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クリスマスは、お祝。お祝いにはぱーてぇ。これは法律です! 前篇

本編の季節は夏なのです。夏なのですが、皆様の素敵作品を読んでいたらば、クリスマス物を描きたくなってしまいましたので。

本編の怒れる執事様の続きの前に、描いちゃいました。

優とゆかいな仲間達の、クリスマスのある日。ほのぼの調になればいいな、と。

クリスマス当日になって描き始めるなんてオイオイと焦燥に駆られましたが、どうにか間に合った!


それでは皆様。

JOYEUX NOEL!

 あぁどこかで、鐘が鳴っている。


 カーン、コーン、カーンと、二つの音色がどこまでも単調に、ずぅっと鳴り響いて――――――。




「うっさいわ―――っっ!!」





 皆様こんにちは。

 冬至も過ぎ、寒さも本番ですが、お風邪などひかれておりませんか。

 越谷優こしたにゆたか、29歳です。


 わたくし、低血圧と言うわけではありませし、冬生まれの定説からすれば違うはずなのですが、年々起きぬけの寒さが嫌いになりまして。

 目は覚めていたものの、本日はお休みだし、いつも可愛いメイドちゃん達がふっかふかに整えてくれる、ぬくぬく羽毛布団は最高に気持ち良いし。

 二度寝もいいよね~あぁ幸せ……。



 と言うところを、どこかから鳴り響く鐘の音に邪魔され、怒鳴ってしまいました。

 かなりキレ気味に。

 うとうとしていたから、起きぬけに怒鳴ったというか、自分の怒鳴り声で目覚めたというか。

 人間の三大欲求である睡眠欲と食欲は我慢のきかないたちではありましたが、ちょっと人として、いやいい年した大人としてどうなのかと、現在反省中です。




「優様お目覚めですか」



 え~っと。

 orzっていうんですっけ?

 スプリングの適度にきいた天蓋つきのベッドの上で、そんな体勢になっておりましたらば。

 いつも素敵さ今日もそのいぶし銀に射抜かれるぅ! な執事様が、軽いノックの後入ってきました。


 馥郁たる香りの珈琲とともに。



「おはようセバスチャン。いつもありがとう」

「熱いですから、お気を付けくださいませ」



 ノックを聴いた瞬間、光の速さで体勢を変え、ヘッドボードにもたれかかった状態で、何食わぬ顔で御挨拶。

 セバスチャンが差しだしてくれる、コロンとした丸いフォルムが可愛い、白一色のマグカップを受け取ります。



 執事が朝寝室に持ってきてくれるなら、ボーンチャイナのカップ&ソーサーに濃いめに淹れた紅茶だろう。とは思うんですよ?


 思うんですが、わたしは紅茶より珈琲党であり、ボーンチャイナなんて繊細な磁器は執事であるセバスチャンにふさわしくとも、わたしに相応しくない。

 それに、寝ぼけ眼で受け取れば、確実に取り損ねて割るとか、縁をかけさすとか。いくらスーパー執事セバスチャンが気をつけてくれたとしても、受け手のわたしが寝ぼけていたらばさすがにねぇ。


 ええまぁもちろん。異世界こちらであれば、たとえ粉砕していようとも魔導でちょちょいのちょいで治せはしますが。

 執事に憂い顔させるなんて。

 いやセバスチャンならそんな表情も鼻血吹くほど素敵だろうけど、ひそめられた眉やらちょっとだけ下がる目じりにぐっとくること間違いなしでしょうが……!


 大切な家族をいじめて喜ぶ趣味はないので、ここはマグカップです。



「今朝も良いお天気で、昨夜降った雪に日差しが照り輝いて、眩しいくらいでございますよ」



 マグカップを両手に持ってまずは香りを楽しんでいると、窓辺に寄ったセバスチャンが、カーテンを開きながらそう言った。


 おぉ本当だ。

 有能な二人のメイドちゃん、アヌリンとヤスミーナ―がぴっかぴかに磨いてくれている窓ガラスから、眩しい日差しが部屋いっぱいに指し込んでくる。


 あ、ちなみに。我が家の窓ガラスはすべて、断熱効果ばっちりの、ペアガラスです。


 異世界なのにって思うでしょ?

 偉大なる先達、阪本先輩がこっちの材料で作って、知り合いの商人に教えて作ってもらっているんだってさ~。

 いやいやさすが先輩。黒の錬金術師(笑)の異名は伊達ではありませんね!


 で、この借家の持ち主であるお貴族さんは、友人である我が上司、ルーカスさん経由で入手したと。

 なので、庭の木々に積もった雪に照り映える日差しはぬくぬくと部屋を温めるけど、冷気は入ってこないんですね~。


 そうそう。

 魔導を駆使すれば、家の中だけじゃなく外だって常時小春日和に出来はするけど、それじゃ気分がでないじゃないですか。

 せっかく日本と同じでサカスタン皇国にも四季はあるんだから。

 夏には夏の暑さを、冬には冬の寒さを楽しまなきゃね。



 え? 「起きぬけの寒さが嫌い」はどうしたって?



 ふっそれとこれとは別ですがな。

 起きぬけが寒いって言ったって、有能な執事様とメイドさん達が暖炉に火を入れて、常時家じゅうを適温にしてくれているし、

 ほんの少しの肌寒さがあるからこそ、起きぬけの珈琲を楽しめるってもんですよ。


 ほら、この鼻腔をくすぐる香り。今日はいつもと違って爽やかなオレンジの香りも……。



「あれ、やっぱりそうだ。今日はオレンジとシナモンの香りもする」

「気づかれましたか」



 思わず呟けば、振り返ったセバスチャンが、にっこり微笑んだ。



「アヌリンが申しますには、本日はなんでも、『クリスマス』と呼ばれる祭日だそうで。優様に喜んで頂こうと、ヤスミーナともども昨夜から張りきっております。

 わたくしも少々それに乗ってみようと思いまして。今朝の珈琲にはシナモンとオレンジのほかに、ほんの少しですがクローブで香りづけしてございます」



 くゎあっ!

 いつもながらのいぶし銀の微笑みに、ほんのりと嬉しそうにはにかんだ様な色が加わってっ。

 窓からの日差しが後光効果になってもうっもうっ目が~~~~っ!


 なんて内心盛大に悶えておりましたので、反応するのが遅れました。が。




「クリスマス……そうだ、今日、クリスマスじゃん!」

「本来は、キリスト教の創設者の生誕を祝う祭りだそうでございますね」

「あ~まぁ本当はイエス君が生まれたのは3月で、原始キリスト教が布教の一手として当時流行っていたミトラ教の祝日を取り込んだってのが真相らしいんだけどね……って、こうしちゃいられない。わたしも支度しなきゃ!」



 本や旅行中に聴いた蘊蓄を披露しつつ、わたしはウォークイン・クローゼットへ駆け寄り、適当な防寒着やブーツをみつくろって引っ張り出す。



「支度、でございますか」



 わたしが傍の椅子に放り投げるそれらを、着替えやすいよう順番に並べ替えてくれながら、セバスチャンが小首を傾げて聴き返してくる。



 っう!

 執事様のキョトン顔頂きました~~~っ!


 ではなくて。



「うん。パーティだよパーティ! セバスチャンも準備手伝ってくれる?」



 クリスマスは、お祝。お祝いにはぱーてぇ。

 これは法律です!!

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