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界遊記  作者: かえで
聖剣と氣とマナと
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狭間のトレーニング

 状況が変わった。

 ガガロには、光龍剣がカタラットにある事は伝えたが、具体的な場所までは伝えていない。それでも、彼の男ならば……ガイガロス最後の戦士、ガガロ=ドンならば、その卓越した行動力で、見つけ出している可能性は十分にある。

 それでも、聖剣は四本揃えねば意味がないとされる。四本揃えたからと言って何が起きるのか、流石のレベセスも知る由もないが、聖剣を三本所持した所で、三本の聖剣を同時に戦闘に用いてくることは不可能だろう。

 聖剣は、それぞれが力を発揮し干渉しあわなければ、ただの良く斬れる、刃こぼれせず壊れない剣に過ぎない。

 ファルガの聖剣を扱う能力を、出来るだけ早いうちに第三段階にまで引き上げ、ガガロに勝つことができないまでも、レベセスが光龍剣と再度所有者契約を結ぶ時間を稼ぐことが出来さえすれば、聖剣の所有構図が二対二になる。

 また、レーテが聖剣を抜くことが出来るというのもうれしい誤算だ。レーテを聖勇者として光龍剣と契約させることができれば、聖剣なしでも短い時間第三段階を引き出せるレベセスを加えると、戦闘構図も三対一になる。三は言い過ぎとしても、こちら側の戦力が二以上になるのは間違いない。

 数的に優位な状況を作り、改めてガガロと話し合いの場を持つ。ガガロが、自身の戦力の優位性を確立した上で交渉に持ち込んできたデイエンでの会談の時のように。

 精霊神大戦争は阻止しなければならない。

 それは勿論の事なのだが、ガガロの恐れる『巨悪』も無視するわけにはいかない。結果的に『巨悪』と戦わねばならぬ可能性はある。ガガロですら恐れる『巨悪』だ。生半可な力で対抗できるとは思えない。

 聖剣の所有、発動条件という二つの要素において、同程度の戦力を手に入れ、武力としては均衡状態を作り出した状態で、『巨悪』に対する情報を得て、決して相手に主導権を与えぬ状態で、『精霊神大戦争』と『巨悪』の二つについて、対抗策を考えていかねばならない。最終的にはガガロ達とも手を組まねばいけない可能性も視野に入れて。

 急がねばならないとは思うが、準備をせずに急いでカタラットに行ったところで、返り討ちにされるだけだ。それだけは絶対に避けねばならない。

 レベセスは、宴の準備を待つ間、どこかで戦闘の模擬演習が出来る場所がないか、とヒータックに尋ねた。ヒータックは、ルイテウ内にはないが、ルイテウ最上部ならば大丈夫だろうと答える。

 レベセスとファルガ、そしてレーテはSMG頭領リーザ=トオーリとの謁見終了後、半刻も経たぬうちにルイテウ最上部にいた。


 


「もう、時間がない。

 話を聞いたらどんどん自分でトレーニングしてくれ。これから陽が落ちて、催してもらえる宴とやらも、ずっとそこでかまけているならば、正直時間は全く足りない」

 ファルガとレーテは返事をするが、これからどうすればいいかなど、わかりはしない。だが、切羽詰まっている事だけは、レベセスの言葉だけではなく、醸し出す雰囲気からも感じ取ることが出来た。

 ルイテウの最上階への階段の先には分厚い鉄の扉があり、そこを押し開けて外に出ると、岩砂漠と見紛うような荒野が広がる。常時突風が吹き荒び、地面に張り付くように茎を這わせる高山植物が所々に見られる以外は、周囲の風景は完全に岩石の灰色のみだ。細かい砂すらも存在しない。そして、空も抜けるような青。人が死後に行き着く世界と表現しても、だれも疑わないだろう。雲は眼下に広がるだけ。

