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界遊記  作者: かえで
ジョーの祖国で

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失標

 霞の中で人の話し声を聞いた。

 聞き覚えのある声。憎むべき者の声のようにも聞こえ、どこかやるせなさを感じる。聞こえてくる声の主に対して、怒りと悲しみと空しさとが入り混じる感情がふつふつと湧き上がる。救いようのない絶望。この感情をどう処理すればいいのか、少年にはわからない。

(誰だ……、俺の傍にいるのは……)

 少年は無理矢理目を開けようとしたが、どうしても体に力が入らない。いや、体は眠っているのに、耳だけが起きているのか。聞こえてくる声は洞窟内での会話のように、反響し何重にも重なっていた。

 何を言っているのかわからない。だが、どうも自分の事を言っているようだというのはわかった。実際には言葉ではなく、何かの意志が流れ込んできたのかもしれないが。

 そして、最後に彼に届いた内容は衝撃だった。

「……あいつはアストラルボディ持ちとガイガロスの鬼子の子供……」

 アストラルボディとは、何の事を指しているのかわからないが、ガイガロスの鬼子、とは穏やかではない。ガガロの強さを見ていてわかるが、ガイガロス人が魔族と呼ばれている圧倒的な存在だ。そのガイガロス人が恐れる鬼子。ガイガロスの鬼子とは一体どのような存在なのだろうか。

 そこで体の回路が全て繋がり、突然意識が戻る。ちょうど暗闇から太陽の下に引きずりだされたような感じだが、決して不快な感覚ではない。

 ファルガはベッドの中にいた。

 確か記憶では城塞部から街並みを見下ろしていた筈。それが何故ベッドの中にいるのか。

 上半身を起こし、部屋の中を見渡す。声がしたと思ったが、部屋には誰もいなかった。額に乗せられていた物が膝の上に落ち、初めて自分が介抱されていたことに気付く。ベッドの横の棚には金属でできた盥に水が張られていた。

 ワーヘの街で取った宿の寝室より大分広い。その割にベッドは二基しかない。宿のロイヤルルームより豪華な造りではあるのだが、部屋自体には調度は殆どなく、全体的に広々とした印象を受ける。

 ファルガはベッドから出ると、窓の傍に寄り、外の様子を窺う。

 太陽はまだ空に辛うじてあるが、徐々に山脈の向こう側に隠れようとしていた。方角はわからないが、陽が沈む方向であることを考えると、眼前の巨大な山々が『コノミカ大天蓋』の端の方なのだろうとは想像がつくものの、自分の居場所がなんとなく掴めない。

 視線を移し、徐々に陽の光を失う眼下の街並みを見て、自分がルブザードにいる事を認識する。夕日に照らされていた街並が光を失ってもその白い輝きは変わらない。

 夢のように美しい白亜の街。

 いや、まさに夢?

 ひょっとしたら、聖剣を手に入れた事も、ラマを飛び出したことも、デイエンでの死闘、ロニーコの出来事も、全て遠い昔のこと……いや、夢だったのではないか、とさえ思えた。

 それほどに、何も考えずに休むことができたということなのか。

 そういえば、旅に出た当初からずっとうなされていた悪夢も、ここ数日見なくなっていた。最初は、様々な困難に直面することで結果的に現実逃避がなされていたのかと思っていた。だが、どうも違うような気がする。

 様々な戦闘や経験を積むことで、今ならあの時のジョーを止められる、という確信を得た。と同時に、どうしてあの時にこの力がなかったのだろうか、と考えることが増えていくようになった。

 夢の中で、ジョーを止める。だが、止めることができたのは、夢。レナが食われなかった。だが、それも夢。

 過去をやり直せぬことへの苛立ちを覚えるような夢が増えていった。悪夢は、その姿を変え、やはりファルガを苦しめた。

 だが、その悪夢は忽然と消える。


 背後でドアがノックされた。

 振り返り、返事をしようとしたが、即座に声が出ない。絞り出すように返事をすると、一人の侍女が入ってきた。レーテよりも、レナよりも大分年上の女性で、もう少女という年齢ではなさそうだ。

「お目覚めだったのですね。お水をどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 ファルガは少し戸惑いながら盆内のグラスに注がれた水を手にするが、一瞬の間の後、一息に飲み干した。張り付いた喉が水により湿り気を取り戻していく。余程体内の水分が欠如していたのだろう。口を通じて取り込まれた水が、音を立てて体内に吸収されていくような錯覚をファルガに与える。

 ファルガの飲みっぷりを目の当たりにした侍女は、些か驚きながらも微笑み、ファルガの持つグラスを受け取ると、水差しからグラスに水を注いだ。これほど美味しそうに只の水を飲む人間は久しぶりだ、とでも言わんばかりだ。

