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Blood  作者: 緋
2/7

Government

 この世のどこかに存在するかもしれない『アカヴィシア』という名の世界。まあ、別にこの名前は覚えていただかなくてもいい、というか覚えるだけ損だ。特に知っておいてほしいことはないが……そうだ。ひとつだけ、間違えないでほしい。

 この世界でいう『政府』とは、君たちの知るそれとは少し。いや、かなり違ったものである。ここでいう政府とは、政治を『行う』のではなく政治を『管理』する機関で、仕事内容としては警察と軍人を足して二で割った感じだ。

 三つの大陸に一つづつ設置されている『政府』という機関は、大陸の最高機関である。

「アンタいい加減仕事しなよね!?」

「わかった、わかったから少しだけ寝させてくれ……」

「ほんと……総司令部責任官のくせにさぁ……」

 こんなサボり魔がイリガル政府のトップであるが、一応最高機関なのだ。

 もうお分かりだろう。この世界の政府というものは、いざというとき以外、非常にゆるい!

「こんなんでいいわけ……」

「何が?」

「何がって……」

 イリガルといえば、三大陸の中でも他の追随を許さない強大陸だ。そういわれていたからこそ、俺が学生の頃は軍人志望の奴が多かった。俺も例外ではなく、それはそれは政府軍人という職にあこがれた。必死で勉強して、政府について調べ上げ、万全の態勢で入隊試験に臨んだ。そうして、筆記・面接・実技等々難関な関門を潜り抜けてやっとこの職にたどり着いた。それなのに。

 期待外れもいいところだ。箱を開けてみれば、そこは想像していたものとは似ても似つかない場所だったわけだ。もちろん、悪い意味で。あの時の血を吐くほどの努力に、一体何の意味があったのだろうか。かっこいい、だなんてその場限りの感情に身を任せるんじゃなかった。全く、俺はなんて馬鹿だったんだ。

 ただ、ひとつだけ非常に心を躍らせることがある。

 『責任官』と呼ばれる役職。簡単に説明するならば、頭。政府の実質的権力を握る、選ばれた人間。責任間の中にも序列はあるが、個々が高い能力を持っているのだ。何故断言できるのかというと、俺も直接見たことがあるから。総司令部責任官と、科学部責任官との戦いを。秀才であるだけでも、身体能力が高いだけでも責任官にはなれない。例え普段サボり魔であったとしても、スイッチが入ったときのあの姿は忘れることができない。即ち、『憧れ』なわけだ。

 そして、責任官に興味を抱くにはもう一つ理由がある。軍事部責任官『セア=ラルク』。実際に見たことがあるわけではないが、学生のころから長く言われ続けている噂がある。

 『イリガルの軍長は、戦えないらしい』

 政府に入ってからは、さらに多くの噂を聞くことになった。

 身体が弱いらしい。

 持病もちらしい。

 父親は元責任官らしい。

 政府本部と関わりがあるらしい。

 滅多に人前に出てこないらしい。

 仕事はすべて補佐官がやっているらしい。

 実はいないんじゃないのか。

 そんな根拠のない噂だが、火のない所に煙は立たぬともいう。

 俺は今、その『軍長』という存在が、どうしようもなく気になるのだ。



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