聖剣の向こう側にあるもの
古代帝国遺跡探索隊の先発隊に続き、救援隊も遭難した、という報告を受け、ホストとなったカタラット国仮王代理スサッケイ=ノヴィは頭を抱える。
彼は成り行き上、王という立場で国家のトップとして采配を振るわざるを得ない環境に身を置いているが、元々は現場主義であり、今もそこに行きたい衝動に駆られている。
「俺が行けば、救援隊の遭難など無かったろうに……」
そう呟くだけの実力が、スサッケイにはある。この場に集まった各国の代表より、やはり技術的にも体力的にも自分の方が上なのだ。
執務室で嘆く彼の下に、更に不吉な報が届けられた。
『国家連携』に応じなかった国家の幾つかが、独自に遺跡に軍を送りこみ始めた、というのだ。レベセスは大丈夫だ、と言っていたが、『国家連携』そのものに無理があったのではないか。
彼が心酔したゴウ=ツクリーバであれば、果たしてどうしただろうか。彼の事だ。恐らく、先代王ビリンノ=カタラットならばどうしただろうか、という思考の元、行動するだろう。そして、ビリンノ公の思考を紐解いてみるならば、カタラット国は目立たずに観光国家でいることを選択しただろう。
だが、それでは他国を押しのけてカタラットを一位国家にすることはできない。ゴウはそう考えたはずだ。カタラットを一位にする。それこそが古き強きカタラットの姿。その再興こそが彼の悲願。
そして、自分はゴウの指示の下、目的を達していたはずだ。ゴウの私兵集団『影飛び』を用いて。
と、ここまで思考したところで、その思考が無駄であることに気づき、スサッケイは考えるのをやめた。
自身が王の職務を遂行するにあたって、目指すのはゴウが目指した一位国家。それは軍隊で他者を攻めるのではなく、この国家で出来ることで世界一を目指す。その手段としての『国家連携』を用いたのだ、と。彼は強く思い直した。それは半ば自分に対する呪いにも似ていた。
ドアがノックされ、入室を許可すると、現在スサッケイの片腕となって国家統治と国家連携の二つを切り盛りしているレベセス=アーグが入ってくる。
今でこそスサッケイの片腕として辣腕を振るっているが、元々はラン=サイディール国の近衛隊長経験者であり、先代のドレーノ国総督でもあり、そして元聖剣の勇者・聖勇者でもあった。
現在でもそうだが、彼はもう一人の片腕ヒータック=トオーリと同じく、SMGの特派員だ。一国内での活動に留まらない広域の活動を許され、自分の考えの元SMGの物的人的資源の使用を許可された、通称『フリー』と呼ばれる特別階級の特派員だ。
その彼が、何故カタラットの王の片腕という、言ってしまえば小さな物に収まっているのか。
いや……。
彼はカタラット国王の右腕という地位を必要十分にうまく使い、迅速に行動する。『国家連携』という壮大な計画を立案、実施に移したのは、この男レベセスだ。
スサッケイは、カタラット国の王という立場でそれを指示しただけ。しかし、スサッケイである必要はない。カタラットの王の肩書がある者ならば、誰でもよかったのだ。
ならば、彼がこの国の為政者となればよかったろうに。
だが、レベセスはそれを拒否する。
今回の件が終わったらまた彼は旅立たねばならぬ。その時に、この国家の統治者としていては、本来の目的を達することが出来ないからだ。
「レベセス殿。貴方の指示通り、私の部下たちを各国に斥候として飛ばした。その結果、今回の不穏な報だ。
正直な気持ちを言おう。まだ成熟していない各国にとって、『国家連携』は早すぎたのではないか?」
レベセスはニヤリと笑う。
「正直に言うと、私は早いと思う」
「……やはりそうだな。だが、それでもそれをする必要があったと」
「その通り。
今回の遺跡探索隊の募集で、実際に『国家連携』に賛同して人材を送ってきた国家が約半数。それ以外の国家は拒否か完全無視を決め込んでいる。
不参加国家の不参加の理由。