「ファルガ君。君には聖剣の確実な発動方法を覚えてもらって、その後は、聖剣なしでもある程度『氣』のコントロールができるようになってもらう。

 レーテ。お前は、ファルガ君の聖剣のトレーニングをしている間、禅を組め」

「え、飛天龍の上でやっていたのと同じことをするの?」

 レーテはあからさまに嫌そうな表情を浮かべた。

 確かに、疲れる割にあまり面白くない鍛錬だ。飛天龍上での限られた空間で、それほど楽しい鍛錬ができるとは思わなかったが、再び同じような退屈な訓練をさせられるとは。

 だが、レベセスは言った。

「時間は宴前までだ。その後は鍛錬をしている時間はない。とにかく、レーテは『氣』のコントロールの仕方を体感してもらわねばならない。そのあとは、ファルガ君から勇者の剣を借りて、聖剣の能力の引き出し方を実際に習得してもらう」

 ファルガとレーテは、与えられた課題に必死に取り組んだ。

 レベセスがファルガとレーテに課した鍛錬とは、『氣』に関する鮮やかなイメージを浮かべる事だ。聖剣を持っていようと、そうでなかろうと、氣のコントロールを身に着ければならないという点では同じ事だ。

 下腹部に力を入れ、体内に力の循環を感じられたら、『氣』の流れが体を一回りしてから下腹部に戻る様にイメージをして、氣を発生させると言われる丹田で氣を増幅させる。増幅させた氣を使って高めた身体能力を維持して活動しつつ、増幅させた氣の一部を使って活性化させた丹田で、更に氣を発生させる。

 これを連続で行う事で、常時身体能力を高めた状態が維持される、というのだ。

 理屈でいえば、高速増殖炉と同じだが、それを体内でイメージすることは非常に難しい。ましてや、そのイメージを意識しすぎることなく常時繰り返すことは、一朝一夕ではできないだろう。レベセスは、それを『息をするように』『人が意識せずに体を動かすように』スムーズに自然な感じで行えるようになるまで繰り返すよう指示していた。

 ファルガは聖剣なしで、レーテはファルガから勇者の剣を借りて、それぞれ氣のコントロールのトレーニングを、夕日が雲の向こう側に姿を隠すその瞬間まで、休みなく行い続けた。


 


「今日はこれで終わろう。これからは、頭領リーザがもてなしてくれるらしいから、遠慮しなくていい。今日はたらふく飯を食い、ゆっくりと休め。すぐに寝なければいけないほどは疲れていないだろうがな。

 明日、出発は早いが、正直飛天龍に乗ってしまいさえすれば、キャビンの上にごろ寝していても何の問題もないだろうとは思う」

 腕組をして、少し物足りなさそうではあるものの、満足そうな笑みを浮かべて見下ろしているレベセス。だがその視線の先には、大の字になって横たわっている二人。

 ファルガとレーテは全身で息をしていた。レベセスの口から洩れた『疲れていない』という表現は、一体何を見て発せられた言葉なのだろうか、とファルガとレーテは思った。

 レベセスの二人に施したトレーニングは、それほどにハードな物だったということなのだろうが、レベセスにはその自覚がないということか。

「……」

 何か言おうとしたが、ファルガの口から漏れるのは呻き声だけだ。だが、その口元にはかすかに笑みが浮かんでいるようにも見える。少年にとって、今回のレベセスのトレーニングに関しては、かなり手応えがあったということなのだろうか。

 それに対して、レーテの表情からはかなりの不満が感じられた。

 トレーニングを積んで、たった半日しか経っていないにも拘らず、レーテの聖剣の力の引き出す力はあっという間に開眼した。その天賦の才は括目すべき点がある。

 ほんの少し前、聖剣の発動テストを行なった時の事。

 ファルガが、なんとか聖剣なしで第一段階の能力を微小ながら発動させることが出来るようになっている中、レーテはなんと聖剣の発動状態を第二段階にしてしまっていた。

 恐るべき成長速度だ。

 身体的には相当きつかったが、それでも何とかファルガに対して余裕を見せるつもりで、Vサインを送るレーテ。だが、ファルガの驚いたような表情を目にした直後、レーテは突然活動パフォーマンスを落とす。