 グラス三杯の水を一気に飲み干したファルガは、やっと大きなため息をつき、落ち着いたようだった。

「……ここはルブザードですよね?」

「はい。王城内の来客用の宿泊設備になります」

 ファルガの表情がゆっくりと失われていく。

 ルブザード……。

 そうだ。

 ここはジョウノ=ソウ国。

 仇は既にこの世にいない。奴を討ち漏らすことで彼の旅は終わりを告げた。

 今まで考えていなかった昨日までの出来事が頭の中をゆっくりと巡っていく。慌てることなく、ゆっくりと咀嚼するように思い出すことで、ファルガは平静を保った。

 なるほど、悪夢が終わりを告げたわけだ。

 思い出すことで動揺し、また自分がおかしくなるのかとも思ったが、今日は冷静に思い出し、考えることが出来た。

「もう少しで夕食支度が出来上がります。こちらにお持ちしますね」

 ファルガは頷くと、もう一度窓の外に視線を移した。

 侍女との少しの会話のうちに、更に太陽はその高度を下げ、完全に山脈の向こう側に姿を隠そうとしていた。眼下の街並みが影に入り、空は明るいにも拘らず、町が闇に沈んでいくのが美しくも物悲しく見えた。

 不思議と、地下水脈に捕らわれて流されてからどれくらいの日数が経ったか、とは考えなかった。考えたのは、ラマを出てからどれくらいの時間が経ったのか、ということ。

 レーテの事も、レベセスの事も、ガガロの事も、まったく頭によぎらなかった。よぎったのは、ラマ村の面々。

 幼馴染のレナ、ナイル、インジギルカ。養父ズエブや養母ミラノ、その娘ズーフ。村長やほかの村人たち。彼の生まれ育った村の穏やかな風景だった。

 ラマ村は自分の居場所。今までの激戦や悲劇、惨劇は皆夢だったのだ。まあ、夢とは言わぬまでも、過去の事。終わった事。もはや自分には関係のなくなった事。

 仇討の旅は終わった。もはや、自分がこのまま旅を続ける意味もない。

「……帰ろう、ラマへ」


 少年は、陽の落ちて静まり返った街に出た。

 王城を出る時も、兵士たちは敬礼をするだけで、取り立てて止められはしなかった。

 食事を準備してくれたという侍女には悪いが、自分が城で接待される謂れもない。準備された食事は代わりに誰かが食すのだろうか。

 どうなるかは思いもよらないが、それをゆっくり白亜城内で食べる気にもなれなかった。

 部屋を出る時も、誰かに特段声をかけることなく、また、彼自身荷物もほぼない状態だった。聖剣を持つことだけは忘れなかったのは、この剣が聖剣だからではなく、父だという男が使っていたから、なんとなく持っていく気になっただけで、そこまで死守するものでもなくなっていた。

 元々聖剣を手にしたのは、圧倒的な強さで立ちはだかった『カニバル』に対する為であり、その仇がいないのであれば、もはや聖剣に固執する必要もない。

 ジョーの父カネーガの言う『カニバル』発生の理由と、数か月前にジョーの口を借りて『カニバル』の語った、自身の発生理由とは異なっていた。

 カネーガは、優しいジョーが執行者の依頼を受けてしまったことが原因だと言った。だが、その前に『カニバル』は既にこの世に生を受けていたのだろう。

 王族の嗜みとしての狩りの際に熊の襲撃を受け、その後発狂した兵により、命の危機に瀕した少年ジョー。そして、兵を退けた後、食糧として彼を襲った兵を食らいながら大森林の中で救助を待ち、生き抜いた少年。狂った兵に襲われ、犯されかけ殺されかけた少年が、兵を討つ事に躊躇せず、逆に襲ってきた存在を生き残る為の食料として考えなければならない事の正当性を求め、『カニバル』を生み出したのだろう。その後も『カニバル』はジョーの中で狡猾に隠れながら、自身の力を蓄えていった。ジョーの苦悩を糧に。

 今まで存在を隠していた『カニバル』が、自分の意志で他者に対してその存在を明らかにしたのが『執行者』となった時だった。何故そうしたのか、ということは恐らく誰も知りえない。本人たち以外は。

 街道の所々にある建物から明かりが漏れ、笑い声が聞こえる。仕事を終えた職人たちが、立ち並ぶ食事処で施される酒と夕食で、一日の疲れを癒しているのだろうか。

 初めてラン=サイディール国の首都デイエンを訪れた時のような、喧騒の中にある一種暴力的かつ嫌世的な雰囲気は不思議と感じなかった。町の醸し出す雰囲気の差なのだろうか。それとも、国の持つ潜在的な何かの差だろうか。

 テマは、船でカタラットには出られると言っていた。ならば、船でラン=サイディールに戻れるだろうか。しかし、ラン=サイディールに船で戻るなら、デイエンしかない。だが、ほんの数十日前にあれほどの打撃を受けたデイエンの港に行く船があるだろうか。