それは、『国家連携』で人材を取られることを危惧する意味合いもあるが、それ以上に遺跡探索隊が調査に入った遺跡ならば、後から進入すれば安全が確保されると考えているからだ。そして、あわよくば、出土した新技術の独占。それを狙っているのだろう。
遺跡探索隊が運び出せる出土品などたかが知れている。それに、出土したものを全ての国家で平等に分けるとは言っても、現実的にはどこまで可能か、彼らからすれば不明だからな。
今入っている情報だけでも、『国家連携』要請拒否をし、独自の軍を遺跡内に送り込んでいる国家は十数か国。送り込んだ部隊の規模にもよるが、最大の兵力を送り込んだのはノヨコ=サイ国だ。ラン=サイディールの機能停止の間隙を突き、少々の越境と共に旧都テキイセ内にある遺跡から軍を送り込んだと聞いている。
だが、その国家のうちの殆どは遺跡について情報を殆ど持っていない。遺跡がどんな状態なのか、どういうものなのか、といったごく基本的な情報も、一部の単身調査をした考古学者から、言い伝えのレベルで聞き及んだに過ぎない。
そんな状態で、今まで入りたくても入れなかった遺跡に、世界を挙げて調査の為に入り込むことをカタラットとSMGが宣言したため、後れを取ってはならぬ、とほぼ何の準備もなく軍を送り込んだ国家が殆どだ。実質何も機能はしないだろう。
愚盲な判断をした為政者は、自分の判断を呪うはずだ。
遺跡の探索は時間が掛かるし、時間を掛けねばならん。特に古代帝国の様な特殊な遺跡は。
……遺跡は宝船ではない」
レベセスは少し悲しそうな表情を浮かべた。
『国家連携』を提唱した彼の言葉により、間接的に数多くの何も知らない人間達が死に至るかもしれないのだ。だが、それを気にしていては、世界は救えない。そう割り切っていた。
本当に欲しいのは、古代帝国の技術ではない。
古代帝国がどのような技術を持っていたとしても、古代帝国崩壊の憂き目にあったことに違いはない。古代帝国以上に古代帝国の技術を使いこなせる文明は存在しないだろう。
少なくとも、『巨悪』に対抗するためのメインの戦力とはなりえないだろう。それでも、何も打つ手がないよりはましだ。『巨悪』と事を構えるにあたって、少しでもプラスになれば、と考えての今回の活動なのだ。
その出土した技術が、画期的な解決策になればそれに越したことはない。
今回のカタラット国を襲った『大陸砲惨』の様な悲劇を起こす事もあるかもしれないが、この大陸砲もきちっと管理しさえすれば、『巨悪』に対抗できるかもしれぬ技術の一つだったはずだ。その証拠に、大陸砲の出土に対し『巨悪』は反応してきた。大陸砲奪取の為のギラの派遣と黒い稲妻の乱撃は正にそれなのだ。
先の『精霊神大戦争』において、『巨悪』迎撃の為に大陸砲を使用しなかったとは考えづらい。浮遊大陸が上空にあった以上、大陸砲と同じかそれ以上の放出系兵器を古代帝国は有していた筈なのだ。
それでも敗れ、浮遊大陸は墜落した。そして、その後『巨悪』は撤退した。
古代帝国の遺跡からの出土品ではない、何らかの方法で『巨悪』を撃退したのかもしれないが、違うかもしれない。大陸砲やそれを上回る、存在の確認できていない兵器が、古代帝国の滅亡と引き換えに『巨悪』を退けたかもしれないのだ。
それをレベセスは知りたかった。
世界を滅ぼしかけた『巨悪』の存在があるのは事実。そして、何らかの形でその占領に抗ったのも事実。もし、そのきっかけが古代帝国の技術で行われたなら、それも対『巨悪』として準備しておかなければならない。
現在、ガガロとフィアマーグが探しているのは、恐らく古代帝国とは何ら関係ない別の方法。
それをガガロは知っている筈。そして、ガガロの仕えるフィアマーグが現存するならば、フィアマーグもそれを知っている筈なのだ。ガガロの話では、まだ自由の利かぬフィアマーグの指示に従って行動しているとのこと。
その情報もレベセスは知りたかった。
恐らく。
『聖剣をすべて揃えた者は、圧倒的な力を手にすることができる』。
小さい子供でも知っているこのフレーズは、真実なのだろう。そして、その力こそが『巨悪』に抗う力になるのだろう。
そして。
『国家連携』を進めた真の目的。
