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界遊記  作者: かえで
ラマでの出来事
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ジョーという男4

少し短めですが……。ジョーとファルガの勝負を描くための準備段階です。

 『犯罪者は現場に戻る』。

 どこの世界にも、同じような表現がある。だが、それはある意味では真理だからこそ、表現を変えて用いられるのではないか。

 村人の一人が、美しき二人組が『鬼の巣』の広場にいる事に気づいたのは、日も高く登った頃だった。人肉嗜食のジョーが、村からの逃走とは真逆の、標高的に最も高い鬼の巣のある広場に戻り、留まった事は誰しもが予想し得たわけではない。発見したこの青年も、山狩りと称して森の中を探し回る村人たちと共に足を棒にして森林を探し回った。しかし、成果は得られず、村に戻ってくることになった。

 青年は山狩り後、なんとなく足を『鬼の巣』の方に向けた。だが、それが功を奏した。

 レナは無事だった。特に拘束されているわけではない。だが、不思議とジョーのそばから離れようとしなかった。ともすれば、ジョーの世話をしているようにさえ見える。だが、当のジョーは一抱えもある石に腰掛け、空を仰いだままピクリとも動かない。

 師の瞑想の邪魔をせぬように、世話を行う弟子という表現が正しいだろうか。

 若者は何かに憑かれたように、その光景を見つめていたが、その自分の行動の異常さに驚き、そして、眼前でのレナの行動の異常さに驚いた。

 眼前のジョーに怯え、そんな自分に怯え、若者は逃げるようにその場を立ち去った。

「……あの男性に、我々の居場所が知れてしまいました。私は旅に出なければなりません」

「……私に何かお手伝いできることはありますか?」

 レナからは信じられない言葉が漏れる。そもそも、連れ去られたはずのジョーの身の回りの世話をし、ともすれば、彼の逃亡の手助けをしようとすらしている。

「私からひとつあなたにお願いをすることがあるとすれば、馬を一頭準備して頂きたいということでしょうか。それと、ファルガという少年にのみ抜けるというあの剣。それを彼に持ってきて貰いたいのです。

 私は、己がこの世界を守るために生まれたと信じて疑っていません。神は、私に彼と同化し、聖剣を使わせようとしているのでしょう。今の私は世界を守るのには力が足りない。ですが、彼と同化することによって、それは果たされるでしょう」

 レナは一瞬悲しそうな顔をした。自身がジョーの役に立てないことに対してなのか、それとも、ファルガとの『同化』の意味が分かっているからなのか。

 しばしの沈黙のあと、レナは頷いた。

「馬は、うちの馬が村の入口にある厩舎に繋いであります。その子を使ってください。それと、世界を守る旅に私も連れて行ってもらえませんか?」

 レナの懇願とも取れる申し出に、ジョーはにこりと微笑んだだけだった。

 ジョーはレナの首にロープをかけ、初めて拘束した。だが、その縛りもレナを窒息させるほどの強さではなかった。ただ、レナの首から伸びるロープがジョーの左腕に固く結ばれた。結び目は固かったが、ジョーの腕をきつく縛り上げるものではなかった。

 レナの美しい薄茶色の双眸は一瞬見開かれたが、ジョーに全幅の信頼を寄せているのか、全く抵抗する様は見せなかった。ただ、顔を少し背け、俯いただけだった。

 レナは感じているのだろうか。ジョーの作戦は、村を横切る際、レナを人質のように見せ、村人に手を出させないこと。そして、厩舎までたどり着いたところで、レナを馬に乗せ共にこの地を去る計画であろうということを。

 彼女の脳裏には、あの時の言葉が繰り返されていた。

 食人鬼が逃げ出したとされる、美しき天使の誕生パーティー。悪魔は営火の明かりを頼りに、確かに少女を小脇に抱えた筈だった。

 少女は悲鳴を上げる。悪魔に魅入られた少女は、死ぬしかない。しかも、快楽的な死が保証されているとも言われるが、その一方で未来永劫救われぬ地獄に落ちるとも言われる悪魔に導かれた死。

 今まで経験したことのない高さまで一気に連れていかれたレナ。小脇に抱えるのは美しき食人鬼ジョー。そこで美神の囁きが始まる。

「私は、貴女の力を欲しています。私は、世界を守る為に生まれてきた。そう信じて疑いません。その、世界を救うための旅に、私は貴女を連れて行きたい。手を貸していただけませんか?」

 レナは、遠くなる意識の中、首肯した。

続きを書いていて、あ、これ投稿しなきゃ、と思ったらすでに投稿した後でした。疲れ溜まってるなー。


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