 なんとなく港に向かって街道を歩いていたファルガだったが、港に行ったところで、その先のルートがあるとも思えなかった。

 なんとなく、ラマに帰ると決めたものの、その方法がなければ、ここで生活するしかない。そういえば、自分はラン=サイディール国にとっては犯罪者なのだった。

 思い出したくない事実を思い出し、途方に暮れる。

 ラマに帰っても、既に指名手配されていれば自分は逮捕されるだろうし、自分がいなくても、追手はラマにも及んでいるだろう。となれば、ズエブ達にも迷惑が掛かっているかもしれない。その状況で無理矢理ラマに戻ったところで、疎まれこそすれ、歓迎されることはないだろう。

 なんとなく港へ向かう足取りは重くなったが、それでも立ち止まるほどの決定的なものもなく、とぼとぼとファルガは歩き続けた。

 やがて港まで到達するファルガ。

 港はラン=サイディール国首都デイエンほどではないが巨大で、様々な輸送船や遊覧船、客船も停泊していた。桟橋は何本も準備され、停泊する船舶が並ぶ様は壮観だった。

 だが、その光景もファルガの心には響かない。

「ラマ行きがあれば、一番好都合だけど、そんな便はないだろうなあ」

 ファルガは聖剣を背負っていたが、その存在も半分忘れた状態で、ただラマ行の船のみを探した。兵士でもない、剣を背負った少年という存在が、周囲の人間から奇異の目で見られることにも気づかずに。

 陽も落ちて大分時間が経っているせいか、ファルガのいるルブザード主要街道に面した旅券売り場もすでに営業を終了していた。ただ、その旅券売り場には、通常運行している便の行き先表が示してある看板が掲げてあり、ルブザード発の旅客船がどこに向かうのか、知る事が出来た。

 カタラットには行く。デイエンにも行くようだ。だが、当然崖の上の小さな村ラマの名が行先にある筈もない。

 そして、運賃を見て愕然とする。

 人一人デイエンに行く船に乗るだけで、ファルガが鍛冶見習いであった頃の五年分の稼ぎが必要だった。カタラットも似たような料金だ。

 それは無理もない。

 当時の航海技術は全て手動・口伝で確立されているほか、航路もあってないようなもの。海図も完璧なものではなく、経験則でしかない。そして、航路通りに進もうにも雨風によってはその通り進めず、周囲の海が遠浅の大陸が殆どであり、座礁の可能性も高い以上、天候による運休も十分にあり得た。一回の航海でも、乗組員からすれば常に死と隣り合わせになるわけだ。

 そんな中での航海士が生活するには、一回の航海で莫大な収入が必要だ。そうでもなければ成り手などいはしないだろう。

 実際、客船の運航は年一回程度で、その条件はといえば客船の定員が埋まった時。または定員が埋まった時と同じ金額が一回の運航で雇い主から提供される時。それ以外の運航は、ほぼ貨物船だ。物資の輸送のついでに空いた部屋に人を乗せる程度の事しかできない。それでも、船一隻を動かすのは莫大な費用が掛かる。人一人移動するのにとんでもない料金が請求されることは至極当然の事といえた。

 今までのファルガが飛天龍によっていかに快適に移動をしてきたかを、痛感せずにはいられなかった。

 ファルガは途方に暮れる。

 船に乗るにはこの街で金を溜めねばならない。しかし、金を得る方法はせいぜい鍛冶屋で働く事くらいだが、この街の何処に鍛冶屋があるかなど解る筈も無い。金がなければ、船に乗るどころか、生活する事もままならない。

 今日の寝床はどうする。明日の食事はどうする。そもそも自分はどこに行けばいい。

 齢十二歳の少年が、土地勘もない場所で自らの生活を構築する。それは気の遠くなるようなことだった。


 背後の暗がりから気配がする。

 よい印象の気配ではない。強いて言うなら、恨みつらみ、妬みといったマイナスの印象だ。

 人の気配ではない。物の怪か妖か。

 ラマにいた頃のファルガであれば、怪異、魑魅魍魎の類に対しては大層怯えただろう。

 村長が祭りの時に子供たちを集めて話す怪談話で夜トイレに行けなくなったのは、ファルガだけではなかった。勿論、怪談話の目的は強がらせることではなく、子供たちに道理を教える事なのだが、当然当時の少年少女たちには知る由もない。