それは、今のこの世界に、言い伝えに過ぎなかったはずの古代帝国の技術に興味を持たせるため。
その為には、大々的に遺跡を調査しなければならないが、世界崩壊経験後の現状、無国家時代を経て再成立した国家のレベルといえば、村に毛が生えたくらいだ。現存する最大級の国家ラン=サイディールやジョウノ=ソウですら、『精霊神大戦争』前の都市構成で考えると、規模としては、せいぜい巨大な一都市に過ぎないとされる。それほどに、人々は激減していた。
あの当時の人口と技術ですら、追い返すのがやっとだった。現在の人口や技術ではとてもではないが太刀打ちなどできないだろう。
もはや、一刻の猶予もない。
強制的に古代帝国の技術に触れさせることで、人々の思考や技術を底上げしなければならない。
この当時のレベセスの判断が理に叶った物なのか、それとも単なる無謀な策だったのか、という点については、未だに学者の判断は分かれる。
だが、人間の社会の再成熟度合いに対して、『巨悪』の再来襲までのサイクルがあまりに早すぎる。三百年では文明どころか文化が若干変化して終わる程度だ。過去の技術を取り戻し、圧倒的な戦闘力を取り戻すなどありえない話だろう。
理想は、全ての国家が『国家連携』に呼応して隊を組織し、遺跡を調査して再利用できる技術を確定・定着させる事。
だが、やはりスサッケイの言うように、古代帝国の技術は現代の人間には早すぎたのだろう。自国の人民を掌握できない国家が殆どの状態で、国家が連携して防衛に当たる、などとは夢物語だ。
レベセスは人々の進歩の遅さを呪う。
だが、呪ったところでどうしようもない。
『巨悪』は来てしまう。
その為の対処なら、幾ら対策を講じてもし過ぎる事はない。
「スサッケイ殿。引き続き、各地に送り込んでいる『影飛び』からの報告を逐一私に下さい。現地の特派員と『影飛び』では、恐らく諸々の能力において『影飛び』の方が勝っているでしょう。しかし、情報の伝達能力に関しては特派員の方が上です」
「つまり、レベセス殿は各国の兵士に『影飛び』を送り込み、情報を探らせてSMGの特派員に情報を送らせる。そういうことですな。
確かに、『影飛び』は戦闘に特化した人間の集まりです。貴方の狙いはよくわかりました」
「お願いします……」
レベセスはそういうと、不安そうに鉄鉱石の鉱山跡地の方角に向け、思いを馳せた。
ガガロたちの追う方法は、聖剣が絡むはず。だからこそ、彼らは聖剣全ての入手を望んだ。だが、彼らの方法は些か強引過ぎた。『巨悪』に対抗するために、この世界の犠牲やむなしのスタンスは、レベセスとしては同意できない。
そんな彼らに対抗する為に、ファルガとレーテの力が必要だった。純粋に自分の愛娘であることと、親友であった男の息子であることは度外視しても、ガガロに対抗できる彼らに何かがあってはまずい。
「レベセス殿。一つ教えてはくれませんか」
遠く遺跡に思いを馳せていたレベセスに、カタラット国王スサッケイ=ノヴィは尋ねた。
「貴方は何か隠していますね。
別世界からの侵略者『巨悪』に対するために、古代帝国の兵器と聖剣の力を揃えようとしている。そして、その力で迎え撃とうとしている。
それはわかります。
大陸砲にしても、聖剣の勇者……とりわけ、貴方のご令嬢レーテの聖剣の勇者としての力にしても、貴方の説を裏付けるに足りるものはある。
だが、それだけではない。
かといって、その戦役後貴方がその力を使って世界を平定しようとするとも思えない。
言い伝えでは、『精霊神大戦争』は、神と魔王の戦いだそうです。しかし、貴方は『精霊神大戦争』を『巨悪』対この世界と位置付けている。その微妙なズレが、私にとっての違和感となっています。
話してくれませんか?」
レベセスはぎくりとしてスサッケイの方を見た。
背丈こそ小さいものの、膨れ上がるほどの筋肉を持つ武人が、今ばかりはとてつもなく慧眼の王として彼の目に映る。
いや、このスサッケイ=ノヴィという男、実際に慧眼の持ち主なのだ。ともすれば、主であるゴウ=ツクリーバや、先代の王ビリンノ=カタラットよりも。
