナを変換して摩擦エネルギーと同等の熱エネルギーをマッチの先端に与えてさえやれば、擦らずともマッチは燃える。物質にはそもそもの性質があり、その性質によって現象が起こる。物質の根源であるマナを集め、その性質を発現させるためのきっかけを与えてやることにより、様々な現象を術者の意図通り起こすのがマナ術、という訳だ」
「……理屈はわかるが、そううまくいくものなのか」
「まあ、そう簡単にうまくいかないから、人間にはマナ術者が殆どいないわけだがな。
大気中のマナは大量に存在するが、それを集める術がない。そのマナを集めることができるのが、生命エネルギーの氣というわけだ。術者は氣を体外に広く張り巡らせ、空間に存在するマナを集める。自分の手元……殆どの術者は掌に。そのマナを使って現象を起こすわけだ。つまりは、氣のコントロールが長けている者が術者として長けている、ということだな。マナ術の効果は、どれだけ大気中の『真』を集めることができたか、によるからだ」
「生命エネルギーをコントロールする者が、物質の存在エネルギーをコントロールできるということか」
「氣と真は本質的には同じ物で、万物の根源だからな。ただ、性質が若干異なる。真は氣に触れることで氣になるが、氣しか存在しない状態では徐々に真へと遷移する。
物理法則ではなかなか説明しづらいが、生物としての一部位の肉と食糧としての生肉を考えてほしい。生物としての肉は『氣』でできているが、死骸となった肉は『真』になる。それゆえ、食料を取らぬ人間はいずれ餓死し『真』に変異するが、食料としての肉を摂取すれば、その摂取した部分がまた氣となり、食糧を取った人間の生命力となる」
今まで横で黙って聞いていたレーテが、ぼそっと呟く。
「その理屈でいうと、石の生物とか、光の生物とかもいるということね」
術という概念を全く知らないヒータックへの『氣』と『真』の説明が、隣に腰かけているレーテにも本質が伝わっていた事に、レベセスは若干の驚きを覚えた。
齢十一歳の少女が、これほどに興味を持つのはあまりに意外だった。レベセス自身、術に興味を持ち始め、真と氣の関係について知ったのも大分年齢が上がってからだったからだ。それまでは、魔法という余りに漠然とした存在でしか理解できなかったし、理解しようとしなかったからだ。
レベセスはレーテの質問に答えた。
「あくまで理屈では、だがな。ただ、我々はそいつらを目にすることがあまりない。物質によっては『氣』として存在しづらい物質もあるようだ。それでも若干数存在するのは間違いない。昔の人々はそれを精霊と呼んだ」
「石の根本構成が『氣』であれば、その生命体もいるということか。ということは、おとぎ話で出てきそうな石像に命を吹き込む悪い魔術師とやらも、実在する可能性はあるということだな」
「そういうことだ。まあ、事象の結果だけ見ると、何でもありっぽいがね。同じ物質でも根源構成が『真』か『氣』かによって決まる」
レベセスはこともなげにそう答えた。その辺の文句は神様にでも言ってくれ、と言わんばかりに。
少し間が欲しくて、レベセスは水差しから水をグラスに注ぎ、一気に飲み干す。本当は酒を飲んですぐにでも寝てしまいたいくらいに疲れていたが、まだ事態が解決していない現状で、酒で醜態をさらすわけにはいかない。
「さて、本題に戻ろうか。
あの、ゴウであった存在は、大陸砲からエネルギーを貰ったのか、自ら集めたのかはともかくとして、マナ術である≪光矢≫を放った。
だが、カタリティでの大陸砲の発射では、明らかにそれとは違うエネルギーの奔流を放っている。『真』そのものを放つ術というのは聞いたことがないが、『氣』そのものを放つ術は存在するから、大陸砲は『真』を直接放つ兵器だとみていいかもしれない。そう考えるなら、あの威力はわかる気がする。変に加工せず純粋に放つエネルギーが最も強いからだ。
そして、ゴウであった存在が、大陸砲が集めた『真』を使ってマナ術である≪光矢≫を放ったと考えれば、あの≪光矢≫の速射も合点がいく。自分で集めたマナでなければ、溜めが無くとも放てるだろうからな」
ヒータックはちらりと窓の外を見た。
既に陽は落ち、周囲は薄暗くなっていた。常初夏のカタラット国も、日没後は若干肌寒い。蒸し暑いとまではいかないこの気候は観光名所にはもってこいだが、四季の移り変わりが乏しいと、再訪の楽しみは減ってしまうだろう。