 人の道理に外れると自分ではどうにもならない力で災難に巻き込まれてしまう。そうならない為には、道理に外れることをするな。村長はそう子供たちに繰り返し伝えていた。

 だが、今のファルガは恐怖を露程も感じない。彼はそのまま気配のほうに近づいていく。

 実際、ハタナハでは黒マントの男が連れた不思議な怪人二人と相対している。魔族というのか、魔物というのかよくわからないが、少なくとも人間ではなかった。そんな存在を目の当たりにし、戦った。そして、ドレーノ国首都ロニーコでは、不思議な巨人を感じた。ギガンテスと言われたその巨人は、その巨体に似合わずまだ子供だった。

 目に見える物が全てではない。目に見えずとも感じられる世界がある。

 今のファルガにはそれが何となくわかる。いずれにせよ、放っておいていい物の様には思えなかった。自分の生活がままならない状態ではあったが、そのよくない雰囲気を放置することの方が、あとで後悔しそうだと感じたからだ。

 彼の進んだ先は、ファルガの身長の倍はある木箱が無数に積み上げられ、また木製の樽が無数に並べられている、到着した船舶から荷物を降ろし置いておく仮置き場だった。

 そこに、正体不明のいい感じのしない気配がする。

 木箱の隙間にそれはいた。

 黒い靄のような存在。その靄は、倒れ込んだ野犬に取りついているように見えた。クチャクチャと何か湿っている物を咀嚼している音が微かにする。

「なんだ、あれ……」

 ファルガの呟いた声を聞き、その靄は音を立てるのをやめた。そして、ファルガの方を振り向いた。靄なのでどちらを向いているかわからない筈なのだが、ファルガにはそう感じられた。

「お前、俺が見えるのか」

 靄はファルガにそう呟くと、野犬の死骸を捨て、ファルガの方に向き直る。

「見えるといえば見える……。俺、どうにかなったのか? 前はあんなもの見えなかったのに」

 靄は邪悪な笑みを浮かべた。そのまま低く構え、その爪と牙でファルガの喉笛をめがけて滑るように一気に襲い掛かってきた。

 速かった。まるで一陣の風の様にファルガに迫ると、その爪を振り下ろした。そして、逆の腕から伸びる鋭い爪を続けて。それに合わせるように、ファルガの首に食らいつこうとした。

 だが。

 右巻きに放たれた爪の一撃は爪の根元の手首部を抑えられ、左巻きの爪の一撃は弾かれた。そして、喉笛に食いつこうとした牙はへし折られ、周囲に飛び散る。その牙は地面に落ちると黒い靄となり消えた。

 愕然としたのは黒い靄だ。

 靄のまま正体を暴かれるわけでもなく攻撃を仕掛けたのに、軒並み攻撃が通用しない。

 それどころか、爪は弾かれ、牙は砕かれた。

 靄は黒い猿の形になり、実体化する。

 闇のように黒いヒヒの目は血の様に赤い。だが、その見開かれた瞳には、驚愕のみが浮かぶ。

「お……、お前は何なんだよ!」

 ヒヒは驚愕から恐怖へと感情をスライドさせ、悲鳴のように叫ぶ。

 漆黒のヒヒが恐怖を覚えるのも無理もない。

 目の前に立つ少年は、幾多の人間や他の生物を屠り食してきた牙と爪の攻撃を受け止めるどころか、弾き返し砕いたのだ。特に、牙は標的の頭突きで折られたという体たらく。

 怪物は恐怖し、逃亡を図った。

 漆黒のヒヒは背から翼をはやし、上空へと逃げる。

「ファルガ君、逃がすな! 斬れ!」

 背後からの声に反応し、ファルガは背の聖剣を引き抜く。

 今までにないほどに自然に、聖剣が強く発動された。

 第一段階を発動させる時の様な溜めもなく、第二段階を維持するような集中と気持ちの高揚もなく、ごく自然に。

 激しい炎のような氣が吹き上がり、上空に逃げる黒いヒヒに一瞬で追いつくファルガ。そのまま右袈裟斬りで一閃、そのまま流れるように左薙ぎを打ち出し、ヒヒを四つに分断した。

 黒いヒヒは悲鳴を上げると、黒い霧となり消滅する。

 ファルガはゆっくりと無数に並ぶ木箱の上に着地した。剣を背に戻し、声の主を探す。

 声の主は、降り立ったファルガから少し離れたところに立っていた。

 ファルガもよく見知った男性。

 ジョウノ=ソウ国先代の王テマ=カケネエだった。

「テマ……さん……」

 絶望の中に一筋の光を見つけたような気がしたファルガ。

 だが、冷静に考えたら、彼の元から逃げ出したのだ。いまさら何をしてもらうつもりになっていたのだろうか。だが、このまま漆黒の闇に覆われた街中を徘徊しても何かが得られるとは思わなかった。何か変化があるとは思えなかった。

 ファルガの腹が空腹を告げる鐘を鳴らす。

 一瞬の間の後、テマは優しくファルガに声を掛けた。

「さあ、帰ろう。城のコックが腕を振るった食事が冷めてしまうぞ」

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