それは薄々感じていた。だが、この発言で、レベセスは確信する。
スサッケイは為政者としての目も持ち合わせている、と。
先を見越す目、発生した事態の目先だけの理解ではなく、その事態の裏を読み、水面下で何が行なわれていて、何が今後起きてくるのかを読む、先を見通す目をもっている、と。
「……わかりました。
お話します。といっても、スサッケイ殿がご存じのことは大筋でそのままです。
ただ、幾つか貴方の知らなかった……通常であれば知りえないピースの存在を織り交ぜることにより、一つに繋がるでしょう。
その中身は、私の推測も混じっています。しかし、間違っているとは思わない。
そして、この件は他の人には知られないようにしてください」
スサッケイは頷いた。
レベセスの話は、スサッケイにとっては衝撃だった。しかし、同時に酷くしっくりくる内容だった。
レベセスの推測は、『精霊神大戦争』の性質が従来語り継がれている物とは異なっていた。
それは、『精霊神大戦争』は神と魔王の戦い、ではなく別の世界からの侵略者に対抗するための人類が存亡をかけた戦争ではなかったのか、ということ。
神と魔王の戦い、と位置付けたのは、あくまで『精霊神大戦争』後の人々であり、その時代の人間は誰もそれについて言葉を残していない。むしろ、神と魔王という存在は後付けであり、人間を含めた生きとし生けるものすべてが『巨悪』に抗った、という戦いの記録こそが『精霊神大戦争』ではないのか、ということ。
ガガロは、まだ見ぬ魔王フィアマーグとコンタクトを取っているようだ。もし、フィアマーグが実在するならば、神ザムマーグも実在するはず。そのザムマーグより、聖剣を揃えた際の力について啓示があれば、それを目指して尽力すべきではないか、ということ。
以前ドレーノ国総督であった頃には、レベセスも『精霊神大戦争』と『巨悪』の襲来は別物であり、どちらかを優先すべきかの問題だと考えていた。そして、『巨悪』を憂うガガロと、『精霊神大戦争』の再発生を防ぎたいレベセスとの間で、対立した。
だが、『精霊神大戦争』そのものが『巨悪』との闘いを指すならば、尽力の仕方が違ってくる。神と魔王、人間と魔族ガイガロス人との戦いというのは、実はそう見えていただけで、実は神と魔王、人間とガイガロス人は『巨悪』との戦いで共闘していたということになる。
レベセスは、ドレーノからカタラットでの出来事を経験してきて、そんな、従来の学者たちが唱える『精霊神大戦争』=神対魔王の戦い、という構図がそもそも間違っているのではないか。そう考えるようになってきていた。
そもそも、フィアマーグが魔王でザムマーグが神だという定義も、後の世の解釈だ。
『精霊神大戦争』では、フィアマーグが爬虫類人を率い、ザムマーグが古代帝国の技術を持つ哺乳類人を率い、対『巨悪』戦線を敷き共闘した、と考えるとしっくりくる。仮定の上に仮定を重ねてこそいるが、この構図の結果が一番現状にそぐっているのだ。
その一つが、聖剣を抜くことのできるガイガロス人の存在。そして、聖剣の発動はできないが、その第三段階の氣のコントロールはできている男、ガガロ=ドン。聖剣が魔王に対抗するためのものであるならば、その存在そのものが矛盾している。
そして。
親友の息子、ファルガ=ノン。
ガイガロスと人間の血を引きながらも、聖剣を発動できる能力も持ち、更にガイガロスのように氣のコントロールもできるようになった。
さらにその矛盾は広がる。聖剣を介する氣のコントロールより、介しない氣のコントロールの方が、エネルギーの効率が良い。
何故、氣のコントロールをさせる為の道具である聖剣を介しない方が、氣のエネルギーの効率が良いのか。それは、ファルガも疑問に思っている事だった。
その体験はレベセスにもある。ただ、聖剣を使用しない方が、消耗が激しいため、聖剣使用に頼っているだけで、聖剣を介しない氣のコントロールの方が効率は確かに良いのだ。
「スサッケイ殿。どう思う?