ヒータックはあまり面白くなかった。
彼自身、術が使えないこともあるが、術を用いての戦闘は邪道であるという固定観念があり、術を使っての戦闘に準ずる大陸砲の用途については、あまりいいイメージはない。ただ、脅威であることには変わらないのだが。
「あの術の運用は、大陸砲があるからこそできる。いずれにせよ、ゴウを大陸砲から引きはがさない限りは、ゴウを救い出すことは愚か、この状態を打開する事すらできないだろうな」
「……大陸砲を壊すの?」
レーテが不安そうに尋ねる。
「状況によっては仕方ないだろう。
それに、あれが最後の大陸砲とは思えない。
今回の大陸砲を何らかの形で回収した上で、私が考えるのはSMGとカタラット国の共同の遺跡調査の実施だ。
それが出来さえすれば、今後の古代帝国の研究から、マナ術の研究、そして巨悪の存在にまで近づくことが可能だろうと思っている」
いずれにせよ、大陸砲の奪取が前提なのだと知り、思わずため息をつくレーテ。
あの大陸砲は、危険だ。
レーテの心がどこかで警鐘を鳴らす。
敵対する双方が持つことで、お互いの発射の抑止力になる、という代物ではないからだ。
願わくは、大陸砲はもう二度と出土してほしくない。だが、レベセスの言う巨悪と対するための手段になりうるのならば、ないと困るだろうし、出土すればするほど良いことなのだろうとは思う。
それでも。
大陸砲がないほうが、人々は幸せになることができるのではないだろうか。
レーテには、そう思えてならなかった。
「ゴウに対する次のトライは、私とレーテの二人で行おうと思っている」
レベセスの言葉にヒータックが応じる。
「ゴウに対するには聖剣の力を使うことのできる人間でないとまずいということか」
レベセスは首肯する。
「今回の大陸砲の奪取は、身体能力の問題では成立しない。
恐らく、あの≪光矢≫の術は我々でも躱し切れるものではないだろう。それだけ術の発生後の速度が速いからだ。≪光矢≫はほぼ光の速度で打ち出される、収束された光の束だ。だが、放たれるのがマナの光である以上は、氣のコントロールのできる我々ならば、ある程度対応できるはずだ。
氣をコントロールして光の盾を作り出す。勿論、それほど巨大な物は作れないだろうから、体の全面を覆う氣の光である『オーラ=メイル』の前面を強化し、≪光矢≫の吸収を試みる。とはいえ、基本は回避が前提。理想はレーテの聖剣で全て叩き落してくれればよいのだが」
レーテはぎょっとしてレベセスの方を見る。
いくらなんでも光の矢を全て剣で叩き落すのは無理ではないのか? レーテはそう言いたかったようだが、微笑んでいるレベセスの表情からは、冗談とも本気とも読み取れなかった。ファルガさえいれば、やってくれる。そんな風に言っているようにも感じられた。
「兎に角、二人で別方向から攻める事によって、狙いを絞らせないようにしながらゴウに近づき、ゴウを大陸砲から引き離す。それができれば、ゴウを救える可能性があがる」
「そこに、私も立ち会わせてもらえないだろうか」
ソファに腰かけて話し合う三人以外の声が聞こえ、ヒータックとレーテは思わず腰を上げる。レベセスは腰を上げこそしないが、声の主に対して警戒をしていなかったことを痛感させられた。
声の方には、ベッドで寝かされていたはずの『影飛び』頭領スサッケイ=ノヴィの姿があった。
突然現れたスサッケイの姿に、三人は愕然とする。ほんの少し前のはずだ。治療が終了したのは。あとは失われた体力を睡眠で取り戻すだけだった。
だが、そのスサッケイは直ぐに起き上がってきた。既に体力が回復したとでもいうのか。
「わかっている。今の私では、貴方たちの足手まといになることは。だが、見届けたい。私がその一生を捧げると誓った男の最期を」
体力は回復していない。
寝室からの扉の部分に体を預け、辛うじて立っているがいつ卒倒してもおかしくない。それほどに満身創痍の状態だった。
レベセスはゆっくりと頷いた。
「わかった。
作戦の決行は明朝日の出直前だ。日の出直前にはワーヘ城の麓にいる。それまではゆっくり体力の回復を図ってほしい。ゴウを救えるか救えないかについて断言はできないが、その後の執政は、貴方しかできない。スサッケイ=ノヴィ」
スサッケイは力なく笑った。
ちょっと説明っぽい内容になってしまっています。