 聖剣に送り込む氣の量と、増幅されて戻ってきた氣の量が余りに違い過ぎ、体内に留まる氣の量が体内の飽和量を瞬間的に上回ったのだ。

 突然レーテを襲う強い吐き気と倦怠感。全身冷汗まみれ、顔を紅潮させ、鼻汁と涎とが流れ落ちる。

 レベセスは直ぐに右腕でレーテの腕を掴み、左腕を天空に差し上げる。ややあって、レベセスの左掌に光の玉ができあがり、それは上空に飛んで行った。

 全身で息をするレーテは、思わず呻いた。

「……一体何が起きたの? 私の身体に」

 レーテはそう言いながら、顔をタオルで拭い、突然襲われた不快感に対して少し怒り気味で言葉を発する。

 レベセスは、満足気な表情は隠さず、しかし、言葉では厳しい内容をレーテにつきつけた。

「何を言っている。これは、その増幅された氣をコントロールするトレーニングだ。コントロールしなければ大量のエネルギーが体に流れ込むに決まっているだろう」

 つまり、聖剣の第二段階を引き出したレーテが、ファルガに自慢する為に意識をほんのわずかに聖剣と丹田の双方から離した瞬間、増幅された生命エネルギーである『氣』が体内に一気に押し込まれてしまった。その結果、体内に活動エネルギーが過剰供給された状態が起きてしまったのだ。

 『氣酔い』。

 『氣』も他の食べ物や飲み物、睡眠と同じで一定量を超えると暫くは必要としなくなる。だが、それでも生命エネルギーを体内に入れ続けると、いずれ体が活動エネルギーの満腹状態を迎えてしまう。飲み過ぎ、食べ過ぎと同じ状態だ。

 そうなれば、残るのは不快感のみ。

 本来であれば、聖剣に注入し、何倍もの量になって跳ね返ってきた『氣』のエネルギーを、五感のアップ、身体能力のアップに割り振るのだが、その作業を忘れたならば、体に戻ってきた大量の『氣』の行く先が無くなってしまい、暴発してしまう。

 それを今回レーテは体感してしまった。

 レーテの体内に貯めこまれてしまった氣を、レベセスが強制的に解放しなければ、レーテの身体は過剰な氣によって傷つけられ、生命力であるはずの氣が、少女レーテに致命傷を与えてしまったことだろう。

「お前も面白いタイプだな、レーテ。

 普通ならば、氣をコントロールして集めることが出来ずに苦労するのだが、お前の場合、氣は簡単に集められてしまうが故に、簡単に第二段階に到達した。だが、第一段階で氣のコントロールの訓練を積んでいないから、大量に返ってきた氣を捌ききれなかった、ということか。