既存の考え方では矛盾としか思えぬ内容が、考え方を変えると、途端にパズルにピースがはまるように、腑に落ちるのだ」
スサッケイは言葉に詰まった。何か恐ろしく湧き出す感情はあるのだが、それをうまく言葉に紡ぐことができない。言葉にして表現しようとすると、どうしても思考の焦点からずれてしまう気がして、それが恐ろしくて言葉を口にできないのだ。
「ファルガは、ジョウノ=ソウ国でテマ様に会ったことで、幾つかの壁を超えたようです。
その一つが、氣功術≪読≫。
この氣功術は、物体に残った『氣』や『真』を読み解くことで、その氣がその物質に付着滞留した時の『氣』の持ち主の思考の記憶をたどることで知識の共有ができる、という、まあえらく胡散臭い術です。しかし、奴はそれで古代帝国遺跡探索隊のテストをほぼ満点で突破しています。しかも、間違えたところに関しても、私にはこう言いました。『あれは、俺の方が正しいです』と。
出題者の意図を読み、出題者の望む通りの答えを書きつつ、真相はこれだ、という回答者など見たことがない。あれは≪読≫を会得していないとできない芸当です」
レベセスは大きくため息をつく。
「その≪読≫を身に着けたファルガが、ジョウノ=ソウ国で読んだ本に書かれた内容で、面白い光景が浮かんだといいます。
奴は見たこともない四聖剣のうちの一本、刃殺しの存在を知覚していました。そして、勇者の剣の背後に一本の大剣を。光龍剣の背後に兜を。死神の剣と刃殺しの背後に甲冑を見ていました。
この存在『超神剣の装備』こそが、先の疑問、聖剣の存在意義なのではないでしょうか」
「つまり……、超神剣の装備を使いこなす者を育てる為の教育ツール。それが聖剣の役目……」
「もっと言ってしまうと、哺乳類人である我々に『氣』のコントロールを身に着けさせるための教育ツール、でしょうか。
そこに気づかず、聖剣の焼き直しを図った古代帝国は、『指輪』を開発します。所謂青の指輪、という奴ですね。
この、超神剣の装備というのが、どのようなものなのかは、皆目見当がつきません。ただ、恐らくフィアマーグはガガロを使って聖剣を揃えさせ、この装備の復活を考えているはずです。
それと、ファルガはもうひとつ面白いことを言っていました。
『古代帝国の技術と、蒼い鎧の戦士、白金の法衣の術者によって、侵略者を敗走させた』と。
白金の法衣の術者が何を指すのかはわかりませんが、これも、神ザムマーグとコンタクトができれば解決する謎だと考えています」
スサッケイは唸った。
「ううむ。突飛だが話は繋がる。
只、正直な感想は、聞かねばよかった、というところですな。
壮大な話過ぎて、私にはなかなか腑に落ちてこない。所謂神学の書に書かれている『ある日、神は世界を作った』というフレーズぐらい突拍子もないことのように感じられますよ」
「事実そうです。我々ができることは、あまりない。だが、助力はできそうな気はしませんか?」
「できるような気もするが、それも驕りの様な気もします。
いずれにせよ、救援隊の帰還を待つしかないですな」
レベセスはニヤリと笑う。
「私は、『白金の法衣の術者』の情報を集めてみますよ。ただし、それは『特派員』の力と『影飛び』の力が必要なのです」
レベセスはそういうと踵を返し、スサッケイの執務室から退出した。
執務室に残されたスサッケイは、いてもたってもいられず、トレーニングを開始した。座して思考するより、体を動かしながら思考する方が、よほど自分らしい、と思いながら。そして、来たる決戦の時に、自分が戦士でいられるように、と思いながら。