 ……あまりないケースだな」

 レベセスは、そうレーテに語り掛けると、一度言葉を切り、大の字に横たわったままのレーテとファルガに対して、改めて交互に視線を配る。

「そのまま休みながら聞いてくれ。

 聖剣に、何故発動段階があるのか。それを簡単に説明する。

 聖剣の発動段階。それは、氣のコントロールの習熟レベルに準ずる、と考えて差し支えない。

 では、第一段階、第二段階、第三段階というのは一体何が違うのか。

 簡単にいうと、『次元』が上がる」

 突然レベセスから発せられた言葉に、ファルガとレーテは思わず首を傾げる。

「まあ、ニュアンスとしてはわかりにくいだろうな。

 今回のギガンテスの件。ファルガ君は見えていたと思う。レーテ、お前は見えていたか?」

 レベセスに質問を投げかけられたレーテは、事もなげに応える。

「見えていたわよ。当たり前じゃない」

「では聞こう。その存在は何だった? どの程度の大きさで色は? 形は?」

 それは……、と答えようとして、ふとレーテは自分が、そのギガンテスと呼ばれる存在をはっきり表現できない事に気付いた。

 公判廷の床から現れた何者かがいたのは間違いない。だが、その色も形も大きさも、何一つ思い出せない。

「あ……、あら? 見た筈なのに、何も思い出せない……。ファルガが向き合っていた筈なのよね。確かに。なのに、その情景も思い出せない……」

 レベセスはニヤリとした。

「では、ファルガ君はどうだ?」

 ファルガはゆっくりと目を閉じ、思い出そうとした。

「巨大な人型……。

 毛むくじゃらで、濃い茶色の体毛を持っていたけれども、そいつは猿の特徴は備えておらず、どうしても猿には見えなくなりました。最初は猿のように見えたけれども、よく見ると毛深い人間。ただ、表情は思い出せないけれど、迷子になった小さい子供が泣いているような印象を受けました。

 ……だから、俺は熊だとおもったんだろうな……」

 レーテは横たわったままファルガの方を向く。

「どうして? なんでそんなことまで覚えているの?」

 想像にしては、余りに確信的にギガンテスの容姿を語るファルガに思わずレーテは不信感を露わにした。

「本当に見たの?」

「見た……というより、そう感じられた、という感じだよ」

「……その知覚の差が、第二段階まで到達していたファルガ君と、氣のコントロールを全く身に付けていなかった時点でのレーテとの違いだ」

 レベセスは一度言葉を切り、少年と少女を見比べた。

 いつの間にか、起き上がることが出来る程度に体力を回復したファルガとレーテは、むくりと起き上がり、胡坐を掻いて座っている。

「人間の脳というのは面白い物でな、得た情報を五感で処理しようとする性質がある。なので、見たわけでもないのに、見た物として捉えるし、聞いたわけでもないのに聞いたものとして捉える。第六感で感じたことを、あたかも五感で起きたイベントとして勘違いしたまま処理をするというのだからな。

 まあ、それは進化の過程で光を視覚で捉え、空気の振動を聴覚で捉え、物の味を味覚で、硬度軟度を触覚で処理するようになってきた人間ならば、仕方ないのだろう。それが万人共通の知覚だからな。それでも、同じ視覚であっても、同じ色を見て、赤と解釈したり、ピンクと解釈したりすることもあるが、それは若干の個人差にある。同じ食物を見ても、おいしそうに見えるかまずそうに見えるか、ということに似ているかもしれない。

 ……この世の中にある構成物の情報の全てを、光や音として捉えきれる筈もない。当然、人間の持つ感覚器官では拾いきれない情報も無数に存在する。

 それが『氣』であり『真』だ。

 氣もマナも確実に存在はする。だが、捕えられる人間はごく一握りだ。

 聖剣を発動させると、音と光と風とで捉えられるかもしれないが、実際はそれ以外にも様々なエネルギーを放出している。

 二人とも、今ならそれが解るな?」

 ファルガもレーテも無言で頷く。

 ファルガはその場でゆっくりと立ち上がった。それに釣られるように、レーテも立ち上がる。

「レベセスさん、聖剣に段階があるのは何故なんですか? その『次元』というのは?」

「これもなかなか説明しづらい。

 だがな、先程のギガンテスのように、一般人には存在を知る事も認識することもできない生命体がこの世には無数に存在する。勿論、我々に知覚できて、ギガンテスには認識できない存在もいる。存在はある程度認識できるが、見る事も触れる事も出来ない存在を『高次生命体』と呼んでいる。この世界は、我々のいる次元と奴らのいる次元が重なり合っている。それが何かの拍子に認識できてしまう事がある。

 所謂、心霊現象だとかそういった類もその一つだな」

「『高次』というからには、我々より能力的に上の存在、という事なんですか? でも、上の定義って何だろう」

「ファルガ君、所謂『高次生命体』といっても、我々より全てにおいて優れている訳ではない。我々が知覚できないので、畏怖を込めて『高次』と呼んでいるが、向こうからしても知覚できないわけだから、向こうにとっても我々は恐怖の対象なんだよ」

 理屈は何となくわかったように頷く二人。

 見えなければ何か起きていても、認識できるはずもない。だからこそ、どことなく納得していないように見える。

 レベセスは説明を続けた。

 どうせ納得できない者はいつまでたっても納得できるはずもない。

 むしろ、ある時ふと胃の腑に落ちてくる類の感覚なので、理解するまで待つ必要もない、と考えたからだ。

「さて、聖剣だが、発動段階が上がると、身体能力も当然上がる。聖剣内で増加した氣のエネルギーが体に戻される量が増えるからだ。

 所謂身体能力という面でみるなら、聖剣の第一段階は、通常の三倍から五倍、第二段階は十倍から二十倍、そして、第三段階は五十倍以上になると言われている。

 私自身が使った時はそんな感じもしなかったが。個人差もあるのだろうな。

 そして、実はそれ以外にも第一段階から第三段階までは明らかな差がある。それが、先程の『高次生命体』の認識だ。

 第一段階は、単に身体能力が増加するだけ。

 第二段階は、『高次生命体』を認識することが出来る。だが、その高次の生命体に対して干渉することが出来ない。

 第三段階は、その高次の生命体について、干渉することが出来るようになる。

 どちらかというと、聖剣の本質はそこにある。

 つまり、聖剣を手に入れた者が全てを支配する力を手に入れる、とはそういう意味なのだろう、と私は思っている。

 解りやすく言えば、第一段階ではあのギガンテスを認識することはできないが、第二段階ならば認識することはできる。第三段階は、あのギガンテスたちに対して干渉できる、という事だ。つまり、彼等を護る事も出来れば捕えたり倒したりすることも可能になってくるという事だな。

 そして、無論意思の疎通も可能になる。意思の疎通と言っても、前提の価値観が異なるから、基本的には何の話し合いにもならん場合が殆どだがな」

「……それで、俺はあの巨大な人型の何かを認識することはできたってことか」

 ファルガの納得を一つの区切りとしたかったレベセスは、そこで話を一度打ち切った。

「さて、いろいろ分かった所で、下に戻ろう。もう時間だ。

 当然、今の氣のコントロールの能力が満点であるはずもない。カタラットまでの道中で、また氣のコントロールのトレーニングは続けてもらう」

 レーテとファルガの表情が一瞬苦悶に歪む。

 どちらかといえば、レーテの方がその嫌悪の度合いは大きいようにレベセスには感じられた。

 思わずレベセスは苦笑する。だが、そこで元聖勇者は甘やかすことはしない。

「……レーテ。

 本来であれば、お前もファルガ君のような鍛錬を積まなければならないはずなんだ。聖剣の力を自在に操りたいのなら。

 この短時間で、聖剣の力を引き出せるようになっただけでも良しとしろ。そして、明日以降の飛天龍上で、鍛錬を続けるんだ。そうすれば聖剣がなくとも、力をある程度発揮することは可能になるのだからな」




 ファルガとレーテは部屋に戻ると、汗を拭い、サキの準備したSMGの正装に着替えた。ヒータックとレベセスは他のSMGの人間と情報交換を行なったようだが、宴直前のトレーニングで疲労の頂点に達していたファルガとレーテは、食事もそこそこに自室に戻り、死んだように眠った。

 翌朝、世界中で最も日の出の早いルイテウからですら太陽の臨めぬ時間に、ファルガとレーテ、ヒータックとレベセスの四人は、カタラット国へと出立した。

 早朝のこともあり、見送りは誰もいなかった。

 ただ、『変わる風景画』に、SMGの兵器、飛天龍が描かれるのを、その所有者は安楽椅子から、身動きすらせず見つめていた。

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